記事を読み込み中です

建設業では慢性的な人手不足に加え、時間外労働の上限規制への対応や資材価格の高騰など、経営を取り巻く環境が大きく変化しています。
そのなかで、受注や利益だけでなく「社員が安心して働き続けられる会社づくり」が重要な経営課題となっています。 こうした状況を裏付ける調査結果として、株式会社アジャイルHRが発表した2026年版の全国従業員エンゲージメント調査では、建設業が16業種中12位という結果となりました。
単純に給与や福利厚生だけでは改善できない、組織マネジメントの課題が浮き彫りになっています。
本記事では、調査結果をもとに建設業が抱える組織運営上の課題を整理し、中小建設会社でも実践できるマネジメント改善のヒントをご紹介します。
『株式会社アジャイルHRと株式会社インテージが共同開発し、東京大学と共同研究を行なった「A&Iエンゲージメント標準調査」の全国調査を実施しました。第1弾、第2弾の速報に続き、今回は業種別の分析結果をお届けします。2年連続トップ独走の「学術研究、専門・技術サービス業」と、2位に躍進した「一次産業」。医師の働き方改革の影響で9位に順位を落とした「医療・福祉」、慢性的な「2024年問題」に苦しむ「建設業、運輸業」、3年連続で最下位の「製造業」の構造的要因を徹底分析します!』
引用元:株式会社アジャイルHR プレスリリース(PR TIMES掲載)
エンゲージメントとは、社員が仕事に対して意欲を持ち、自社に貢献したいと考える状態を示す指標です。単なる満足度とは異なり、「働きがい」「会社への信頼」「将来も働き続けたいという意思」などを総合的に評価します。
近年では、大企業だけでなく中小企業でも人的資本経営への関心が高まり、エンゲージメントを重要な経営指標として活用する企業が増えています。 調査では、日本全体のエンゲージメントは2024年以降、大きな改善が見られず横ばいが続いています。
建設業も例外ではなく、人手不足や働き方改革への対応が進む一方で、現場の負担軽減や組織改革が十分に追いついていないことが、数値にも表れていると考えられます。
経営者にとって重要なのは、「順位が低かった」という結果だけを見ることではありません。なぜ改善が進まないのか、その背景を理解し、自社に置き換えて考えることが大切です。
今回の調査では、建設業は「投資不足・エンゲージメント低迷型」のグループに分類されました。
背景には複数の要因がありますが、特に大きいのは慢性的な人材不足です。限られた人数で複数の現場を担当するケースも珍しくなく、一人あたりの業務負担は依然として高い状況が続いています。
さらに、2024年から時間外労働の上限規制が適用されたことで、長時間労働の是正は進みました。しかし、工期や受注量、人員配置そのものが大きく変わったわけではないため、現場では「短い時間で同じ成果を求められる」という状況が発生しています。
また、残業時間の減少によって収入が下がったと感じる社員もおり、「働き方改革が必ずしも働きやすさにつながっていない」という声も聞かれます。
このような課題は、設備投資だけで解決できるものではありません。現場運営の見直しや情報共有の仕組みづくり、社員とのコミュニケーションなど、日々のマネジメントを改善することが、企業全体の組織力を高める第一歩となります。
エンゲージメントを高めるためには、大規模な制度改革や多額の投資が不可欠というわけではありません。中小建設会社だからこそ実践しやすい改善策も数多くあります。
まず重要なのは、現場の声を経営に反映する仕組みをつくることです。朝礼や定例会議を単なる連絡事項の共有で終わらせるのではなく、現場で感じている課題や改善案を発言できる時間を設けることで、心理的安全性の向上につながります。
また、評価基準を明確にすることも欠かせません。努力しても評価されないという不満は、仕事への意欲を低下させる大きな要因です。資格取得や技能向上、安全への取り組みなどを適切に評価できる仕組みを整えることで、社員は目標を持って働きやすくなります。
さらに、現場責任者にマネジメント教育を行なうことも重要です。現場監督は施工管理だけでなく、人材育成やコミュニケーションの中心的な役割も担っています。管理職のマネジメント力が向上すれば、組織全体の雰囲気も大きく変わります。
※画像はイメージです
調査では、人材投資やAI活用だけではエンゲージメント向上に直結しないという結果も示されています。 つまり、システムを導入するだけでは十分ではなく、それを活用しやすい組織づくりが重要ということです。
例えば、施工管理アプリやクラウドによる情報共有、電子黒板、オンラインでの工程管理などは、現場の負担軽減に役立つツールです。しかし、導入後の運用ルールが曖昧だったり、現場への教育が不足していたりすると、かえって業務が複雑になる場合があります。
そのため、DXを進める際には「現場で使いやすいか」「作業時間が本当に短縮されるか」という視点を持ち、社員の意見を取り入れながら改善を続けることが重要です。
また、生産性向上はITだけでは実現できません。工程管理の見直しや協力会社との情報共有、役割分担の明確化など、小さな改善を積み重ねることが結果として現場全体の効率化につながります。
人材不足が続く時代では、受注競争だけでなく、人材から選ばれる会社になることも経営戦略の一つです。 給与や休日だけで差別化することが難しい中、働きやすい職場環境や成長できる仕組み、相談しやすい組織風土は企業の大きな強みになります。
今回の調査結果は、建設業全体が厳しい状況に置かれていることを示していますが、裏を返せば、組織づくりに積極的に取り組む企業には大きな伸びしろがあるということでもあります。 経営者が現場との対話を重ね、業務改善を継続し、社員一人ひとりが能力を発揮できる環境を整えることが、将来の人材確保や企業の成長につながっていくでしょう。
全国1万人を対象とした最新調査では、建設業の従業員エンゲージメントは依然として低い水準にあり、人手不足や働き方改革への対応が現場に大きな負担を与えている現状が明らかになりました。 しかし、調査結果から見えてくるのは課題だけではありません。
心理的安全性を高めるコミュニケーション、納得感のある評価制度、現場に寄り添ったDXの推進など、中小建設会社でも実践できる改善策は数多くあります。 これからの建設業では、技術力や価格競争力だけでなく、「社員が安心して働き、成長できる組織」であることが企業価値につながります。
組織力の強化を経営課題として捉え、小さな改善を積み重ねることが、持続的な成長への第一歩となるでしょう。
本サイトについて、ご質問・ご相談がある場合は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。 あわせて、協力会社探しや人材確保など、日常的な情報収集の場として無料で利用できる建設業向けマッチングサイト『建設円陣』もぜひご登録ください(緑のバナーをクリック)。
本サイトについて、ご質問・ご相談がある場合は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。
「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。