記事を読み込み中です

福島県郡山市が、市立美術館の大規模改修に向けた方針を示しました。令和8年9月定例会の常任委員会に教育総務部が提出した資料によると、2025(令和7)年度に実施した劣化診断を踏まえ、2026(令和8)年度に改修の基本的な考え方を取りまとめ、2027(令和9)年度以降に設計(基本設計・実施設計)と改修工事へ進む流れが示されています。
結論から言えば、外構から屋根・外壁、電気・空調・給排水まで建物全体に手が入る計画であり、地域の建設会社や設備業者にとって中長期で注目しておきたい案件です。
郡山市立美術館は1992(平成4)年11月21日に開館し、令和8年度で築34年目を迎えます。設計は建築家の柳澤孝彦氏で、構造は鉄筋及び鉄骨鉄筋コンクリート造の地上2階・地下1階。敷地面積は38,420.24㎡、延床面積は6,848.37㎡です。
建築関係では、平成6年に建築業協会賞(BCS賞)、福島県建築文化賞奨励賞、日本芸術院賞を受賞し、平成10年には公共建築賞と公共建築百選(公共建築百選とは:地域の景観や文化に貢献する優れた公共建築として選ばれた建築物)にも選ばれています。
一方で、資料では施設老朽化の主な現状として、空調設備等機械の老朽化、屋根の防水機能の劣化、外壁の亀裂・ひび割れ多数、電動ロールスクリーンの劣化、キャノピー(キャノピーとは:建物の出入口などに設けられるひさし状の屋根)下の地盤沈下による床面の歪み、洋式トイレの未整備の6点が挙げられています。
郡山市立美術館の施設概要 |
|
|---|---|
開館 |
1992(平成4)年11月21日(令和8年度で築34年目) |
設計 |
柳澤孝彦(1935-2017) |
敷地面積 |
38,420.24㎡ |
延床面積 |
6,848.37㎡ |
構造 |
鉄筋及び鉄骨鉄筋コンクリート造 地上2階・地下1階 |
主な受賞歴 |
建築業協会賞(BCS賞)、福島県建築文化賞奨励賞、日本芸術院賞(以上、平成6年) |
出典:郡山市ウェブサイト(https://www.city.koriyama.lg.jp/uploaded/attachment/131148.pdf)の情報をもとに作成
令和7年度の劣化診断では、建築物の評価として「今後80年は十分使用できる建物」とされ、コンクリート強度や鉄筋などの安全性も十分に確保されていると整理されました。つまり、建て替えではなく長寿命化を前提とした改修が選ばれた形です。
同時に「要対応」とされた事項として、震災によるキャノピー周辺の地盤沈下、空調設備等の経年劣化、美術作品の保存管理等のための収蔵庫や展示室の改修等、バリアフリートイレや授乳室の整備・ユニバーサルデザイン化が示されています。
利用状況も見ておきましょう。施設利用者数は2021(令和3)年度が91,461人、2024(令和6)年度が148,060人、2025(令和7)年度が108,507人(常設展27,418人、企画展53,168人、教育普及27,921人)です。年間およそ9万〜15万人が利用する、地域の文化拠点であることがわかります。
|
郡山市立美術館の施設利用者数の推移(単位:人) |
||||
|---|---|---|---|---|
年度 |
常設展 |
企画展 |
教育普及 |
合計 |
2021(令和3) |
24,079 |
49,625 |
17,757 |
91,461 |
2022(令和4) |
31,383 |
55,905 |
20,142 |
107,430 |
2023(令和5) |
27,877 |
47,373 |
26,630 |
101,880 |
2024(令和6) |
43,365 |
83,550 |
21,145 |
148,060 |
2025(令和7) |
27,418 |
53,168 |
27,921 |
108,507 |
出典:郡山市ウェブサイト(https://www.city.koriyama.lg.jp/uploaded/attachment/131148.pdf)の情報をもとに作成
資料では改修の基本的な考え方として2本の柱が示されています。
1本目は施設の長寿命化のための建築・設備等の大規模な改修で、対象は①外構(プロムナード、カスケード)(カスケードとは:階段状に水を流す水景施設)、②屋根、外壁、擁壁(擁壁とは:土砂の崩れを防ぐために設ける壁状の構造物)、③天井、ロールカーテン、④防火・防災設備、LED照明設備、⑤電気設備、空調設備、給排水設備です。
2本目は社会的等ニーズへの対応で、監視カメラの更新及び増設、視聴設備・音響設備の更新、トイレや自動ドア等のバリアフリー化、授乳室やユニバーサルデザインの導入が挙げられています。
劣化の捉え方も、技術の進歩等で旧式となった設備への対応(機能的劣化)、経年や高頻度の使用による品質・性能低下への対応(物理的劣化)、利用者ニーズや社会環境の変化への対応(社会的劣化)の3つに整理されています。
改修に係る基本的な考え方 |
|
|---|---|
|
1 長寿命化のための大規模な改修(建築・設備等) |
①外構(プロムナード、カスケード) |
2 社会的等ニーズへの対応 |
①監視カメラの更新及び増設 |
出典:郡山市ウェブサイト(https://www.city.koriyama.lg.jp/uploaded/attachment/131148.pdf)の情報をもとに作成
改修工事までの流れは、郡山市公共施設個別施設計画(R8~第二期)に基づき、2025年度の施設劣化診断、2026年度の改修の基本的な考え方の取りまとめを経て、2027年度以降に基本設計・実施設計(基本設計とは:建物の全体像や仕様の大枠を決める段階、実施設計とは:工事に必要な詳細図面を作る段階)、そして改修工事へと進む予定です。
防水・外壁補修、空調や電気設備、外構、天井と、専門工事の出番が多い計画です。今のうちに公共建築の改修実績を整理し、協力会社とのつながりを確認しておくと、発注段階で慌てずに済みます。
|
改修工事までの流れ(郡山市公共施設個別施設計画(R8~第二期)) |
|
|---|---|
2025(令和7)年度 |
施設劣化診断の実施(機能的劣化・物理的劣化の確認) |
2026(令和8)年度 |
改修の基本的な考え方の取りまとめ(社会的劣化:利用者ニーズ、社会環境の変化への対応) |
2027(令和9)年度以降 |
改修に係る設計(基本設計・実施設計) |
出典:郡山市ウェブサイト(https://www.city.koriyama.lg.jp/uploaded/attachment/131148.pdf)の情報をもとに作成
郡山市立美術館の大規模改修は、劣化診断で「今後80年は十分使用できる」とされた建物を、建築・設備の両面から次の世代へつなぐ取り組みです。
2027年度以降の設計・工事に向けて、市の今後の発表を継続的にチェックしておきましょう。
本サイトについて、ご質問・ご相談がある場合は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。
郡山市立美術館の大規模改修のように、防水・外壁・設備と多工種がかかわる公共建築改修に備えた協力会社探しには、無料の建設業向けマッチングサービス『建設円陣』にぜひご登録ください(緑のバナーをクリック)。
出典:美術館の大規模改修について-郡山市立美術館-(令和8年9月定例会 常任委員会資料)(郡山市 教育総務部)(https://www.city.koriyama.lg.jp/uploaded/attachment/131148.pdf)をもとに作成
➡関連記事:インフラ管理が「性能保証」時代へ、道路も統合マネジメントで変わる
お問い合わせフォームを読み込んでいます。お問い合わせページもご利用いただけます。
お問い合わせフォームを読み込み中です「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。