🔨 新潟市北区を拠点に、屋根・外壁・雨樋の板金工事を手がける市嶋鈑金工業。代表の市嶋勝之氏は、中学卒業後から板金の世界に入り、35年以上のキャリアを積んできたベテラン職人だ。独立から約8年、スピードより品質を重んじる職人気質の仕事ぶりと、地域に根ざした丁寧な対応が、同社の揺るぎない強みとなっている。中小板金業の現場から、仕事への哲学と今後の展望を語っていただいた。🏚️
🏗️ 板金の世界に入ったきっかけ──身内の仕事から始まった35年のキャリア
板金職人としての市嶋氏のキャリアは、中学卒業と同時に始まった。 「きっかけは、身内が同じような板金の会社をやっていたので、そこに入ったというのがスタートです」 祖父や叔父が営む板金工事会社で技術の基礎を習得した市嶋氏。しかしその会社が廃業することになり、次のステップへと踏み出すことになる。
転職先となった別の板金業者では約10年のキャリアを積み、板金工事の実務をさらに深く磨いていった。 独立のきっかけは、勤務先での経験がひとつの転機となったことだという。それでも自分の腕一本で歩み続けてきた。気がつけば板金業界でのキャリアは35年以上。「50歳になって振り返ると、15歳からずっとやってきたんだなあとしみじみ思いますよ」とほほ笑む。
独立してから約8年。右も左もわからない状態で関東系ハウスメーカーへの飛び込み営業を重ね、新潟に進出してきた大手にも積極的にアプローチしてきた。職人一筋で培った技術と、臆せず行動する姿勢が、今の市嶋鈑金工業の土台を形成している。
🔧 スピードより品質──「早くたって良くなきゃ何にも残らん」という職人の哲学
市嶋鈑金工業の仕事の範囲は幅広い。屋根・外壁・雨樋を中心とした板金工事全般を手がけ、「一般住宅ならほぼほぼできます」と胸を張る。神社仏閣のような難易度の高い案件は「なかなか難しいところもある」としながらも、一般住宅であれば入隅・出隅の加工から各種板金納まりまで、幅広く対応できる技術力を持っている。
中小建設業にとって差別化の軸は何か。市嶋氏はそれを「品質へのこだわり」だと言い切る。 「関東の人はスピードにこだわるんですよね。今関東系のハウスメーカーもやっていますが、何週間で足場をバラすから終わらせてくれって言われる。でも、早くたって良くなきゃ何にも残らんし」 施工の速さよりも、確かな仕上がりを優先する姿勢は、長年の職人経験から生まれた確信だ。
素材についても熟知しており、屋根材の加工・切断による保証の問題や、メーカー保証の変化なども把握したうえで顧客への丁寧な説明を心がけている。 また、アフターフォローの迅速さも強みのひとつだ。「何かあれば、その日か翌日には駆けつけます」という対応は、地域密着の小規模業者だからこそ実現できるスピード感であり、大手との差別化ポイントでもある。
⚠️ 板金業界の"板挟み"──材料費高騰と単価圧力に向き合う現場の本音
中小の板金業者を取り巻く環境は、決して楽ではない。市嶋氏も「最近は材料が重くなって切なくなってきた」と感じている。材料費の高騰は仕入れコストを押し上げる一方、発注元からの単価は簡単に上がらない。
元請けのゼネコンや住宅メーカーと、コスト上昇という現実との間に挟まれた構図は、まさに「板挟み」だ。 「ゼネコンには単価で負けるし、無償対応を求められることも少なくない。でも、そこは毅然と対応して、きちんと負担をお願いする姿勢を保っていかないといけないと思っています」 保証面の変化も課題だ。
かつては10年保証が当たり前だった屋根材も、メーカーが加工後の錆に対して保証しないケースが増えてきた。法定の雨漏り保証との兼ね合いも含め、適切な説明と施工品質の維持が一層求められる時代になっている。
新潟では近年、住宅着工数が伸び悩んでおり、「ないときはとことんない」という正直な言葉にも、地方建設業の厳しさが滲む。こうした状況だからこそ、工場・倉庫の屋根工事という法人向け分野にも軸足を広げ、住宅と法人の両輪で仕事を確保していく姿勢を取っている。
🌱 住宅も法人も、両方を伸ばしていきたい──市嶋鈑金工業の次なるステップ
今後について、市嶋氏は「住宅も増やしたいし、法人向けも両方増やしていきたい」と語る。直接エンドユーザーから屋根の張り替えなどを受注する"直客"の仕事は、中間マージンがない分、収益面でも手ごたえがある。競合が多く容易ではないものの、そこを丁寧に耕していく意欲は十分だ。
「若い人にはわかりにくい仕事かもしれないけれど、板金はいろんな建物に使われていて、できることの幅がとても広い。その面白さを伝えていきたい」 35年以上の経験を持つ市嶋氏にとって、次の世代に技術をつないでいくことも、これからの大きなテーマだ。
板金工事は目立たないながらも建物を雨風から守る重要な役割を担う。地域の建物をしっかりと守り続けるため、市嶋鈑金工業の職人としての歩みは、これからも続いていく。
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📝 編集部コメント
取材を通じて感じたのは、市嶋社長の「丁寧な仕事への一本筋」でした。スピードや効率を求める時代の流れの中で、品質にこだわり続ける姿勢は、地域の建物を長く守るという使命感に裏打ちされたものだと感じます。