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近年、「人が辞めること」が企業経営に与える影響はますます大きくなっています。特に建設業では、職人や現場監督など経験豊富な人材が退職すると、受注した工事を予定どおり進められなくなるだけでなく、新規案件の受注停止や取引先からの信用低下につながることもあります。
帝国データバンクが公表した最新調査では、「従業員の退職」が直接・間接的な原因となる倒産が過去最多ペースで増加していることが明らかになりました。人手不足が続く今、採用だけではなく「辞めさせない経営」が重要なテーマとなっています。
『2026年1-7月に判明した人手不足倒産のうち、従業員や経営幹部などの退職が直接・間接的に要因となった「従業員退職型」の倒産は、合計で83件判明した。前年同期(74件)に比べて9件・約12.2%多く、コロナ禍の2022年以降、5年連続で増加した。このペースで推移した場合、初めて年100件を超えた前年(124件)を大幅に上回り、単年で過去最多の更新が確実となっている。』
引用元:株式会社帝国データバンクプレスリリース(PR TIMES掲載)
この調査で特に注目すべきなのは、建設業も退職型倒産が増えている業種として挙げられている点です。
現場を支える職人や営業担当者が相次いで退職し、事業継続が難しくなるケースが増加しています。 従来は「仕事さえあれば何とかなる」と考えられていた建設業ですが、現在は仕事よりも人材の確保・定着が経営課題になりつつあります。
中小建設会社の多くは、数名から十数名程度で現場を回しています。そのため、一人のベテラン職人が退職するだけでも会社全体への影響は非常に大きくなります。
例えば、
・現場責任者が不足する
・若手を指導できる人がいなくなる
・工期が遅れる
・新規受注を断らざるを得なくなる
といった問題が連鎖的に発生します。
さらに、退職した社員が同業他社へ転職したり独立したりすることで、取引先や協力会社との関係まで変化するケースも珍しくありません。
建設業では資格や経験を持つ人材ほど代わりが見つかりにくく、採用市場でも競争が激化しています。そのため、「辞めたら補充すればよい」という考え方は通用しなくなっています。
もちろん賃金は重要な要素です。しかし近年では、それだけが退職理由ではありません。
建設業の現場では、
・休みが取りづらい
・評価基準が曖昧
・将来のキャリアが見えない
・経営者との距離が遠い
・現場の人間関係に悩んでいる
といった理由で転職を決断するケースも増えています。
特に若手世代は給与だけでなく、働きやすさや成長できる環境を重視する傾向があります。給与を大幅に上げられない企業であっても、働き方やコミュニケーションを改善することで離職率を下げられる可能性があります。
人材不足を「採用」で解決することが難しい現在では、「辞めない会社づくり」がこれまで以上に重要になっています。
まず取り組みたいのが、定期的な面談です。年に一度の評価面談だけではなく、月に一度でも仕事の悩みや将来の希望を聞く機会を設けることで、小さな不満を早期に把握できます。
次に、評価基準の見える化も効果的です。資格取得や現場での成果、後輩指導など、何を評価して給与や役職につながるのかを明確にすることで、社員は将来像を描きやすくなります。
また、技能継承も重要です。特定のベテランだけが担当できる業務を減らし、写真や動画、マニュアルを活用してノウハウを共有することで、退職時の影響を最小限に抑えられます。
※画像はイメージです
帝国データバンクの調査でも、人手不足と退職が経営へ深刻な影響を及ぼしていることが示されています。今後も労働人口の減少が続くことを考えれば、人材定着への投資はコストではなく、会社を守るための経営戦略と考えるべきでしょう。
建設業では受注があっても、人がいなければ売上は生まれません。反対に、信頼できる社員が定着していれば、新規採用が難しい状況でも安定した経営を続けやすくなります。
給与改善だけでなく、働きやすい職場づくりや教育体制の充実、日頃のコミュニケーションを積み重ねることが、結果として離職防止につながります。経営者自身が「社員に選ばれる会社」を意識することが、これからの建設業には欠かせません。
「従業員の退職による倒産」は、決して一部の業界だけの話ではありません。建設業でも、現場を支える人材を失うことが事業継続そのものを左右する時代になっています。
採用活動と同じくらい、人材定着への取り組みに力を入れることが、会社の未来を守る大きな一歩となるでしょう。
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