記事を読み込み中です
公共施設の老朽化が全国的な課題となるなか、建て替えではなく改修によって新たな価値を生み出す事例が注目を集めている。愛媛県宇和島市では、使われなくなった旧市立中央図書館が中高生の居場所へと生まれ変わり、このたび権威あるデザイン賞を受賞した。
地方都市における公共資源の再編のヒントとして、建設業に携わる関係者にとっても示唆に富む内容だ。
株式会社愛媛建築研究所(愛媛県松山市、代表取締役:白石卓央)が設計監理を行なった「宇和島市青少年交流センター ホリバタ」が、2026年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞した。同社がプレスリリースで発表した内容によると、この施設は旧市立中央図書館を改修したものであり、空間構成に特徴があるという。
『宇和島市青少年交流センター ホリバタは、宇和島市の旧市立中央図書館を改修し、中高生を中心とした青少年が気軽に集える居場所・自由に過ごせる活動拠点へと生まれ変わった施設です。段床を挿入した空間構成により、勉強・交流・休息など複数の自由な居場所が連続する「居場所のグラデーション」を形成し、一人から集団まで多様な過ごし方を受け止めます。2023年のプロポーザルから宇和島市と議論を重ね、高校生とのワークショップでは、家具や空間の使い方だけでなく「誰がどう運営するか」という議論にも発展しました。』
引用元:株式会社 愛媛建築研究所プレスリリース(PR TIMES掲載)
これまで公共の青少年施設は、学習室・交流スペース・イベントホールといった形で用途ごとに空間が明確に分けられてきた。しかし利用者の行動を無意識に限定してしまう面もあり、結果として一部のスペースしか稼働しないという課題を抱える施設は少なくなかった。今回の受賞対象は、既存建物を解体せずに用途転換を行なう「コンバージョン」という手法を採用した点が評価されている。
審査委員による評価コメントでは、既存の建物を壊さずに別目的の施設へ生まれ変わらせる行為が建物の長寿命化につながり、新たな価値と活動を生み出すと指摘されている。老朽化した公共建築をどう扱うかという問いに対して、解体・新築だけが選択肢ではないことを示す事例といえる。
受賞対象となった施設の概要は、敷地面積2,000.21平方メートル、建築面積836.97平方メートル、延床面積2,039.27平方メートルで、改修対象面積(1階)は669.71平方メートル。構造は鉄筋コンクリート造の地上3階建てで、所在地は愛媛県宇和島市堀端町1-25。2026年4月1日にリニューアルオープンしている。
設計監理は白石卓央氏と石崎了一朗氏が担当した。2026年10月31日から11月4日にかけて開催される「GOOD DESIGN EXHIBITION 2026」では、本作品のパネルが展示される予定だ。
愛媛建築研究所は40年以上にわたり愛媛県内を中心に設計監理を行なってきた建築設計事務所であり、今年度はブルーワックスワイナリー(松山市)と宇和島市青少年交流センター ホリバタ(宇和島市)の2件を受賞し、2021年度のひみつジャナイ基地(松山市)とあわせて計3件の受賞実績を持つ。
引用元:株式会社 愛媛建築研究所プレスリリース(PR TIMES掲載)
今回の事例から中小建設業者が得られる示唆は少なくない。地方自治体が抱える空き公共施設や老朽化建築は全国各地に存在し、解体・新築に比べて改修による再生は工期やコスト面でも検討の余地がある選択肢だ。特に人口減少が進む地方都市では、用途を限定しない柔軟な空間づくりが、施設の稼働率を高める鍵になり得る。
また、今回の計画では高校生とのワークショップを通じて「誰がどう運営するか」という運営面の議論にまで発展した点も注目に値する。設計段階から利用者を巻き込み、ハードとソフトの両面を一体で考える姿勢は、公共工事を受注する際の提案力強化にもつながるだろう。
地方での公共案件を手がける中小企業にとって、設計監理会社との連携体制や提案の幅を広げる参考事例となる。
宇和島市の旧図書館を改修した青少年交流センターの受賞は、公共資源の再編という地方都市共通の課題に対する一つの答えを示した。解体・新築ではなく既存建物を活かす発想は、今後も各地の公共施設整備において選択肢の一つとなっていくだろう。
協力会社探しや人材確保など、日常的な情報収集の場として無料で利用できる建設業向けマッチングサイト『建設円陣』もぜひご登録ください(緑のバナーをクリック)。
➡関連記事:仙台スタジアム改修を民間に 七北田公園で25年の官民連携構想
お問い合わせフォームを読み込んでいます。お問い合わせページもご利用いただけます。
お問い合わせフォームを読み込み中です「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。