記事を読み込み中です

建設業界では人手不足や高齢化が進み、「経験者がいないと現場が回らない」「品質が担当者によってばらつく」といった悩みを抱える中小企業が増えています。特に木造住宅やアパート建築では、職人の経験や勘に頼る工程が多く、技術継承が大きな課題となっています。
こうした中、神奈川県のユーミーらいふグループ・株式会社marukanは、「職人技を仕組みに変える」という考え方で現場改革を進めています。AIやDXを活用しながら、誰が担当しても一定以上の品質を実現できる体制づくりに取り組んでいる点が注目されています。
『オーナー様の大切な資産を誰が担当しても高品質に建てられる仕組みづくりを推進しています。』
『経験から生まれた素晴らしい知見を「仕組み(数字)」に変え、誰もが高品質な建物をつくれる環境を整えることです。』
引用元:株式会社marukanプレスリリース(PR TIMES掲載)
建設現場では長年、「現場合わせ」と呼ばれる調整作業が当たり前でした。図面どおりに収まらない部分を、その場で加工し、ベテランの判断で納めていく文化です。
しかしこの方法には、次のような課題があります。
* ベテランが休むと品質が不安定になる
* 新人が育つまでに時間がかかる
* 手戻りが発生しやすい
* 現場監督の負担が大きい
* 若手が定着しにくい
実際、日本の建設業は他産業に比べて労働生産性が低いことが指摘されており、現場の非効率が大きな経営課題になっています。
1. 骨組みの「パズル化」
従来は熟練が必要だった「斜め打ち」を減らし、専用金物を使って正面から固定できる構法へ変更。誰が施工してもズレにくく、高い強度を確保できるようにしています。
2. 左官の「1ミリ施工」
厚く塗る難しい左官技術ではなく、1ミリずつ4回重ね塗りする方式を採用。未経験者でも均一な仕上がりを再現しやすくした点が特徴です。
3. 全数動画管理
壁で隠れる前のビスや金物を動画で撮影し、オーナーに公開。施工履歴を「見える化」することで、品質への信頼を高めています。
引用元:株式会社marukanプレスリリース(PR TIMES掲載)
同社の取り組みで重要なのは、「AIを使うこと」自体を目的にしていない点です。
目指しているのは、雨漏りを防ぎ、地震に強く、長く資産価値を保てる建物をつくること。そのための手段として、クラウド管理やAIチェック、定点カメラなどを活用しています。
特に中小企業にとって参考になるのは、「いきなり大規模DXをする」のではなく、品質を安定させるために必要な部分からデジタル化を進めている点でしょう。
「仕組み化」と聞くと、大手企業だからできる取り組みだと感じる経営者も少なくありません。しかし、本質は高額なシステムを導入することではなく、「誰が担当しても一定の品質を確保できる環境を整えること」にあります。
まず取り組みたいのが、施工手順の見える化です。ベテラン職人が当たり前に行なっている作業を文章や写真、動画で残しておくだけでも、若手への教育効果は大きく変わります。作業ごとの確認項目をチェックリスト化すれば、経験の浅い社員でも確認漏れを防ぎやすくなります。
次に、現場写真の撮影ルールを統一することも有効です。撮影位置やタイミングを決めておけば、施工後に見えなくなる部分も記録として残り、不具合発生時の確認や施主への説明資料として活用できます。
さらに、朝礼や終礼で発生した改善点を共有し、小さな成功事例を社内で蓄積していくことも重要です。一人の経験を会社全体の財産へ変えていくことが、属人化を防ぐ第一歩になります。
これまでの技術継承は、「先輩の背中を見て覚える」という文化が根強く残っていました。しかし、人手不足が続く現在では、その方法だけでは十分とはいえません。
動画による作業記録、クラウドでの図面共有、チェックリストの標準化など、技術を「残す」仕組みを整えることで、新人教育の効率は大きく向上します。
また、品質基準が明確になれば、現場監督がすべてを確認し続ける必要もなくなり、管理業務の負担軽減にもつながります。これは時間外労働の削減や働き方改革にも寄与するため、経営面でも大きなメリットがあります。
AIやDXという言葉に難しい印象を持つ方も多いかもしれません。しかし、現場に必要なのは最新技術を導入することではなく、日々の業務を少しでも効率化することです。
例えば、写真管理アプリやクラウドストレージ、オンライン会議ツールなど、すでに多くの企業で利用されているサービスでも十分に業務改善は可能です。大切なのは、「何を導入するか」ではなく、「どの課題を解決したいか」を明確にすることです。
品質管理、人材育成、情報共有など、自社の課題に合わせて小さく始めることが、仕組み化を成功させる近道といえるでしょう。
人手不足が続く建設業界では、これまで以上に「人」に依存しない現場づくりが求められています。ベテラン職人の経験や勘は貴重な財産ですが、それを会社全体で共有できる仕組みへと変えることが、品質の安定、人材育成、生産性向上につながります。
今回紹介した株式会社marukanの取り組みは、その一例に過ぎません。しかし、「誰が施工しても一定の品質を実現する」という考え方は、多くの中小建設会社にとって参考になるのではないでしょうか。
自社で取り入れられる改善から一歩ずつ始めることが、将来の競争力強化につながります。
本サイトについて、ご質問・ご相談がある場合は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。 あわせて、協力会社探しや人材確保など、日常的な情報収集の場として無料で利用できる建設業向けマッチングサイト「建設円陣」もぜひご登録ください(緑のバナーをクリック)。
本サイトについて、ご質問・ご相談がある場合は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。
「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。