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気温が下がり始めると、多くの現場作業員が「手がかじかんで力が入らない」「細かい作業がしにくい」という悩みを抱えるようになる。特に中小の建設会社では、手袋はひとり一人が自己調達するケースも多く、選び方のノウハウが社内に蓄積されにくい。
しかし手袋は、単なる防寒具ではなく、作業効率・安全性・疲労軽減に直結する重要な現場装備である。今回は実際の現場環境に即した、秋冬の手袋選びの正解を整理する。
寒さ対策として真っ先に思い浮かぶのが「厚手の手袋」だが、これが思わぬリスクを生む。断熱性の高い素材で作られた分厚い手袋は保温力に優れる反面、指先の感覚が著しく低下するため、工具の握り損ね・ビスの落下・精度を要する作業でのミスが増加しやすい。手袋の厚みによる握り損ねや部材の取り落としは、ヒヤリハットの典型例としてよく挙げられるものだ。
また、厚手の手袋は蒸れによる手荒れも引き起こしやすい。手袋の中で汗をかいた状態で外気にさらされると、汗が冷えて体感温度がさらに下がり、手指の冷えが進みやすくなる。しもやけなどの原因にもなるため、防寒性だけを優先することが、かえって健康面での損失につながるのである。
なお、ボール盤や面取り盤など、回転する刃物に手袋が巻き込まれるおそれのある作業では、労働安全衛生規則第111条により手袋の使用自体が禁止されている。寒い時期でも防寒を理由に例外を作らないよう、社内ルールでも明記しておきたい。
※画像はイメージです
秋冬の現場向け手袋は、大きく以下の4系統に分類できる。それぞれの特性を理解したうえで、作業内容に合わせて使い分けることが重要だ。
ポリウレタン系は薄手で指先の感度が高く、精密作業・内装仕上げ・電気工事に向く。保温性は低いため、インナーグローブとの組み合わせが基本となる。国内の手袋専業メーカー各社がこのカテゴリに注力しており、フィット感や耐摩耗性の異なる多数のラインナップが市販されている。
ニトリル系は耐油性・耐薬品性に優れ、型枠・設備・塗装工事など油脂や薬剤を扱う作業に適している。グリップ力が高く、濡れた面でも滑りにくい特性があるため、天候に左右される屋外作業の多い職人にも選ばれやすい素材だ。
革(レザー)系は耐久性・耐熱性・グリップ性能を高次元で備えており、鉄骨・とび・解体工事など荒れた現場環境に最適だ。豚革・牛革・鹿革とそれぞれ肌触りや柔軟性が異なる。使い込むほど手に馴染むため、ベテランの職人から根強い支持を集める素材である。
防振手袋はチェーンソー・ハンマードリル・コンクリートブレーカーなど振動工具を使用する際に不可欠だ。JIS T 8114(防振手袋)やISO 10819に適合した製品を選ぶことが、厚生労働省の振動障害予防対策の指針でも求められており、振動工具を多用する外構・基礎・解体工事の職人は防振性能を最優先に選定したい。
防寒性と操作性を同時に確保するうえで有効なのが、インナーグローブ+アウターグローブの重ね使いだ。これは衣類のレイヤリング(重ね着)と同じ考え方で、薄手のインナーが保温と吸湿を担い、アウターが防風・防水・グリップ機能を担う構成である。
インナーグローブには、シルク素材や吸湿発熱素材(吸湿発熱素材とは:水蒸気を吸収することで発熱する繊維素材)を使ったものが適している。薄手でありながら保温性を確保できるため、アウターの操作性を損なわずに防寒効果を高められる。ホームセンターや作業用品店で手軽に入手でき、コストパフォーマンスに優れた製品が多い。
外仕事でも精密作業を行なう電気・通信工事の職人には、指先がカットアウトになっているハーフフィンガータイプのインナーと防風アウターを組み合わせる方法も実用的だ。移動中や待機中はアウターを着けて手全体を温め、細かい作業の際はアウターだけを外して、指先の出たインナーで操作する。手のひらの保温を保ったまま指先を使えるため、センサーや端子類の操作精度を落とさずに済む。
近年の現場では、施工管理アプリや電子黒板、タブレットを使った工程管理が一般化しつつある。そのためスマートフォン・タッチパネル対応の手袋は、もはや「あれば便利」ではなく「ないと困る」装備になりつつある。
タッチパネル非対応の手袋では、操作のたびに手袋を外す必要があり、その際に手指が外気に触れることで体温が急激に奪われる。これを繰り返すことで手荒れや手指の冷えが悪化するケースも少なくない。タッチパネル対応・防水仕様の手袋は、施工管理業務と現場作業を行き来する現場監督や親方層にとって特に有用であり、近年は国内メーカー各社がこの分野の製品ラインナップを拡充している。
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中小の建設会社において、手袋は「各自で買う消耗品」として扱われがちだが、これを会社が標準品として支給・管理する体制に切り替えることで、安全管理と現場品質の両面が向上する。支給品として統一すれば、作業ごとに必要な保護具を事業者が備え付け、着用を管理するという労働安全衛生法令の考え方にも沿った運用になる。
また、作業内容ごとに使用する手袋の種類を社内ルールとして文書化しておくと、新人や若手への教育コストも下がる。「どの現場でどの手袋を使うか」「どの作業では手袋を外すか」が明示されていれば、ベテランへの口頭確認なしに適切な装備を選べるようになり、現場の自立性向上にもつながる。
秋冬の手袋選びは、防寒性だけでなく作業性・安全性・デジタル対応まで含めた多角的な視点で行うことが、現場品質と職人の健康を守る第一歩だ。素材の特性を理解し、作業内容に合った製品をレイヤリングで組み合わせる習慣を現場全体に広げることが、中小建設会社における秋冬シーズンの生産性維持に直結する。個人任せにするのではなく、会社としての標準化に踏み出す好機として、今シーズンの装備見直しを検討してほしい。
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参考:・「労働安全衛生規則 第111条」(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032)
・「チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針」(厚生労働省 宮崎労働局)(https://jsite.mhlw.go.jp/miyazaki-roudoukyoku/content/contents/001882206.pdf)
・「防振手袋の振動軽減効果の評価に関する研究報告」(労働安全衛生総合研究所)(https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/doc/srr/SRR-No39-4-4.pdf)
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