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「完工高(かんこうだか:完成した工事の売上合計額)は増えているのに、決算を迎えると利益がほとんど残らない」――そう感じている中小建設会社の経営者は少なくない。原因の一つとして見落とされがちなのが、一般管理費の膨張だ。工事原価の管理には目が届いていても、本社経費の塊である一般管理費は「毎年なんとなく同じ金額」で放置されているケースが多い。本記事では、一般管理費の基本的な意味から、業界標準の割合の目安、そして具体的な見直しのポイントまでを整理する。
一般管理費とは、役員報酬・事務員給与・家賃・水道光熱費・通信費・広告宣伝費・交際費・減価償却費など、本社機能の維持に要するすべての経費を指す。建設業の損益構造では「完工高 − 工事原価 = 完工総利益」となり、そこからさらに一般管理費を差し引いた結果が営業利益として残る。つまり一般管理費は、せっかく現場で生み出した粗利を直接削り取る存在であり、その水準の管理が経営の命綱と言っても過言ではない。
工事原価に含まれる現場経費(現場監督の人件費・仮設費用・材料費など)と混同されやすいが、両者は明確に区別される。現場ごとに配賦できるものは工事原価、複数現場に横断的にかかるものが一般管理費、と整理するとわかりやすい。
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国土交通省が公表している「建設工事施工統計調査」や業界団体の経営分析データによると、建設業における一般管理費率(完工高に占める一般管理費の割合)の平均はおおむね10〜15%程度とされている。ただしこの数値は企業規模によって大きく異なる点に注意が必要だ。
大手ゼネコンでは管理部門が整備されている分、一般管理費の絶対額は大きいが、完工高に対する比率は低く抑えられる傾向がある。一方、従業員20名以下の中小建設会社では、売上規模が小さい割に固定費(家賃・役員報酬・リース料など)が一定額かかるため、一般管理費率が20%を超えるケースも珍しくない。一般管理費率が25%以上になっている場合は、構造的な赤字リスクを抱えている可能性が高く、早急な見直しが求められる。
自社の一般管理費率を把握するには、直近の決算書(損益計算書)から「販売費及び一般管理費」の合計額を完工高で割るだけでよい。まずはこの数字を経営者が自ら確認することが第一歩だ。
一般管理費の内訳を精査すると、削減余地のある費目とそうでない費目が見えてくる。主な費目を以下に整理する。
役員報酬・給与:固定費の最大項目。適正な人員配置と役割の明確化が必要。事務・経理を一人で担っている場合は、業務効率化ツールの導入で兼務比率を下げる余地がある。
通信費・ソフトウェア利用料:使われていないサブスクリプション(定期課金サービス)が積み重なっているケースが多い。年に一度の棚卸しが有効。
交際費・接待費:取引先との関係維持に必要な面もあるが、効果が不明確な支出が含まれやすい。上限ルールを社内で設定するだけで削減につながる。
広告宣伝費:チラシやタウン誌への掲載費よりも、費用対効果の高いWebやSNS活用に切り替える会社が増えている。
減価償却費:現金支出を伴わない費用のため短期的な削減は難しいが、不要資産の早期除却や設備投資計画の見直しで将来的な負担を軽減できる。
「削れない経費」として認識されがちな人件費や家賃は、安易な削減が現場力の低下につながるリスクもある。削減よりも「生産性の向上によって一人あたりの完工高を増やす」アプローチのほうが、中長期的には有効なケースが多い。
月次での費目別モニタリングが最も基本的かつ効果的な対策だ。月が終わるたびに、前月・前年同月の一般管理費を費目ごとに比較するだけで、異常値に気づく速度が大きく上がる。顧問税理士に毎月の試算表を作成してもらい、経営者が直接確認する習慣を持つことが重要だ。
次に有効なのが工事別の原価管理と一般管理費の按分(あんぶん:複数の部門や案件に費用を割り振ること)の精緻化だ。現場で使っている車両の燃料費や現場監督の携帯電話代など、工事原価として計上できる経費を一般管理費に一括で入れてしまっているケースがある。適切に振り分けることで、工事ごとの採算管理が正確になり、値決めの精度も上がる。
また、協力会社との連携強化によって固定費を変動費化する発想も有効だ。工事量が少ない時期でも正社員の人件費は発生するが、外注比率を高めることで繁閑に応じたコスト構造を実現できる。ただしこの場合も、信頼できる協力会社を複数確保しておくことが前提となる。
一般管理費は「見えにくい経費」だからこそ、放置すると会社の利益を静かに侵食し続ける。自社の一般管理費率を把握し、費目ごとに削れるものと守るべきものを仕分けして、月次でモニタリングする仕組みを持つことが、中小建設会社が収益体質を改善するうえでの確かな一歩となる。数字を「なんとなく」で終わらせず、経営判断の根拠として使いこなす経営者こそが、厳しい市場環境を生き残っていける。
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