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「資格を取ってもらいたいけれど、費用はどこまで出せばいいのか」——そんなモヤモヤを抱えたまま、その都度対応している会社は少なくありません。社員から「受験料を出してほしい」と言われるたびに判断が揺れ、人によって扱いが違う状況になっていないでしょうか。
建設業では、施工管理技士や足場の組立て等特別教育など、業務に直結する資格・講習が数多くあります。資格手当や人材育成の観点からも、会社としての方針を早めに整えておくことが重要です。
社員A氏には受験料を全額負担したのに、社員B氏のときは「自己負担で」と断った——こうした対応のブレは、社員の不満や不信感につながります。「資格を取らせてもらえなかった」「費用を後から返せと言われた」といった不満が、離職のきっかけになることもあります。
合格後の転職を恐れて支援に踏み切れない経営者も多いですが、ルールがないこと自体が採用・定着のボトルネックになっています。資格支援制度は「人を育てる会社」としての魅力にも直結します。
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一口に「資格取得費用」といっても、その内訳はさまざまです。負担ルールを決める前に、まず費用の種類を把握しておきましょう。
受験料・検定料:施工管理技士の場合、1次・2次それぞれに費用が発生します。
テキスト・参考書代:市販の参考書や通信講座の教材費。数千円〜数万円と幅があります。
講習・スクール費用:予備校・講習機関の受講料。技術系の資格では数万円になることも。
更新費用・講習費:取得後の定期講習や免許更新にかかる費用です。
交通費・宿泊費:受験会場や講習会場への移動費。地方在住の場合は特に大きな負担になります。
これらをひとまとめにせず、項目ごとに会社負担・自己負担・折半のいずれかを決めることが、現実的なルール設計の第一歩です。
費用負担を決める際の重要な軸が、「その資格が業務上必要かどうか」です。会社として取得を求めている資格と、社員が個人的に取りたい資格では、負担の考え方が変わってきます。
業務上必須・会社が取得を指示する資格は、全額会社負担が基本です。なかでも労働安全衛生法で事業者に実施が義務づけられている特別教育(足場の組立て等特別教育など)は、会社の負担で、所定労働時間内に行うのが原則とされています。玉掛けなどの技能講習は、修了者でなければその業務に就かせられない「就業制限」の対象で、受講させる義務まではないものの、会社負担とするのが一般的です。
一方、業務に関連するが必須ではない資格は、「受験料の半額補助」「合格報奨金の支給」など、支援の幅を設けるやり方がよく見られます。資格手当か一時金かも、あわせてルール化しておくとスムーズです。
「資格を取ってすぐ辞めてしまう」ケースに備え、一定期間内に退職した場合は費用を返してもらう「返還ルール(返還ルールとは:会社が負担した費用を、一定条件のもとで退職者が返還することを定めた社内規定)」を設ける会社もあります。
ただし、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)に注意が必要です。会社が業務命令で取得させた資格の費用を返させる取り決めは、違約金にあたり無効とされやすいため、対象は本人の希望で取得する「推奨」「任意」の資格に限るのが基本です。
そのうえで、会社が費用を「貸し付け」、一定期間勤務すれば返済を免除する形にし、返還額は実費の範囲内で勤続期間に応じて減らす設計にしておきましょう。内容は誓約書や貸付契約書で個別に合意しておくことが大切です。不安があれば社会保険労務士や弁護士に相談しましょう。
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資格取得支援の費用は、人材開発支援助成金(人材開発支援助成金とは:厚生労働省が提供する、従業員の職業訓練を支援した事業主に訓練費用や賃金の一部を助成する制度)で軽減できます。建設業でまず確認したいのが「建設労働者技能実習コース」で、特別教育や技能講習、施工管理技士の技術検定に関する講習などを受けさせた場合に、講習費用と受講中の賃金の一部が助成されます。
一般的な「人材育成支援コース」は10時間以上の職場外訓練(OFF-JT)が対象で、中小企業の経費助成率は45%です。どちらも受験料だけでは対象にならず、助成率や対象訓練は年度ごとに見直されるため、社会保険労務士や労働局・ハローワークで最新の内容を確認してみてください。
「うちは助成金の手続きが難しそう」と敬遠している経営者も多いですが、顧問の社労士がいれば申請書類の作成から対応してもらえます。まずは気軽に相談するところから始めてみてください。
難しく考えずに、まずは以下の手順で整理してみましょう。
資格・講習の棚卸し:保有資格・今後必要な資格を一覧化し、「業務上必須」「推奨」「任意」に分類する。
費用項目ごとの負担割合を決める:受験料・テキスト代・更新費用などについて、全額負担・折半・自己負担を明文化する。
就業規則・誓約書に盛り込む:返還ルールを含めて書面化し、社員に周知する。常時10人以上の事業場では、就業規則の変更を労働基準監督署へ届け出る。
「ルールを作ったら融通が利かなくなるのでは」と感じる方もいますが、逆です。明確なルールがあるほうが、社員も会社も判断に迷わず、関係性が安定します。小さな会社ほど、属人的な判断に頼らない仕組みが信頼につながります。
資格取得費用の会社負担は、「なんとなく」で決めているとトラブルや不公平感の原因になります。業務上の必要性を軸に項目ごとのルールを整え、返還ルールは任意の資格に限って慎重に設計し、助成金も活用することで、会社・社員の双方にメリットのある制度にできます。
中小建設業だからこそ、小回りを活かした丁寧な制度整備が、採用力と定着率の向上に直結します。今日の一歩が、明日の人材育成の土台になります。
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【参考・出典】(2026年10月時点)
・厚生労働省「人材開発支援助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
・厚生労働省「労働安全衛生法に基づく免許・技能講習・特別教育等」
・福島県労働委員会「研修費用の返還と労働基準法第16条」
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/65015a/kobetuqa14-3.html
・e-Gov法令検索「労働基準法」
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