記事を読み込み中です
住宅のリフォームや外構工事、設備の入れ替えなど、数百万円規模の工事を年に何件も請け負っている建設会社は多いのではないでしょうか。そんな会社にぜひ知っておいてほしいのが、労災保険の一括有期事業(一括有期事業とは:一定規模未満の複数の工事を、法律上ひとつの事業とみなして保険料をまとめて計算・申告する仕組み)です。
今回は、ありがちな失敗例から制度のポイント、すぐにできる対応策までをやさしく解説します。
よくあるのが、社長とご家族の二人で事務を回している小さな工務店のケースです。工事を受けるたびに労働基準監督署へ書類を出さなければならないと思い込み、現場ごとに手続きを進めた結果、繁忙期には書類が山積みになってしまいます。
さらに年度更新(年度更新とは:前年度の保険料を確定・精算し、新年度の概算保険料を申告・納付する毎年の手続き)の時期になると、どの工事をいつ終えたのか、請負金額はいくらだったのかを帳簿から一つひとつ探し直すことに。期限ぎりぎりまで作業に追われ、本業の現場管理にも影響が出てしまう、というのは決して珍しい話ではありません。
※画像はイメージです
原因は大きく二つあります。
一つ目は、建設業の労災保険が工事現場ごとに一つの事業として扱われるという原則です。工事のように終わりの時期が決まっている事業を有期事業(有期事業とは:あらかじめ事業の期間が予定されている事業)と呼び、原則どおりなら工事ごとに保険関係を成立させる必要があります。
二つ目は、元請として請け負った工事では、下請の作業員の分も含めて元請が現場全体の保険料を納めるという建設業ならではのルールです。誰の分をどこまで計算すればよいのかが曖昧なままだと、集計に余計な時間がかかってしまいます。
一括有期事業の対象になるのは、同じ事業主が行なう建設の事業で、1工事の請負金額が1億8千万円未満(消費税抜き)、かつ概算保険料が160万円未満の工事です。この基準は平成27年4月1日以降に始まった工事に適用されています。条件を満たす工事は法律上当然にまとめられるため、工事ごとに保険関係を成立させる必要はありません。
さらに、平成31年4月1日以降に始まる工事では大きな見直しがありました。以前は、隣接する都道府県など一定の範囲内の工事しかまとめられない地域要件がありましたが、これが廃止され、遠方の現場も含めて一括できるようになりました。また、工事を始めるたびに翌月10日までに出していた一括有期事業開始届も廃止されています。
つまり今は、小規模な工事を始めるたびに届け出る必要はなく、年に一度の年度更新でまとめて精算するのが基本の流れです。ただし、請負金額や保険料が基準を超える大きな工事は、個別の有期事業として別に手続きが必要になるので注意しましょう。
1.工事台帳に年度更新用の項目を作っておく
年度更新では、一括有期事業報告書・一括有期事業総括表・概算確定保険料申告書の3点を提出します。報告書には年度内に終わった工事をもれなく記載するため、工事名・所在地・期間・税抜請負金額を日ごろから一覧にしておくと安心です。請負金額500万円未満の工事は、事業の種類ごとに「〇〇工事他〇件」とまとめて書くこともできますが、後から内訳を説明できるよう記録は残しておきましょう。
2.労務費率と申告期限を把握しておく
賃金総額がつかみにくい元請工事では、請負金額に労務費率(労務費率とは:請負金額のうち賃金にあたる割合として国が工事の種類ごとに定めた率)を掛けて保険料を計算します。たとえば建築事業の労務費率は23%です。年度更新の期間は原則6月1日から7月10日まで。手続きが遅れると政府が保険料を決定し、10%の追徴金が課されることもあります。
3.電子申請で手間を減らす
年度更新の申告は、e-Gov(e-Govとは:さまざまな行政手続きをオンラインで申請できる政府の総合窓口サイト)から電子申請できます。事業者向けの共通認証であるGビズIDを使った申請にも対応しており、監督署へ出向く移動時間を減らせます。厚生労働省は毎年、一括有期事業用の申告書の書き方を公開しているので、最新版を確認しながら進めるのがおすすめです。
出典:「令和8年度
事業主の皆様へ(一括有期事業用)労働保険年度更新申告書の書き方」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/hoken/kakikata/ikkatu.html)
出典:厚生労働省・三重労働局「一括有期事業を行う事業主の皆さまへ」(https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/content/contents/000391509.pdf)
出典:「一括有期事業の適用要件等」(大阪労働局)(https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudou_hoken/hourei_seido/kosin/yuki/yoken.html)
一括有期事業は、小さな工事を数多く手がける中小建設会社の事務負担を軽くしてくれる心強い仕組みです。地域要件や開始届の廃止によって、以前よりずっと使いやすくなりました。日ごろから工事の記録を整えて、次の年度更新を落ち着いて迎えましょう。
地域要件の廃止で遠方の小規模工事も受けやすくなった今こそ、現場を支える協力会社探しや人手の確保には、無料の建設業向けマッチングサービス『建設円陣』へのご登録をおすすめします(緑のバナーをクリック)。
➡関連記事:「これ使える!」から「…無理か」まで3分。建設業の社長が補助金申請で直面するリアルな壁
お問い合わせフォームを読み込んでいます。お問い合わせページもご利用いただけます。
お問い合わせフォームを読み込み中です「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。