記事を読み込み中です

建設業の現場は、完成した構造物の陰に隠れがちだ。橋が架かり、ビルが建ち、インフラが整っても、それを支えた足場の存在は誰にも見えない。そんな「見えにくい仕事」に、音楽とダンスという全く異なるアプローチで光を当てようとしている企業がある。仮設機材メーカーの日綜産業株式会社(本社:千葉県千葉市)が2026年9月19日に公開したブランドムービー「QuikDeck Brand Anthem」は、足場業界のイメージを根底から揺さぶる意欲作として注目を集めている。
日綜産業が今回公開したのは、先行床施工式システム吊り足場「クイックデッキ(QuikDeck)」(クイックデッキとは:上から吊り下げて設置する作業用床で、橋梁・プラントなど大規模工事で使用される足場システム)を舞台としたブランドムービーだ。出演したのは、世界最高峰のプロダンスリーグ第一生命D.LEAGUEにて優勝チーム「FULLCAST RAISERZ」に所属するダンサーたちである。
プレスリリースでは次のように説明されている。
『建設現場で使われる足場が、3人のダンサーのステージに。音楽に合わせた力強いパフォーマンスと、作業着や装備から着想を得た衣装を通じて、街をつくり、守る仕事を、いつもとは少し違う角度から映し出します。』
引用元:日綜産業株式会社プレスリリース(PR TIMES掲載)
披露されたのは、KRUMP(クランプ)(KRUMPとは:力強い身体の動きと感情表現を組み合わせたストリートダンスのスタイル)と呼ばれる激しいダンスジャンル。照明に浮かび上がる金属の骨組みの上で、3人のダンサーが床を踏みしめ、腕や上半身を大きく使い、感情を爆発させる。衣装は、YOASOBIやINIなどのスタイリングを担当するauskou(アウスコウ)が担当。現場の作業着や装備を着想源とした黒を基調としたデザインで、建設現場のリアリティをファッションの文脈で昇華させた。
日綜産業がこのような映像制作に踏み切った背景には、建設業界が長年直面している根本的な課題がある。それは「現場の仕事が社会から見えにくい」という問題だ。
足場は、工事が完了すると撤去される。橋が完成すれば、その橋を支えた無数の仮設資材は跡形もなく消え去る。働く人々の技術と労力が凝縮されているにもかかわらず、完成物しか残らないのが建設業の宿命でもある。
プレスリリースでは、同社の姿勢をこう表現している。
『暮らしを支える仕事でありながら、関心を持たれる機会は多くありません。日本のインフラをこれからも守り続けるために、この仕事が見えにくいままでよいとは考えていません。』
引用元:日綜産業株式会社プレスリリース(PR TIMES掲載)
建設業界全体が人手不足・若者離れという構造的問題を抱えるなかで、業界イメージの刷新は採用力の向上とも直結する。現場を知らない若い世代に「建設の仕事はかっこいい」と感じてもらう取り組みが、今まさに求められている。
日綜産業の取り組みは、大手メーカーならではのスケールではあるが、その根底にある発想は規模を問わず建設業者が参考にできるものだ。「自社の仕事を外に向けて発信する」というブランディング(ブランディングとは:企業や製品の価値・個性を社会に伝え、認知や信頼を高める活動)の視点は、中小の工務店や専門工事業者にとっても今日的な経営課題といえる。
たとえば、現場作業の様子をSNSで発信する、施工前後の写真を自社サイトに掲載する、若手職人の日常をショート動画で紹介するなど、予算をかけなくても「仕事を見せる」手段は増えている。クイックデッキのブランドムービーが業界外に反響を呼んでいるのは、現場の素材そのものに魅力があるからに他ならない。
自社の施工技術、職人の技、使用している道具や資材――これらはすべて、発信すれば「採用」「受注」「信頼」につながりうるコンテンツだ。日綜産業のアプローチは、建設業者が自らの価値を再認識し、外に向けて発信する重要性を改めて示している。
クイックデッキは、橋梁・工場・大規模建築物などの工事において、作業者の足元を支える先行床施工式システム吊り足場だ。日綜産業が2014年から販売・レンタルを開始しており、同社は1968年創業以来58年にわたり「建設労働災害の撲滅」を企業理念の柱に据えてきた。
先行床施工式(先行床施工式とは:作業床を先に設置し、その床の上から足場を組み進める安全性の高い施工方式)の採用により、組立時の安全性と作業効率が大幅に向上する。岡山城のお隣に架かる月見橋でも採用実績があり、歴史的・景観的に重要な橋梁工事においても信頼を得ている。
今回のブランドムービー公開日は、昨年制定された「吊り足場『クイックデッキ』の日」にちなんでいる。製品の認知拡大を、記念日制定というかたちで制度化し、映像コンテンツと連動させる手法も、情報発信戦略として学ぶ価値がある。
足場の上でダンサーが踊る映像は、単なるPR動画にとどまらず、建設業界が社会にどう見られ、どう伝わっていくかという本質的な問いを投げかけている。「完成すれば消える仕事」を誇りと発信力で可視化しようとする日綜産業の姿勢は、現場を支えるすべての建設業者にとって、業界イメージの刷新と人材確保に向けた一つのヒントとなるはずだ。
本サイトについて、ご質問・ご相談がある場合は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。
建設業界のイメージ刷新が進むなか、現場を支える協力会社や人手の確保はますます重要な経営課題となっています。業界内でのネットワーク構築や協力会社探しには、無料の建設業向けマッチングサービス『建設円陣』へのご登録から始めてみてください(緑のバナーをクリック)。
➡関連記事:秋の現場、整えてますか?🍂 9月最終週にやっておきたい10月準備リスト
➡関連記事:岐阜の下水道管路、官民で10年管理へ 地元建設会社にも出番あり
➡関連記事:安全と品質は『明るさ』より『言いやすさ』
お問い合わせフォームを読み込んでいます。お問い合わせページもご利用いただけます。
お問い合わせフォームを読み込み中です「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。