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工場などに立つ高さ60mを超える鉄筋コンクリート造の煙突(鉄筋コンクリート造とは:鉄筋を組んだ型枠にコンクリートを流し込み、鉄の粘り強さとコンクリートの圧縮強さを組み合わせた構造)のうち、約4割にあたる180本で損傷・劣化が見つかりました。国土交通省が令和8年10月23日に公表した調査結果です。
結論からいえば、今後は全国の事業所で煙突の応急的な補修が順次進められる見込みで、コンクリート補修や高所作業に携わる専門工事会社にとっては、自社の技術が求められる場面が増える可能性があります。
きっかけは、令和8年熊本地震で煙突が倒壊する被害が生じたことです。これを受けて国土交通省は、関係省庁を通じて、倒壊した煙突と同様の煙突を持つ事業所等に対し、損傷・劣化状況などの調査を依頼しました。
調査期間は8月18日から9月7日まで。さらに、調査の過程で煙突を持つことが分かった業種に対しては、9月28日から10月15日にかけて追加の確認も行なわれています。
対象となった事業は、廃棄物処理、製鉄、製紙、化学、セメント製造、電気、ガラス製造、製油、非鉄金属製錬、食品、医薬品等、下水道、製塩などと幅広い分野にわたります。
調査の結果、対象となる煙突は全国に444本ありました。このうち損傷・劣化が「あり」とされたのが180本(40.5%)、「なし」が256本(57.7%)、点検事業者の手配や稼働停止の調整などで点検実施に向けて調整中のものが8本(1.8%)です。
損傷・劣化が確認された180本のうち、対策予定ありが120本、対策予定なしが60本となっています。報告のあった主な損傷は、ひび割れ、コンクリート表面の剥離、鉄筋の露出など。主な劣化事象としては、腐食、コンクリートの中性化(中性化とは:本来アルカリ性のコンクリートが空気中の二酸化炭素などの影響で性質が変わり、内部の鉄筋がさびやすくなる現象)、鉄筋の発錆などが挙げられています。
建設時期別では、平成19年6月20日施行の改正建築基準法施行令で煙突の技術的基準が見直されたことから、その前後で集計されています。平成19年6月19日以前の煙突は398本で、そのうち175本に損傷・劣化がありました。一方、同年6月20日以降の煙突は46本で、損傷・劣化ありは5本にとどまっています。
業種別では、廃棄物処理が128本と最多で、製鉄87本、製紙61本、化学56本、セメント製造44本と続きます。損傷・劣化ありの本数が多いのは、製紙36本、製鉄31本、セメント製造29本などです。都道府県別では、山口県38本、北海道36本、兵庫県35本、東京都27本の順に多くなっています。
※表中の注記は原資料をご参照ください。
出典:「令和8年熊本地震による被害を踏まえた煙突に関する調査結果」別紙1(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_001163.html)を加工して作成
出典:「令和8年熊本地震による被害を踏まえた煙突に関する調査結果」別紙1(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_001163.html)を加工して作成
今後は、各事業の所管省庁等から、損傷・劣化が確認された180本の煙突を持つ事業所等へ応急的な補修の取組が要請され、取組状況のフォローアップも行なわれる予定です。
国土交通省は特定行政庁(特定行政庁とは:建築確認などを行なう建築主事を置く都道府県や市などの自治体)に対し、調査結果と応急的な補修方法を周知します。特定行政庁も事業者の取組状況を把握し、補修方法などの相談に応じて必要な指導を行なうとしています。
あわせて示された補修方法例は、次のような内容です。
・ひび割れの補修:幅が約0.3mm以下で発生が少ない場合は、V字型またはU字型の溝を掘り、低粘度のエポキシ系樹脂(エポキシ系樹脂とは:接着力と耐久性に優れた合成樹脂)などを充填。発生が多い場合は、樹脂充填の後に耐食処理した補強バンドで締め付ける
・かぶり厚さの確保や中性化・発錆の抑制(かぶり厚さとは:鉄筋の表面からコンクリート表面までの厚み):耐酸性・耐熱性の大きいセメントモルタルを塗り、損傷の程度により下地用金網や鉄筋を追加。さらに耐酸性・耐熱性の大きい仕上げ材を施す
・煙突内側保護材の補修:付着した硫酸分を水を使わずブラシ等で清掃し、セメントモルタルを塗る。腐食が著しい場合は取り除いて新しい保護材を施す
・煙突頂部の改修:頂部の内側躯体コンクリートと保護材の腐食が著しい場合は切除し、元の高さまでステンレス鋼の煙突を設置する
応急補修の要請を受けた事業所からは、点検や補修の依頼が出てくることが考えられます。ただし調査では、点検事業者の手配に時間を要することや、点検のために煙突の稼働を止める必要があることが、点検に向けた調整中の理由として挙げられています。
高所での作業や、熱・酸にさらされる部位の補修には、材料の知識と安全管理の両方が欠かせません。補修方法例に出てくる樹脂充填やモルタル補修、補強バンドの締め付けといった工種について、自社で対応できる範囲を整理し、足場や高所作業に強い協力会社との連携体制を確認しておくと、相談が来たときに慌てずに済みます。
地域の工場を顧客に持つ会社は、発注者の動きにアンテナを張っておきましょう。
全国444本の高い煙突のうち180本で損傷・劣化が確認され、応急補修の取組が本格化しようとしています。地震への備えとして社会的な関心も高まる分野だけに、確かな補修技術と安全な施工体制を備えた会社の役割はますます大きくなるでしょう。
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出典:令和8年熊本地震による被害を踏まえた煙突に関する調査結果を公表します(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_001163.html)をもとに作成
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