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集中豪雨や台風による水害が激しさを増すなか、河川沿いの建設現場では水位の急上昇が作業員の命を左右するリスクとなっている。これまで現場の水位確認は、監視員の目視や定時の巡回に頼る部分が大きかった。こうした「人が見張る」安全管理を変える可能性のある取り組みとして、建設ICT企業の株式会社シーティーエスが、DSRアジア、岩田地崎建設と共同で新たな実証実験に乗り出した。
株式会社シーティーエス(本社:長野県上田市)は2026年10月29日、DSRアジア、岩田地崎建設株式会社と共同で、関東地方の河川堤防整備工事の現場において『AIカメラによる水位検知の実証実験を開始しました。』と発表した。
(AI水位検知ソリューション 映像)
引用元:株式会社シーティーエスプレスリリース(PR TIMES掲載)
実証では、AXISネットワークカメラと、DSRの完全子会社であるNoemaが開発したAI洪水検知アプリケーション「Noema Flood Monitor」を組み合わせる。カメラ内のエッジAIが水位を読み取り、同社のクラウド映像サービス「IoT SmartHub」が閾値を判定して、基準を超えた場合はチャットで管理者へ即座に通知する仕組みだ。
今回の実証が示しているのは、河川工事の水位監視が、人の目に頼る方式から、AIが常時監視して異常時だけ人に知らせる方式へと移りつつあるという流れだ。
監視員を張り付けなくても、夜間や休工日を含めて水位の変化を把握できれば、避難判断の遅れを防ぎ、人手不足に悩む現場の負担も軽くできる。
注目すべきは、現場条件への配慮だ。本実証は商用電源を使わないオフグリッド構成で、ソーラーパネルと蓄電池で給電し、通信には4G LTEを用いる。電源設備のない堤防工事の現場でも設置しやすい点は大きな利点といえる。
また、AI解析をカメラ内部で完結させるため、映像を常時クラウドへ送る方式に比べて通信量を抑えられる。録画と遠隔確認にはクラウド録画サービス「CamStreamer Cloud」を使い、事務所からでも映像の確認や機器の保守ができる。
検証項目には、水面認識の安定性、撮影距離や画角・設置高さによる検知性能の差、夜間や雨天時の精度、超高感度ボックス型カメラと広角バレット型カメラの比較、設置・撤去・保守の作業性などが並ぶ。いずれも現場運用に直結する内容だ。
背景には水害リスクの拡大がある。気象庁の解析では、1時間に50mm以上の短時間強雨の年間発生回数は、直近10年の平均で統計開始当初のおよそ1.5倍に増えている。
(出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html)
引用元:株式会社シーティーエスプレスリリース(PR TIMES掲載)
被害額も同様だ。国土交通省「水害統計調査」によると、年平均の水害被害額(平成27年価格換算)は、2014年から2023年の10年平均で約7,516億円となり、その前の10年平均の約5,089億円から約1.5倍に膨らんだ。
(出典:国土交通省「水害統計調査」経年諸表 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?toukei=00600590&tstat=000001222080)
3社は実証で得た知見をもとに、河川監視や道路冠水監視向けAIソリューションの標準構成、設置条件、運用方法を整理し、サービスとしての展開を目指すとしている。国土交通省も「i-Construction 2.0」で、2040年度までに建設現場の省人化3割、生産性1.5倍を掲げ、施工管理の自動化を進めている。
今後、公共工事を中心に、水位や気象の自動監視が安全管理の前提として求められる場面は増えていくとみられる。
(出典:国土交通省 報道発表資料 https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001085.html)
大掛かりなシステムをすぐに導入できない中小企業でも、準備は始められる。
第一に、気象庁の「キキクル(危険度分布)」や国土交通省の「川の防災情報」など無料の公的情報を、朝礼や作業判断に組み込むこと。
第二に、避難を開始する水位や雨量の基準を工事ごとに数値で決め、全員で共有すること。
第三に、カメラやセンサーのレンタル、クラウドサービスの情報を集め、次の河川工事の見積段階から安全対策費として検討することだ。
河川工事における水害リスクは、もはや「まれな事態」ではない。AIによる水位の常時監視は、作業員の命を守ると同時に、限られた人員で現場を回すための現実的な手段になりつつある。自社の現場に合った備えを、今のうちから考えておきたい。
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