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新人職人を育てるうえで重要なのは、いきなり一人で仕事を任せることではない。何を覚えれば次の段階へ進めるのかを明確にし、本人と指導側が同じ基準で成長を確認できる仕組みをつくることだ。
特に中小建設業では、教育担当者が固定されていなかったり、現場の忙しさから「見て覚える」に頼ったりしやすい。そこで有効なのが、独り立ちまでを段階に分けたロードマップである。
「一人で現場に出せる」という言葉だけでは、必要な能力が分からない。まずは自社の仕事に合わせて、独り立ちの条件を具体化したい。
例えば、基本的な道具の名称と使い方を理解している、作業手順を説明できる、危険箇所を自分で確認できる、報告・連絡・相談ができる、といった項目である。 さらに、技術だけでなく安全面を基準に入れることが重要だ。作業前の確認、保護具の着用、周囲への声掛け、異常時の報告など、「知らなかった」では済まされない項目を明文化する。
評価項目を紙やチェック表にしておけば、指導者によって教える内容が変わることも防ぎやすい。
第一段階は「知る」である。会社のルール、現場の基本、安全上の注意、道具の名称などを覚える時期だ。ここでは一度説明して終わりにせず、本人に説明し返してもらうことで理解度を確認する。
第二段階は「補助する」。先輩職人の作業を見ながら、材料運びや道具の準備など、比較的取り組みやすい仕事を担当させる。作業の目的を伝えてから任せることで、単なる手伝いで終わらせないことがポイントである。
第三段階は「部分的に任せる」。一定の作業を本人に任せ、先輩が確認する。失敗をすべて防ぐのではなく、安全を確保したうえで考える機会をつくる。作業後には「何ができたか」「どこで迷ったか」を短時間で振り返る。
第四段階が「独り立ち」である。ただし、独り立ちは放置ではない。必要に応じて相談できる状態を残し、一定期間は確認やフォローを続ける。本人が「分からない」と言いやすい環境も、教育の一部と考えたい。
新人教育で起こりやすいのが、「まだ遅い」「覚えが悪い」といった感覚的な評価である。
これでは本人も何を改善すべきか分からない。例えば「道具を準備できた」だけでなく、「作業開始前に必要な道具を自分で確認できた」というように、行動で評価すると成長が見えやすくなる。
また、評価のタイミングを決めておくことも大切だ。毎日すべてを評価する必要はない。週に一度、5分程度でも「今週できるようになったこと」「次に覚えること」を確認すれば、教育が属人的になりにくい。
本人に次の目標を伝えることで、成長実感にもつながる。
「現場が忙しいから教育できない」という状態を続けると、いつまでも新人が一人で動けるようにならず、結果として先輩側の負担も減らない。そこで、朝礼後の数分、作業終了後の短時間など、教育の時間をあらかじめ予定に組み込む方法が有効である。
重要なのは、教育を特別なイベントにしないことだ。毎日の小さな確認を積み重ね、月単位で成長を振り返る。新人本人だけでなく、指導する職人にも「何を教えるか」を共有しておけば、現場が変わっても教育の質を保ちやすい。
※画像はイメージです
新人職人の独り立ちは、教育の終了ではない。自分で判断できる範囲を少しずつ広げ、より難しい仕事へ進むための節目である。
中小建設業が人材を定着させるには、入社後の数カ月だけを見るのではなく、半年後、1年後にどんな仕事を任せたいのかまで考えておくことが重要だ。
ロードマップを作る際は、完璧な制度を最初から目指す必要はない。まずは「安全」「基本作業」「報告・連絡・相談」「一人で任せられる作業」の4項目程度から始めてもよい。
現場で実際に運用し、分かりにくい部分を修正していけば、自社に合った新人教育の仕組みへ育てられる。
新人職人を独り立ちさせるには、「見て覚える」だけに頼らず、覚える内容と次の目標を段階的に示すことが重要である。小さな成長を確認しながら任せる範囲を広げれば、新人にとっても指導する側にとっても、成長の道筋が見えやすくなる。
人材不足が続く建設業だからこそ、採用した人材を育て、長く活躍してもらう仕組みを現場の中に整えておきたい。
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