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奈良市は令和8年10月、新しいごみ処理施設である新クリーンセンター(クリーンセンターとは:家庭などから出るごみを焼却・処理する市の施設)の建設について、北之庄町を最終候補地とすることを公表しました。平成17年の調停成立から約20年、候補地をめぐる議論が続いてきた大型事業が、いよいよ具体化に向けて動き出します。
市は調査結果や議会での議論などを総合的に勘案して判断したとしており、公表された調査報告書を見ると、北之庄町は工期・コスト・アクセス性の面で優位と評価されています。本記事では報告書の数字をもとに、その中身と建設業界への影響を整理します。
市は令和8年8月、大和田町(北側の平地部と南側の山地部の2案)と北之庄町の計3か所を比較する調査結果を公表しました。比較の結果、北之庄町は次の点で優位とされています。
1つ目は工期リスクの小ささです。大和田町北側ではオオタカの繁殖が確認され、営巣期の工事中断などにより工期が約2年延びる可能性が指摘されました。北之庄町の工期リスクは「他候補地より小さい」と評価されています。
2つ目はアクセス性です。大和田町は代替路がなく、通行止め時にはアクセスが困難になるとされた一方、北之庄町は国道24号などの代替ルートがあり、災害時も比較的アクセスしやすいと想定されています。
3つ目はコストで、詳しくは次の章でご紹介します。
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3候補地の比較(概要) |
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項目 |
大和田町北側(平地部) |
大和田町南側(山地部) |
北之庄町 |
|---|---|---|---|
敷地面積 |
52.4ha |
52.4ha |
28.8ha |
利用面積 |
約4.8ha |
約4.0ha |
約4.9ha |
現況 |
田畑 |
山林 |
農用地 |
アクセス道路 |
約1.11km |
約1.44km |
既存道路の約190m区間を活用 |
災害時の代替路 |
なし |
なし |
あり(国道24号など) |
工期リスク |
オオタカ対策で約2年延長の可能性 |
北側と同様に加え、造成規模が大きい |
他候補地より小さい |
出典:奈良市ウェブサイト(https://www.city.nara.lg.jp/soshiki/106/273570.html)をもとに作成
報告書が示した施設整備費の合計は、大和田町北側が約527.8億円、大和田町南側が約532.1億円、北之庄町が約514.9億円で、北之庄町が最も低くなりました。20年間の運営費や収集運搬費を含む概算総事業費も、北之庄町が約1,094億円と3案の中で最小です。
差が大きく出たのは土木工事の部分です。敷地造成工事費は大和田町北側の約19.5億円、南側の約25.8億円に対し、北之庄町は約2.6億円。アクセス道路の整備費も、大和田町の約4.3億〜5.3億円に対し、北之庄町は約0.5億円にとどまります。北之庄町は既存道路の約190m区間を活用できるためです。
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概算事業費の比較(単位:億円) |
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費目 |
大和田町北側 |
大和田町南側 |
北之庄町 |
|---|---|---|---|
敷地造成工事費 |
19.5 |
25.8 |
2.6 |
アクセス道路整備費 |
4.3 |
5.3 |
0.5 |
送電線工事費 |
3.6 |
3.1 |
2.1 |
上下水道工事費 |
0.7 |
1.6 |
- |
用地取得費(施設敷地) |
10.1 |
0.3 |
10.3 |
用地取得費(アクセス道路) |
2.8 |
3.2 |
- |
文化財調査費 |
- |
- |
5.0 |
|
施設整備費 合計 |
527.8 |
532.1 |
514.9 |
|
概算総事業費(20年間の運営費・収集運搬費を含む) |
1,110.1 |
1,114.5 |
1,094.0 |
※主な費目のみ抜粋。合計には施設本体の建設費などを含みます。億円未満は小数第2位を四捨五入。「-」は報告書で計上なし。
出典:奈良市ウェブサイト(https://www.city.nara.lg.jp/soshiki/106/273570.html)をもとに作成
