「誰が何をやっているか分からない」が組織を壊す──建材会社が実践した属人化解消と働きやすい職場の作り方
「あの案件、誰が担当しているんだっけ?」「Aさんが休んだら業務が止まってしまった」──建設・建材業界の中小企業では、こうした属人化の問題が日常的に起きている。少人数で大量の案件を回す現場では、特定のスタッフに業務が集中しがちであり、それが慢性的な残業や離職の温床になるケースも少なくない。
属人化は「その人が優秀だから」という誤った認識で放置されることが多いが、実態は組織としてのリスクそのものだ。今回は、東京都内の老舗建材企業がクラウドツールの導入と社内ルールの整備によって属人化を解消し、スタッフ全員が安心して働ける環境を実現した事例をもとに、中小建設業が今すぐ取り組める具体策を解説する。
大成木材株式会社が直面した「属人化」の実態
木材・建材の販売からリフォームまでを手掛ける大成木材株式会社(本社:東京都練馬区)では、地域の工務店やハウスメーカーなど約100社からの受発注をわずか数名のチームで対応していた。その規模は月3,000件近くにのぼり、少人数体制での運用には明確な限界が生じていた。
以下に、当時の状況を公式プレスリリースより引用する。
『当時、注文を受けるルートは個人のメールアドレス、FAX、電話、スマートフォンなど多岐にわたり、「誰がどの案件を進めているか」がチーム内で見えにくい状態でした。特にFAXの受信確認や進捗管理が難しく、原因が分からないまま対応漏れや見積もりミス、あるいは二重発注のリスクといった課題を抱えていました。さらに、ハウスメーカーの決算期などの繁忙期には問い合わせが集中するため、限られた人数で対応を捌く現場には常に大きなプレッシャーがかかり、残業が常態化していました。』
引用元:株式会社インゲージ プレスリリース(PR TIMES掲載)
属人化が引き起こす「人材リスク」を正しく理解する
属人化とは、特定の業務が特定の担当者だけに集中し、その人がいなければ業務が回らない状態を指す。建設・建材業界では、長年の経験を持つベテランスタッフが独自のやり方で案件を管理しているケースが多く、その状態が「当たり前」として定着しやすい。
しかし、属人化が進むほど組織は脆弱になる。担当者が体調不良や急な退職で不在になった途端、業務が滞り、顧客への対応が遅れる。ミスが発生しても原因の特定が難しく、改善策も打ちにくい。さらに、業務が集中するスタッフには過大な負荷がかかり続けるため、疲弊・離職というサイクルに陥るリスクがある。
中小企業における離職は即戦力の喪失を意味し、採用・育成コストも相当な負担となる。属人化の放置は、人材定着の観点からも経営上の大きな問題といえる。
ツール導入より先に「仕組み」を作ることが定着の鍵
大成木材では、コミュニケーションプラットフォーム『Re:lation(リレーション)』の導入に際し、単にツールを入れるだけでなく、社内ルールの整備を先行させた点が成功の要因となった。
具体的には、スタッフ自らが運用ガイドやマニュアルを作成し、「誰がどの案件を担当するか」という役割分担を明文化。社内勉強会も開催し、全員が同じ基準で動ける土台を整えた。その結果、約1カ月という短期間でチーム全体に定着した。
ツール導入が失敗する最大の理由は「使い方が人によってバラバラになること」だ。特に中小企業では、ITに慣れたスタッフとそうでないスタッフの差が大きいため、誰もが迷わず使えるシンプルな運用ルールを先に設計することが不可欠となる。
「見える化」が職場環境と人材定着を変える
『Re:lation』の導入後、大成木材では個人メールアドレスでの受注を廃止し、すべての問い合わせを代表アドレスに集約。FAXも同ツール上に自動通知される仕組みを構築し、メールとFAXを一つの画面で一元管理できるようになった。
案件の進捗を色分けで把握できる「ラベル機能」と、引き継ぎ内容をやりとりできる「コメント機能」により、チーム全員がリアルタイムで同じ情報を共有できる環境が整った。これにより、以前は特定の担当者だけが把握していた案件の状況が組織全体で見えるようになり、属人化が解消された。
業務の無駄が削ぎ落とされた結果、慢性化していた残業はほぼゼロになり、スタッフの精神的な余裕も生まれた。「安心して働ける環境」は、人材の定着と職場の満足度向上に直結する。
引用元:株式会社インゲージ プレスリリース(PR TIMES掲載)
中小建設業が今すぐ始められる属人化解消の3ステップ
大成木材の事例をもとに、同様の課題を抱える中小建設・建材企業が実践できる具体的なアクションを整理する。
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情報の入口を一本化する:個人のメール・電話・FAXに分散している連絡窓口を代表アドレス・代表番号に集約する。これだけで「誰かが知っていれば大丈夫」という属人的な状態から脱却できる。
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担当ルールを文書化する:「この種の案件はAが担当」「不在時はBが対応」といった役割分担を明文化し、全員が参照できる場所に置く。口頭での申し送りに頼らない仕組みが属人化を防ぐ。
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進捗をチーム全員が見られる状態にする:案件の対応状況をリアルタイムで共有できるツールを導入する。特定の担当者に確認しなくても誰でも現状を把握できる環境が、精神的な負荷の分散にもつながる。
まとめ
属人化は、建設・建材業界の中小企業が抱える「人材問題」の根本原因の一つだ。特定のスタッフへの業務集中は、残業の常態化・ミスの増加・離職リスクの上昇という負のサイクルを生む。大成木材の事例が示すように、情報の一元管理と進捗の見える化を実現するツールの活用と、社内ルールの整備を組み合わせることで、少人数チームでも組織的な業務運営が可能になる。
「うちは少人数だから仕方ない」と諦める前に、まず情報の入口を一本化することから始めてみてほしい。それが、スタッフ全員にとって働きやすい職場環境をつくる第一歩となる。
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