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橋梁や高速道路などのインフラ工事現場では、低い天井やチェーン・ワイヤーが張り巡らされた吊り足場での作業が日常的に行われている。足場上は障害物が多く、作業員の巡回にも大きな負担がかかる環境だ。このたび、こうした制約の多い現場でロボットによる自律巡回の可能性を示す実証実験が行われたことが発表された。
オリエンタル白石株式会社は、建設現場や工場における生産性向上とウェルビーイング実現を目的に、現場内巡回のための四足歩行ロボットの開発を進めている。東京大学発AIスタートアップの燈株式会社と共同で、2026年9月8日に吊り足場上での四足歩行ロボット歩行AIに関する実証実験を実施した。
この取り組みの背景には、現場特有の作業環境の制約と、気候変動に伴う現場安全管理の課題がある。
『橋梁や高速道路などのインフラ建設・補修工事では、吊り足場が多く使われています。吊り足場上は、低い天井や構造物と床材をつなぐチェーン・ワイヤーの存在、作業員の昇降口となる開口部が存在するなど、作業環境に多くの制約を伴います。また、日本の年平均気温の上昇傾向などに伴い、建設現場での作業員の急激な体調変化や熱中症などのリスク管理は、これまで以上に重要な課題となっています。』
引用元:オリエンタル白石株式会社プレスリリース(PR TIMES掲載)
吊り足場上の巡回は、人が歩くだけでも神経を使う作業だ。足元には吊りチェーンや資材が散在し、天井が低い箇所では姿勢を低くして進む必要がある。こうした環境での定期巡回は、巡回者自身にも身体的負担がかかり、頻度を上げにくいという事情がある。
一方で、気温上昇に伴う熱中症リスクは年々深刻化しており、作業員の体調変化をいかに早期に察知するかが現場管理者にとって喫緊の課題となっている。巡回の頻度を増やしたくても人手が限られる中小の現場では、巡回体制の強化自体が難しいという構造的な問題を抱えている企業も少なくない。
本実証実験では、実際の工事現場に存在する吊り足場上において、歩行AIを搭載した四足歩行ロボットが障害物や床面の起伏がある環境下で倒れずに歩行できることが検証された。具体的には次の3点が確認されている。
1点目は、LiDARによる障害物の感知だ。レーザー光を用いて吊りチェーンや現場備品などの障害物を認識し、その情報をもとに回避しながら経路計画を行う仕組みが確認された。2点目は、歩行AIによる姿勢制御と自律歩行である。ロボットがセンサーで自身の傾きや足部が床面から受ける反力を感知し、姿勢を制御しながら吊り足場上を転倒せずに歩行できることが確かめられた。
3点目は、歩行AIによる障害物引っかかりの自律解消だ。現場に敷設されたシートやケーブルがロボットの足に引っかかった際、それを検知して自律的に解消する行動を取ることが確認されている。使用機体はUnitree Robotics社の「Go2」で、寸法はW31cm×H40cm×L70cm、連続稼働時間は2時間である。
引用元:オリエンタル白石株式会社プレスリリース(PR TIMES掲載)
オリエンタル白石と燈株式会社は、今後も四足歩行ロボットの現場内自動巡回の達成に向けて共同開発を進めるとしている。得られたデータや知見をもとに、現場巡回の実用化に向けた開発をさらに推進する方針だ。これにより、作業員の体調不良を早期に検知し、深刻な事態を未然に防ぐ「早期発見パトロールシステム」の実現を目指すという。
なお、両社は2025年11月にも四足歩行ロボットによる吊り足場上での安定歩行試験に関する発表を行っており、今回の実証実験はその延長線上にある継続的な取り組みと位置づけられる。今後こうした技術が現場に実装されれば、人手不足に悩む中小規模の建設現場においても、安全管理の省人化・高度化が進む可能性がある。経営者や現場監督にとっては、こうした技術動向を把握しておくことが、将来の人員配置や安全対策の見直しを検討する際の判断材料となるだろう。
吊り足場という制約の多い環境でロボットによる自律歩行が実証されたことは、今後の現場安全管理のあり方に一石を投じる出来事だ。熱中症リスクが高まる中、人による巡回を補う技術の進展から目が離せない。
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