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結論からお伝えします。人手不足が続く建設現場で、国が「次の一手」として注目しているのが多能工です。
厚生労働省は2026年10月26日、第2回エッセンシャルワーカー業職種の生産性向上に向けた労働行政としての支援のあり方に関する検討会(エッセンシャルワーカーとは:医療・介護・物流・建設など、社会生活の維持に欠かせない仕事に就く人のこと)を開き、議題の一つとして多能工育成の取組を取り上げました。
検討会資料では、建設業などで多能工化を進めると、工期短縮・手戻り縮小・人材の有効活用によってコスト縮減と生産性向上につながることが示されました。
国土交通省のリーフレットを引用する形で、次のような利点も整理されています。
・工種の入れ替えがないことによる工期短縮、コスト縮減
・一連の工事に同じ人を配置することによる品質向上
・技能者の雇用継続による外注の減少、重層下請構造(重層下請構造とは:元請の下に何次もの下請が連なる取引構造のこと)の解消
さらに働く側にとっても、資格に基づく給与や地位の向上につながり得る点が強調されています。会社の利益と職人の処遇改善を同時に狙える点が、多能工が注目される最大の理由といえます。
取組 |
期待される効果 |
|---|---|
工種の入れ替えをなくす |
工期短縮、手戻り縮小、人材の有効活用、コスト縮減 |
一連の工事に同じ人を配置する |
品質向上、業務改善範囲の拡大 |
技能者の雇用を継続する |
外注の減少、重層下請構造の解消 |
働く側への効果 |
資格に基づく給与・地位の向上 |
出典:厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76790.html)の資料をもとに作成
資料には、建設分野の具体例が紹介されています。
一つ目は、とび・鉄筋・型枠の業者が2021年に組成した共同組織「躯体屋JV」です。国土交通白書2025によると、4社が参画し、勉強会と現場実務研修を実施しています。職長クラスを大林組の現場へ出向させ、躯体工事一式の施工管理を経験させており、参加者はのべ14名です。参画する松居組では、多能工の活用で12人工(約4%)の削減を実現したとされています。
二つ目は、神奈川県の工藤建設です。「マルチクラフターの育成・活用事例集」(マルチクラフターとは:多能工の別称)によると、同社は注文住宅の建設で多能工を育成・活用して自社直接施工を進め、工種間の引継ぎや手待ち時間を減らしました。その結果、工期約20%短縮、工事費約30%削減を達成したとされています。
事例 |
主な取組 |
成果・規模 |
|---|---|---|
|
躯体屋JV |
とび・鉄筋・型枠の業者が2021年に組成。勉強会と現場実務研修を行い、職長クラスに躯体工事一式の施工管理を経験させる |
参画4社、参加者のべ14名。松居組で12人工(約4%)削減 |
|
工藤建設 |
注文住宅で多能工を育成・活用し、自社直接施工を推進。工種間の引継ぎや手待ち時間を削減 |
工期約20%短縮 |
出典:厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76790.html)の資料をもとに作成(躯体屋JVは国土交通白書2025、工藤建設は「マルチクラフターの育成・活用事例集」の内容として掲載されたもの)
資料によると、多能工の育成はOJT(OJTとは:実際の業務を通じて先輩が指導する職場内訓練のこと)が多い一方、専門の育成コースを設ける施設もあります。
静岡県富士宮市の富士教育訓練センターの「建築基礎多能工(1)」は、実務経験0〜1年の初心者が対象で、訓練日数は36日間。とび、仮設、鉄筋、鋼製下地・ボード貼り等を学び、小型移動式クレーン運転や玉掛けの技能講習、足場の組立てやフルハーネスの特別教育(特別教育とは:危険を伴う業務に就く前に事業者が行なう法定の安全教育のこと)などを修了できます。
若手を採用しても社内で教えきれない会社にとって、選択肢の一つになりそうです。
コース名 |
多能工育成コース(建築基礎多能工(1)) |
|---|---|
実施施設 |
富士教育訓練センター(静岡県富士宮市) |
対象 |
初心者(実務経験0〜1年) |
訓練日数 |
36日間 |
学習内容 |
とび、仮設、鉄筋、鋼製下地・ボード貼り等 |
修了資格 |
技能講習:小型移動式クレーン運転、玉掛け |
出典:厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76790.html)の資料をもとに編集部で作成
検討会では、各分野で少なくとも3事例を掲載する事例集の作成に向け、ヒアリングを順次進める方針が示されました。建設分野の候補先には、島根県の長岡塗装店や東京都の成友興業なども挙がっており、多能工だけでなく柔軟な働き方や勤怠管理の効率化も対象になっています。
また、ハローワークの求人者支援も議題となりました。全国124か所の人材確保対策コーナーは、建設も対象分野です。求人充足に向けた助言や、事業所見学会・就職面接会の開催などを行なっています。
国の議論を待たずに始められることもあります。
・自社の工程で手待ちや引継ぎが多い工種を洗い出す
・隣接工種の資格取得を支援し、取得後の給与に反映する仕組みを考える
・自社だけで難しければ、協力会社と組んで育成する方法を検討する
・求人で苦戦している場合は、ハローワークの人材確保対策コーナーに相談する
多能工は、工期やコストの改善と職人の処遇向上を同時に実現し得る取組として、国の検討会でも重要なテーマになっています。今後まとめられる事例集にも注目しながら、自社の現場でできる一歩から始めてみてはいかがでしょうか。
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出典:エッセンシャルワーカー業職種の生産性向上に向けた労働行政としての支援のあり方に関する検討会資料(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76790.html)をもとに作成
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