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「それ、聞いてないです」「そんなルール、初めて知りました」。建設会社で、こんな会話が出たことはないでしょうか。
本人に悪気があるわけでも、教える側が怠っているわけでもありません。問題は、会社の中に「わざわざ説明しなくても分かる」と思われているルールが存在していることです。
たとえば、現場への連絡方法、材料が足りなくなりそうなときの報告先、道具を使った後の片付け方、休みを取る際の伝え方などです。 ベテランにとっては長年の経験から身についた「普通のこと」でも、新しく入った人には分かりません。
しかも、「こんなことを聞いたら常識がないと思われるかもしれない」と質問をためらえば、知らないまま仕事を進めることになります。 つまり、会社の中で「聞けば分かる」状態は、必ずしも「伝わっている」状態ではないのです。
建設業では、経験によって蓄積された判断や段取りが仕事の品質を支えています。 「この元請けには先に確認しておく」「この材料は早めに手配する」「この作業が終わったら次の職種へ声をかける」といった知識は、現場を円滑に進めるうえで重要です。
しかし、こうした情報が特定の人の頭の中だけにあると、その人が休んだときや退職したときに困ります。 さらに、新人に教えるたびに口頭で説明していると、教える人によって内容が少しずつ変わることもあります。
「前の人からはこう教わった」「社長からは別のやり方を聞いた」という状態になれば、現場で判断が分かれる原因にもなります。 だからこそ、会社の「当たり前」を一度言葉にしておくことには意味があります。
ルールの見える化というと、分厚い社内マニュアルを作ることを想像するかもしれません。 しかし、中小の建設会社であれば、まずは「よく聞かれること」を整理するだけでも十分です。
例えば、
*「遅刻や欠勤の連絡は誰にするか」
*「現場で判断に迷ったら誰に確認するか」
*「材料不足に気づいたらどうするか」
*「道具を破損した場合はどう報告するか」
*「休暇の申請は誰に伝えるか」
といった項目です。 ポイントは、会社側が説明したいことではなく、社員が実際に迷っていることから整理することです。
新人から同じ質問を何度も受ける項目があれば、それは「本人が覚えられない」のではなく、「会社として情報を共有する仕組みが足りない」というサインかもしれません。
紙一枚にまとめてもよいですし、社内で共有できるデータにしても構いません。重要なのは、必要なときにすぐ確認できることです。
もう一つ有効なのが、社員から出た質問を記録しておくことです。
「この場合は誰に報告しますか」「材料が余ったらどうしますか」「現場が終わった後は何を確認しますか」。 こうした質問は、会社にとって貴重な情報です。
質問が出たら、「そんなことも知らないのか」と片付けるのではなく、「会社として説明していなかったことはないか」と考えてみます。 質問の多い項目をルールとして整理すれば、次に入社する人への説明にも使えます。
さらに、ベテランが新人に教える際の負担も減らせます。毎回ゼロから説明するのではなく、基本事項を共有したうえで、現場では実際の作業に集中できるからです。
会社のルールを整える目的は、社員から質問をなくすことではありません。 むしろ、「分からないことがあれば確認できる」という状態をつくることが大切です。
特に建設現場では、安全や品質に関わる判断を自己判断で進めるより、必要な場面で確認できる環境のほうが重要です。 そのためには、「分からなかったら聞いて」と言うだけでなく、「判断に迷ったら止めて確認する」「同じことを聞いても構わない」など、具体的な行動まで伝えておくと分かりやすくなります。
会社の中にある「当たり前」を少しずつ言葉にする。それだけでも、仕事の属人化を減らし、社員同士の認識をそろえるきっかけになります。
「聞けば分かるけど、聞かないと分からない」会社のルールは、長年の経験によって自然に生まれたものです。 だからこそ、経営者やベテランにとっての「当たり前」を一度言葉にしてみることが大切です。
新人から出た質問を改善材料として拾い、よく迷うことを少しずつ共有していく。小さなルールの見える化が、仕事の属人化を減らし、会社全体で同じ判断をしやすくする土台になります。
「そんなの言わなくても分かる」を一つ減らすことから、会社の仕組みづくりを始めてみてはいかがでしょうか。
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