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国土交通省が検討を進めている「建築分野の中長期的なビジョン(仮称)」(建築分野の中長期的なビジョンとは:2050年を見据え、建築物・人材・技術のあり方を国・産業界・学術界で共有するための将来像)の素案が固まりつつあります。
結論からいえば、このビジョンが目指すのは「スクラップ&ビルド」から既存の建物を「使いこなす」時代への転換です。新築中心だった建築の仕事が、改修・維持管理・継承へと重心を移していく流れが、国の方針として明確に打ち出されようとしています。
国交省は2026年10月20日、第4回「建築分野の中長期的なあり方に関する検討会」(座長:松村秀一
神戸芸術工科大学学長)を開催し、ビジョン素案の確定と今後のスケジュールを議題としました。検討会の下には、ストック、担い手、質・技術、DX、市街地の5つのワーキンググループ(WG)が置かれ、それぞれの議論が素案に反映されています。
なお、第4回の会議資料(素案本文)と議事概要は、後日、国交省ウェブサイトで公開される予定です。
第3回検討会で示された素案の構成によると、ビジョンは2050年を見据え、計画期間はおおむね10年程度とされています。目的は、関係者が共通認識を持ち、「経済的・社会的投資の予見性」「人材確保・育成の計画性」「技術開発の方向性」の3つの視点で活躍できる道筋をつけることです。つまり、民間企業が設備投資や採用計画を立てる際の「羅針盤」になることが意識されています。
出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000233.html)
検討会の参考データを見ると、転換が求められる背景がよく分かります。新設住宅着工戸数は1973年の約190万戸から2023年には約82万戸へ減少しました。住宅ストック(ストックとは:すでに建っていて使われている建物の総量)に対する着工戸数の比率は、1973年の約15分の1から、2023年には約70分の1にまで下がっています。
一方、既存住宅の存在感は増しています。既存住宅流通シェアは、2008年から2024年にかけて戸建住宅で24.7%から33.3%、マンションで39.0%から62.6%へ上昇しました。住宅リフォームの市場規模は2023年で狭義約7.0兆円、広義約8.3兆円と推計されています。
また、1980年以前に建てられた住宅のうち耐震性が不足するものは約700万戸と推計されており、改修需要の大きさがうかがえます。
担い手の面では、木造住宅を支える大工の就業者数が2020年に約30万人と、20年間で半減しました。建築費指数も2015年1月から2025年6月にかけて、木造住宅で約1.4倍に上昇しています。

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000233.html)
素案の構成資料では、建物のライフサイクルを「つくる」「つかう」「改修する」「継承する」「つかい終わる」の5段階で捉えています。注目したいのは、次のような方向性です。
・新築時から、維持管理・更新・解体への配慮を高く評価する
・専門家が維持管理・修繕に関わり、建物の価値を維持・向上させる
・経済面・技術面の過大な負担なく、ニーズに沿った改修を可能にする
・責任分担を明確にし、改修工事のトラブルを未然に防ぐ
・維持管理の記録を活用し、その情報をもとに建物の価値を評価する
・適切な「つかい終わり方」を検討し、サーキュラーエコノミー(サーキュラーエコノミーとは:資源を廃棄せず循環させ続ける経済の仕組み)に貢献する
さらにDX WGでは建物情報のデータ化・蓄積・連携・流通や人とAI・ロボットの協働、担い手WGでは教育・資格・実務の連携が論点に挙がっています。改修や点検の記録をきちんと残せる会社が評価される方向性といえます。
出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000233.html)
ビジョンは今後、社会資本整備審議会(社会資本整備審議会とは:国交大臣の諮問を受けて政策を審議する有識者会議)での議論を経て、令和9年春ごろのとりまとめが目標とされています。具体的な制度改正はその先になりますが、方向性はすでに見えています。
1つ目は、改修・維持管理分野の実績づくりです。新築の受注が細るなかでも、耐震改修や用途変更を伴う改修は今後の柱になり得ます。
2つ目は、施工・点検記録のデータ化です。写真や図面、修繕履歴を整理して残す習慣は、将来の価値評価や継承の場面で武器になります。
3つ目は、協力会社とのネットワーク強化です。改修工事は多様な工種が少量ずつ関わるため、必要なときに頼れる職人や専門業者とのつながりが受注力を左右します。
出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000233.html)
国の建築ビジョンは、建物を「建てて終わり」ではなく「使い続けて価値を高める」社会へのかじ取りを示しています。素案の公表や意見募集の動きにも目を配りながら、改修・維持管理の時代に向けた準備を一歩ずつ進めていきましょう。
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出典:報道発表資料「建築分野の中長期的なビジョン策定に向けて議論します!~第4回「建築分野の中長期的なあり方に関する検討会」の開催~」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_001156.html)、「建築分野の中長期的なあり方に関する検討会(第3回)配布資料」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000233.html)をもとに作成
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