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労務費などの内訳を書いた見積書を出しているか、受け取った側がそれを考慮しているか。今年度から、国の調査でこうした点が毎年チェックされる仕組みが整いつつあります。
結論からいえば、専門工事業者・元請業者を問わず、「内訳明示した見積書」を日常業務として回せる体制づくりが、これからの取引の前提になります。
国土交通省は令和8年10月5日、中央建設業審議会の「労務費の基準に関するワーキンググループ」第13回会合を開き、令和7年12月に実施が勧告された「労務費に関する基準」(労務費に関する基準とは:技能者を雇用する事業者まで適正な労務費が行き渡るよう、国が示した労務費の目安と考え方)の実効性をどう確かめるかを議論しました。
背景にあるのは、建設業の担い手確保には技能労働者の処遇改善が欠かせないという問題意識です。令和6年6月に改正された第三次・担い手3法を受け、見積の段階で労務費や必要経費を明示し、それを取引に反映させる流れが本格化しています。国は既存の調査に項目を追加し、年1回、フォローアップ結果をワーキンググループに報告する方針を示しました。
出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/002026359.pdf)
1つ目は、従来の社保調査を見直した「見積書における必要経費の内訳明示状況等に関する調査」です。社会保険加入が建設業許可の要件になったことや、必要経費を内訳明示した見積書が努力義務化されたことを踏まえ、内訳明示見積書による取引状況を重点的に把握する調査へ変わりました。内訳明示見積書の提出の有無、記載した労務費を受け取れたか、法定福利費(法定福利費とは:社会保険料のうち事業主が負担する費用)や安全衛生経費、建設業退職金共済の利用状況などを尋ねます。調査対象時点は令和8年9月1日時点で、結果は4月以降に公表される予定です。
追加項目には、見積書で歩掛(歩掛とは:一定量の作業に必要な人数・日数の目安)を用いて労務費を示しているか、価格交渉で「労務費の基準値」を活用しているか、コミットメント条項を知っているか・導入しているか、といった点が含まれます。
2つ目は下請取引等実態調査です。全国の建設業者30,000業者を無作為抽出して毎年度Web調査を行なうもので、令和7年度の回収は19,964者(回収率66.5%)でした。令和8年度は、元請負人には「内訳明示した見積書を考慮した価格設定を行なっているか」、下請負人には「労務費の内訳を明示した見積書を交付しているか」を新たに尋ねます。
不適切な取引のおそれが確認された場合は是正指導の対象となる点に注意が必要です。結果は3月頃に公表予定です。
3つ目は、国・特殊法人等・地方公共団体を対象とした入札契約適正化法に基づく実施状況調査です。労務費ダンピング調査の実態に関する設問や、工事請負契約書にコミットメント条項と同等の規定があるかを確認する項目が加わり、12月に結果が公表される予定です。

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/002026359.pdf)
国は職種分野ごとに、単位施工量あたりの労務費の「基準値」を公表しています。資料では東京都の代表例として、鉄筋工事(建築)が73,804円/t、型枠工事(建築)が5,490円/㎡と示されています。
現在は22職種分野133工種で設定済みです。ただし基準値は標準的な作業内容・施工条件が前提のため、受注者が現場ごとに補正して見積もり、注文者はそれを尊重することが求められています。
あわせて押さえておきたいのがコミットメント条項(コミットメント条項とは:適正な賃金を技能者に、適正な労務費を下請事業者に支払うことなどを契約当事者が約束する条項)です。標準約款に選択条項として追加されており、下請契約での導入まで約束する(A)と、下請への導入は個別判断とする(B)の2パターンがあります。

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/002026359.pdf)
まず、労務費・材料費・法定福利費などを分けた見積書の書式を社内で統一しましょう。次に、見積を作る際に公共工事設計労務単価や基準値をどう参照したかを記録しておくと、価格交渉の場で根拠として説明しやすくなります。
最後に、元請の立場では下請から受け取った内訳明示見積書をどう考慮したかを残しておくことが、調査への回答や社内確認の備えになります。
内訳を明示した見積書は、国の調査で毎年その定着度が確認される「新しい商習慣」になりつつあります。適正な労務費を確保し、技能者の処遇改善につなげるためにも、まずは自社の見積書の見直しから始めてみてください。
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出典:第13回労務費の基準に関するWG 配布資料(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/tochi_fudousan_kensetsugyo13_sg_000001_00083.html)をもとに作成
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