記事を読み込み中です
「やっと育ってきたと思ったら、また辞めてしまった」——中小建設会社の経営者・先輩監督から、こんな声をよく耳にします。現場監督として若手を採用し、時間とコストをかけて育てても、3年以内に離職してしまうケースが後を絶ちません。この問題は、単なる「個人の意欲」の話ではなく、建設業界の構造的な課題が深く絡んでいます。
国土交通省の調査(2024年度版)によると、建設業における若手(29歳以下)の離職理由の上位は、「職場の人間関係」「仕事のきつさ・負荷の重さ」「将来のキャリアが見えない」の3つが並びます。給与への不満はもちろんありますが、「もう少し稼ぎたい」という理由より、「毎日がしんどくて続けられない」という理由のほうが実態として多いのです。
特に現場監督の若手に顕著なのが、「誰にも相談できない孤独感」です。職人さんとのやり取り、施主への対応、工程管理——これだけの責任を、経験もノウハウも十分でないうちから一人で背負わされる。ベテランの先輩は現場に出ていて忙しく、「ちょっと聞いていいですか」のひと言が言いにくい環境が、じわじわと若手を追い詰めます。
ある中堅建設会社(従業員約40名・関東地方)では、入社2年目の現場監督3名が同時期に退職するという事態が起きました。退職理由として共通して挙げられたのが、「休日が思うように取れない」「失敗しても誰もフォローしてくれない」「5年後・10年後の自分が想像できない」という3点でした。
2024年4月から本格適用された時間外労働の上限規制(建設業の働き方改革関連法)により、残業時間のルールは厳しくなりました。しかし、「仕事量はそのまま」「仕組みが変わっていない」という会社では、実態として若手が割を食う構造が残っています。「残業するな、でも仕事は終わらせろ」という矛盾が、若手の辞める理由の一つになっているのです。
※画像はイメージです
建設キャリアアップシステム(CCUS:Construction Career Up System、CCUSとは:技能者の就業履歴・資格・評価を電子的に一元管理する国の仕組み)が、若手定着の観点からも注目されています。CCUSに登録することで、若手監督・職人の経験年数・取得資格・就業実績が「見える化」されます。これにより、「頑張っても評価されない」という若手の不満を解消する一助になります。
2026年現在、公共工事を中心にCCUSの活用が義務化・推奨される現場が増えており、中小建設業でも早めの整備が求められています。「うちはまだ小さいから」と後回しにしていると、優秀な若手から「キャリアが積み上がる会社」を選んで転職してしまいます。
難しい制度整備の前に、まずは日常の小さな変化から始めましょう。以下の4つは、コストをほとんどかけずに実践できる取り組みです。
週1回15分の「よもやま面談」を設ける
進捗確認ではなく、若手が「困っていること・気になっていること」を自由に話せる場を定期的に作ります。上司が話すより聞く側に回ることが重要です。
失敗を「事例共有」として活かす文化をつくる
ミスをした若手を責めるのではなく、「次はどうすれば防げるか」をチームで話し合う習慣が、心理的安全性(心理的安全性とは:失敗や意見を言っても責められない職場環境)を高めます。
1〜3年後のキャリアイメージを一緒に描く
「来年は施工管理技士の受験を目指そう」「3年後には現場代理人を任せたい」など、具体的な未来を示すだけで、若手のモチベーションは大きく変わります。
現場のIT化・ツール活用で負担を減らす
工程表の共有・日報の電子化・写真管理のアプリ化など、現場管理ツール(例:アンドパッドやスパイダープラスなどのICT施工管理アプリ)を導入することで、若手が感じる「書類仕事の多さ」という不満を大幅に軽減できます。
※画像はイメージです
若手が辞めると、採用コスト・育成コストが丸ごと消えてしまいます。求人媒体への掲載費・面接時間・教育期間を合わせると、1人当たり100万円以上のコストが無駄になるとも言われています。採用の前に、まず「今いる若手が辞めない環境」を整えることが、経営的に見ても最善策です。
また、現場監督の若手が定着している会社は、職人の採用にも強いというデータがあります。「あの会社は若い人が続いている」という評判は、地域の建設業界内でじわじわと広がります。採用ブランディング(採用ブランディングとは:会社の魅力を求職者に伝え、採用力を高めるための取り組み)の観点からも、定着率の向上は大きな武器になります。
若手現場監督が辞める理由は「給与だけ」ではありません。孤独感・キャリアの不透明さ・過重な負担感が重なったとき、「限界」を超えた若手は静かに退職を決めます。制度の整備(CCUSや働き方改革への対応)と日常の小さな改善(面談・ツール化・キャリア面談)を組み合わせることで、「辞めたくない職場」は必ずつくれます。今日から一つでも動き始めましょう。
若手の定着に力を入れながらも、人手が足りないときは協力会社との連携が欠かせません。協力会社探しや現場の人手確保には、無料の建設業向けマッチングサービス『建設円陣』へのご登録をぜひ検討ください(緑のバナーをクリック)。
➡関連記事:鉄骨・型枠解体もCCUS能力評価へ、職人の腕前が4段階で見える化
お問い合わせフォームを読み込んでいます。お問い合わせページもご利用いただけます。
お問い合わせフォームを読み込み中です「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。