北之庄町の候補地は敷地28.8ha、そのうち利用面積は約4.9haで、現況は農用地です。計画では、焼却施設190t/日(95t/日×2炉)と破砕選別施設35t/日を中心に、計量棟、駐車場、雨水調整池(調整池とは:大雨の際に雨水を一時的にためて下流への流出を抑える池)、緑地などを配置します。
報告書では焼却施設の建設費を「地域エネルギーセンター建設費」(地域エネルギーセンターとは:市の計画で新しい焼却施設に用いられている名称)として計上しており、北之庄町の場合は約411億円と見積もられています。
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北之庄町案の主な施設構成 |
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施設・設備 |
内容 |
|---|---|
焼却施設 |
190t/日(95t/日×2炉)/建設費 約411.3億円 |
破砕選別施設 |
35t/日(燃やせないごみ25t、大型ごみ10t)/建設費 約83.2億円 |
雨水調整池 |
敷地南西側に配置し、南側の用水路へ接続 |
空地 |
約1haを確保 |
造成 |
盛土で高さを調整(洪水浸水想定区域0.5m以上から離隔) |
その他 |
計量棟、駐車場、構内道路、緑地など |
出典:奈良市ウェブサイト(https://www.city.nara.lg.jp/soshiki/106/273570.html)をもとに作成
一方で、北之庄町にも課題はあります。現地のボーリング調査では、支持層(支持層とは:建物の重さを支えられる硬い地盤の層)が地表から約24〜30m付近と46m以深にあるとされましたが、24〜30mの層は連続していない可能性があると指摘されています。
また液状化(液状化とは:地震の揺れで地盤が液体のように軟らかくなる現象)については、200gal(galとは:地震の揺れの強さを表す加速度の単位)では可能性は低いものの、350galでは対策が必要とされました。さらに、文化財調査費として5億円が見込まれており、埋蔵文化財の調査も工程に組み込まれることになります。
交通面では、近くの南永井町交差点で朝のピーク時に最大1,820mの渋滞が確認されていますが、交差点の容量には余力があると評価されています。
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北之庄町案の技術的な留意点 |
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項目 |
報告書の内容 |
|---|---|
支持層 |
GL-24〜-30m付近、およびGL-46m以深。GL-24〜-30mの層は連続しない可能性あり |
液状化 |
200galでは可能性は低いが、350galでは対策が必要 |
文化財 |
文化財調査費として5億円を計上 |
交通 |
南永井町交差点で朝7時10分〜9時10分頃に渋滞、最大1,820m。交差点の需要率は0.9未満で容量に余力あり |
自然環境 |
地蔵院川付近のため、絶滅危惧種への配慮が必要となる可能性 |
出典:奈良市ウェブサイト(https://www.city.nara.lg.jp/soshiki/106/273570.html)をもとに作成
総事業費1,000億円規模の公共工事が具体化することは、地域の建設業にとって大きな動きです。報告書の内容からは、深い支持層への杭基礎工事、液状化対策、盛土による造成工事、調整池や用水路への接続工事、送電線工事、埋蔵文化財の調査など、幅広い工種が関わることが読み取れます。
ただし現時点で公表されているのは最終候補地の決定までです。発注方式や工事のスケジュールは今後の市の発表を確認する必要があります。土木・設備・電気など専門分野ごとに、今のうちから協力体制を考えておくとよいでしょう。
奈良市の新クリーンセンターは、工期・コスト・アクセス性の比較から北之庄町が最終候補地となりました。地盤や液状化、文化財といった課題も明らかになっており、技術力が問われる事業になりそうです。今後の発表に注目しましょう。
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出典:クリーンセンターの建設計画について(奈良市)(https://www.city.nara.lg.jp/soshiki/106/61531.html)、奈良市新クリーンセンター候補地調査業務について(奈良市)(https://www.city.nara.lg.jp/soshiki/106/273570.html)をもとに作成
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