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「健診費用を従業員と折半している」「パートは対象外だと思っていた」――少人数の建設会社では、健康診断をめぐる運用が慣例のまま続いていることが少なくない。
労働安全衛生法(労働安全衛生法とは:職場における労働者の安全と健康の確保を目的とした法律)に基づく法定健康診断は、事業者が費用を全額負担するのが原則であり、実施を怠れば50万円以下の罰金の対象となる。
本記事では、中小建設会社の経営者・事務担当者が誤りやすい論点と、実務での対策を整理する。
小規模事業場で見られる誤った運用として、受診を個人任せにする、費用の一部を給与から差し引く、短時間労働者を一律に対象外とする、といった例が挙げられる。悪意がなくても法令違反となり得る点に注意が必要だ。
また、健診を受けていなかった従業員が現場で体調を崩して倒れた場合、会社の安全配慮義務(安全配慮義務とは:従業員が安全かつ健康に働けるよう配慮する使用者の義務)が問われ、不利な立場に置かれるおそれもある。
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事業者に義務付けられている主な健診は、雇入時健康診断、1年以内ごとに1回の定期健康診断、有害業務に従事する労働者を対象とした特殊健康診断である。建設業では、解体・改修工事で石綿(アスベスト)を扱う作業員の石綿健康診断が代表例で、6か月以内ごとに1回の実施が必要となる。過去に石綿業務に従事した在籍者も対象に含まれる。
費用については、厚生労働省の通達(昭和47年基発第602号)で、法定健診は事業者が負担すべきものとされている。定期健診の法定項目(既往歴、身長・体重、血圧、血液検査、心電図など11項目)は会社負担が必要だが、胃カメラや腫瘍マーカーなどのオプション検査には法令上の負担義務がなく、福利厚生として会社の裁量で補助する位置付けとなる。
なお、2027年4月からは法定項目に血清クレアチニン検査(血清クレアチニン検査とは:腎臓の働きを調べる血液検査)が追加される予定だ。健診機関の請求書では法定分と任意分の内訳を確認し、区別して経理処理しておくとよい。
受診時間中の賃金について、同通達は健診の種類で扱いを分けている。特殊健診は労働時間に当たり、賃金の支払いが必要である。一方、雇入時・定期健診は当然には労働時間とならないものの、賃金を支払うことが望ましいとされる。トラブルを避けるため、就業規則等で取り扱いを明記しておきたい。
パート・アルバイトは、1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上で、かつ1年以上の継続雇用が見込まれる場合、正社員と同様に定期健診の対象となる。4分の3未満でも2分の1以上であれば実施が望ましいとされており、実施する場合は会社負担とするのが一般的だ。
一方、請負契約で働く一人親方は雇用関係がないため、労働安全衛生法上の健診義務は会社に生じない。2023年4月施行の改正で、一人親方など請負人に対する石綿ばく露防止措置(作業方法や保護具使用の周知など)は強化されたが、健診の実施までは義務付けられていない。ただし石綿関連疾患は発症までの期間が長いため、本人に自主的な受診を勧めることが望ましい。
現場が分散する建設業では、繁忙期に受診が後回しになりやすい。年度初めに全従業員の入社月、雇用形態、石綿など特殊業務の有無を一覧表にまとめ、受診期限と結果を1つの台帳で管理すると漏れを防ぎやすい。
結果記録の保存期間は、一般健診が5年である。特殊健診は種類によって異なり、石綿健診は当該業務に従事しなくなった日から40年と長期にわたるため、紙とデータの双方で保管ルールを決めておきたい。あわせて、健診結果を本人へ通知することも事業者の義務である。
異常の所見があった従業員については、医師からの意見聴取が事業場の規模を問わず義務付けられている。産業医(産業医とは:事業場で労働者の健康管理を担う医師)の選任義務がない50人未満の事業場では、地域産業保健センター(地域産業保健センターとは:小規模事業場の産業保健活動を無料で支援する公的窓口)を活用できる。なお、常時50人以上の事業場は定期健診結果報告書の提出が必要で、2025年1月から電子申請が原則となっている。
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健康診断の費用は「法定健診は会社が全額負担、オプション検査は会社の裁量」という基本を押さえれば、判断に迷う場面は少ない。少人数の会社ほど、対象者の把握、費用処理、記録保存のルールを早めに整え、従業員が安心して現場に立てる体制づくりにつなげたい。
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出典:「労働安全衛生法 第66条・第66条の4・第66条の6・第120条」(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057)
出典:「労働安全衛生規則 第43条・第44条・第51条・第52条」(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032)
出典:「石綿障害予防規則 第40条・第41条」(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000100021)
出典:「職場の健康診断実施強化月間の実施に関する協力依頼について(令和8年8月21日 基安発0821第2号)」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001741252.pdf)
出典:「一人親方等の安全衛生対策について」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei03_00004.html)
出典:「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます(令和7年1月1日~)」(東京労働局)(https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/denshishinsei.html)
出典:「地域産業保健センター(地さんぽ)」(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)(https://kokoro.mhlw.go.jp/health-center/)
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