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建設現場で「配管の中が見えない」は、工事の判断を難しくする大きな壁です。老朽化した建物では、図面が残っていなかったり、配管が地面や壁の内部に隠れていたりするケースもあります。異常が起きてから原因を探す場合、予想した場所を掘り起こし、違えば別の場所を再び確認することになり、工期も費用も膨らみます。こうした課題に対し、株式会社弘栄ドリームワークスが開発した「配管くん」は、配管内部を直接確認し、見えない配管をデータとして把握するという新しいアプローチを示しています。
建物の寿命が100年と言われる一方、設備の寿命は10~20年とされ、高度経済成長期から2000年代までの建設ラッシュで整備された設備が更新時期を迎えています。しかし、配管は建物の内部に隠れているため、劣化や破損を事前に把握しにくいのが現状です。特に破損箇所が分からないまま配管全体を交換すれば、必要以上の工事につながります。
「配管くん」は、こうした問題に対して配管内へロボットを挿入し、内部をカメラで確認します。複雑に曲がった配管でも走行でき、資料では水平だけでなく垂直方向への走行も可能とされています。リアルタイムで内部の様子を確認できるため、腐食や亀裂、施工不備などの状況を把握し、破損箇所の特定につなげられます。
※画像提供:株式会社弘栄ドリームワークス
配管くんの特徴は、内部映像を確認するだけではありません。ロボットが配管内を走行した軌跡をマッピングし、配管の位置や経路を把握できる点も大きな特徴です。配管の図面を作成することも可能で、建物の所有者変更やリニューアルなどによって設計図を紛失している現場でも、配管の位置を確認する手掛かりになります。
例えば、改修工事の前に配管の経路を把握できれば、「どこを掘るのか」「どこまで交換する必要があるのか」を検討しやすくなります。資料の比較例では、従来2日かかっていた工事期間が4時間、工事費用が100万円から30万円になったケースが示されています。すべての工事で同じ削減効果が得られるという意味ではありませんが、調査精度を高めることが、工事そのものの効率化につながることを示す事例です。
※画像提供:株式会社弘栄ドリームワークス
配管くんの開発で注目したいのは、ものづくり企業ではなく、設備工事を手掛けてきた会社から生まれた技術だという点です。株式会社弘栄ドリームワークスは2019年に設立され、山形県山形市を拠点に、配管探査ロボット「配管くん」などの開発・販売に取り組んでいます。山形大学や立命館大学の技術協力を得ながら、10年近い歳月をかけて開発。公式サイトでも、立命館大学との共同開発や、配管くんの開発・販売・レンタルを確認できます。
また、2024年8月から配管くんを活用した新サービスを展開し、自社だけでなく設備業界全体を盛り上げる構想も。全国の設備事業者と連携するパートナー企業の募集を掲げており、単なるロボット製品ではなく、設備業界の新しい仕事の作り方まで視野に入れていることが分かります。
設備業では、元請けから仕事を受ける構造が一般的で、専門工事会社が新規顧客との接点を作ることは簡単ではありません。そこで、従来の施工力だけでなく、「調査できる」「原因を見つけられる」「必要な工事を提案できる」という機能を持つことは、他社との差別化につながります。
弘栄ドリームワークスは、配管くんを核にした設備業プラットフォーム「何とかしたいを何とかします!」を展開中。配管くんを使う同業他社をパートナーとして募り、営業・顧客・受注の幅を広げる構想が示されています。これは、ロボットを導入すること自体を目的にするのではなく、新しいサービスを入口として顧客との接点を増やす考え方です。
配管くんが示しているのは、ロボットによって現場の点検を高度化するだけではありません。これまで経験や予測に頼らざるを得なかった配管内部の確認を、映像やマッピングというデータに置き換えることで、調査、見積、改修判断までの流れを変える可能性があります。 老朽化する建物が増えるなか、設備工事会社に求められる役割も「壊れたものを直す」だけから変わっていくでしょう。目に見えない配管を正確に把握し、必要な場所に必要な工事を提案する。現場発の技術を新しいサービスにつなげる「配管くん」の取り組みは、これからの設備業における差別化と生産性向上を考えるうえで、注目したい事例です。
配管の老朽化は、目に見えないからこそ対応が遅れやすい課題です。「配管くん」は、内部の映像確認とマッピングによって、これまで把握しにくかった配管を見える化し、調査から改修判断までの効率化を後押しします。現場の困りごとを技術で解決し、それを新たなサービスや受注につなげる発想は、設備業だけでなく、建設業の生産性向上を考えるうえでも参考になる取り組みです。
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