🔨 北海道稚内市を拠点に、給排水衛生設備・空調工事を手がける株式会社令和設備工業。令和元年に個人事業主として創業し、令和6年に法人化した同社を率いるのは、代表取締役の加藤 智也氏だ。18年にわたる設備業での実務経験を礎に、「自分のお客さんを最優先にしたい」という一念で独立。堅実に足元を固めながら稚内・近郊エリアで存在感を高めるその経営姿勢に迫る。
🏗️ なぜ設備業を選んだのか?原点にある想い
加藤代表はもともと、設備業とは縁遠い世界を歩んでいた。最初のキャリアは家電販売。エアコンや給湯器などの販売・取り付けを7〜8年ほど経験した後、父親が経営するゴルフ場レストランを手伝うなど、さまざまな仕事を経てきた。 設備業へ踏み込んだのは、ハローワークで求人を目にしたのがきっかけだったという。
「もともとは全然この業界に興味はなかったんですが、ハローワークで目に入った設備屋さんの求人に応募したのが始まりです。家電販売でエアコンや給湯器には触れてきたので、抵抗なく入れるかなと思って」 事務職として入社したが、現場経験を積みながら資格を次々と取得。設備業のなかでも特にオールラウンドな対応力を身につけ、最終的には工事部長を務めるまでに至った。
「会社が『取れるものはどんどん取れ』という方針で、費用も出してくれた。資格は取ったら自分のもの、という考え方を当時の社長から教わって、それがずっと自分の軸になっています」 その会社で18年間腕を磨いたのち、令和元年に独立。社名は創業の年にちなみ、「令和設備工業」と命名した。
🔧 うちの強みとは何か?──機動力と幅広い対応力
株式会社令和設備工業の事業領域は、給排水衛生設備を主軸に、暖房・空調、浄化槽、消防設備まで多岐にわたる。個人のお客様からの依頼は全体の約2割。残りは民間法人や元請け業者からの受注が占める。 独立当初、加藤代表は札幌・旭川方面の知人業者を一軒一軒まわり、「何かあればよろしくお願いします」と挨拶して回った。その人脈が今の仕事の柱となっている。
「あえて一言で言うなら、機動力ですかね。すぐ行ける・行けないの問題はあるにしても、まず断るんじゃなくて、一回見に行ってどうしましょうかって相談する。そのスタンスは他社さんとちょっと差別化したいところです」 稚内市内だけでなく、豊富・浜頓別など百キロ圏内の周辺エリアにも対応。利尻・礼文といった離島への出張工事も引き受ける。給湯器・トイレ・エアコンなど生活設備の緊急対応から、新築の引き込み配管、重機を使った埋設物の工事まで、設備に関わる作業はほぼ対応可能だ。
さらに加藤代表が強調するのが、設備の範囲を超えた「つなぎ役」としての機能だ。 「設備専門ではありますが、外壁やその他のことで困っていても、仲のいい業者さんを紹介できます。地域で長くやってきて、建物に関わるところはだいたいつながりがありますから、まず相談してもらえれば何かしら道は示せます」
⚠️ 中小設備業の課題──無理な拡大が招いた失敗と、そこからの学び
独立後は売上を落とさずに推移していたが、一度「無理をしすぎた」ことで赤字に転落した経験があるという。中小建設業にとって、受注拡大の誘惑と持続可能な経営のバランスは常に難しいテーマだ。
「売り上げを伸ばしすぎてもダメだと身をもって学んだ。今はちゃんと自分らの実力の範囲で、できることを確実にやっていくことを心がけています」 現在は法人2名体制。スケジュールはすべて決め打ちで組まれており、遠方からの急な依頼への対応が難しい場面もある。それでも、できる限り柔軟に動こうとする姿勢は変わらない。 「依頼をすぐ断るのではなく、まず見に行って応急対応し、その後のスケジュールを一緒に考えるようにしている。それが今できる精一杯の機動力です」
また、稚内市は人口3万人を切る地域であり、業界全体でも人材不足が深刻だ。協力会社とのネットワークを維持しながら、お互いに助け合う関係を地道に積み上げている。 「自分のお客さんを大事にしたくて独立したのに、無理に広げてパンクしたら本末転倒。できることを着実に、が一番の信条です」
🌱 これからのビジョン──信頼できる元受けと、着実な人材育成
加藤代表が描く将来像は、急拡大ではなく「地に足のついた成長」だ。現状の年商規模から、将来的には1億円程度を一つの目標として見据えている。そのためには、あと2名程度の人材育成が不可欠だと語る。
「まず今いるメンバーが一人前になって、慣れてきたら次の採用を考える。その繰り返しで、ゆっくり実力をつけていきたい。先のことはそれからです」 また、将来的には管轄工事(元請けとして現場を取り仕切る体制)への挑戦も視野に入れている。そのためにも、専任で現場に入れる人材の確保が欠かせない。
取引先についても「量」より「質」を重視する。 「信用できて、やりやすいお仕事をさせてもらえる元請けさんであれば、少しずつ広げていきたい。無理なく一緒に育っていけるような関係が理想です」 稚内という北の最前線で、「お客さんを大事にする」という独立当初の想いを守り続ける加藤代表。足元を固め、人を育て、信頼できる取引先と少しずつ関係を広げていく。そのゆっくりとした歩みの中に、中小建設業が長く生き残るためのヒントが詰まっている。
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📝 編集部コメント
取材を通じて印象的だったのは、加藤代表の「お客さんを大事にしたい」という言葉が、独立の動機から現在の経営判断まで一貫して通っていることでした。北海道の最北端で、等身大の誠実さを武器に歩む姿に、中小建設業経営のひとつの答えを見た気がします。