建設・土木工事の現場では、工程管理を特定のベテラン社員が一手に担い、その人が不在になるだけで業務が止まってしまうという状況が長年続いている。いわゆる「属人化」の問題だ。人手不足と高齢化が進む業界において、この課題は年々深刻さを増している。そうした中、AIを活用して工程管理の標準化と技術継承を同時に実現しようとするスタートアップが注目を集めている。
愛媛県の実証プロジェクト「トライアングルエヒメ2.0」に採択
建設現場の省人化・自動化に取り組む株式会社KENCOPA(代表取締役CEO:安村荘佑、本社:東京都渋谷区)は、愛媛県が推進するデジタル実装加速化プロジェクトの最新採択企業として選定された。同社が掲げる事業テーマは「建設・土木工事の脱・属人化に向けたAI工程管理プロジェクト」である。
以下、同社プレスリリースより引用する。
『愛媛県が進める「トライアングルエヒメ」は、全国から集まるデジタル技術による地域課題解決の提案を県内で実装し、産業の成長と人材育成を目指すプロジェクトです。勉強会や横展開によりノウハウを共有し、2025年度からは全国の共創拠点との連携やデジタル企業誘致などを加えた「トライアングルエヒメ2.0」フェーズに発展し、地域の稼ぐ力をさらに強めています。』
引用元:株式会社KENCOPAプレスリリース(PR TIMES掲載)
地域課題の解決とデジタル技術の社会実装を同時に推進するこのプログラムは、全国的な注目を集めており、KENCOPAの採択はそのなかでも特に実用性の高い取り組みとして評価されたとみられる。
なぜ今、工程管理の「脱・属人化」が急務なのか
建設業における工程管理は、長年にわたり担当者個人の経験と勘に依存してきた。熟練した現場監督や施工管理者が、過去の経験をもとに工程表を組み立て、進捗を管理するというスタイルが一般的だ。しかしこの方法には根本的な弱点がある。担当者が退職・異動・病欠した際に、その知識やノウハウが引き継がれないという問題である。
国土交通省のデータによれば、建設業就業者の高齢化は年々加速しており、55歳以上の割合が全体の約35%を超えている。技術を持つベテラン世代が引退するにつれ、積み上げてきた暗黙知が失われるリスクは業界全体の課題となっている。中小規模の建設会社では、属人化した工程管理が経営の根幹を揺るがしかねない状況にある。
「Kencopa工程AIエージェント」とはどのようなツールか
KENCOPAが提供する「Kencopa工程AIエージェント」は、設計図書(図面・仕様書・見積調書)をシステムにアップロードするだけで、AIが工程表を自動生成するサービスだ(特許申請中)。単純な自動化にとどまらず、自社の歩掛データや過去工事の実績をAIが継続的に学習し、精度を高め続ける点が大きな特徴である。
生成された工程表は、通常のアプリと同様に画面上で直感的に編集・修正ができる。出来高線の生成、実績入力、実施工程の管理など、現場運用に必要な機能を一通り備えており、PDF・Excelへの出力もテンプレート登録によって柔軟に対応できる。建築・土木・プラント・設備など幅広い工種に対応しているため、専門工種が異なる中小建設会社でも導入しやすい設計となっている。
さらに注目すべきは、利用を続けるほど「会社独自のナレッジデータベース」が自動で蓄積されていく仕組みだ。設計図書と工程・歩掛・工事データが紐づいて蓄積されることで、若手社員が過去の事例を参照しながら業務を進められるようになる。省人化と技術継承を同時に実現できる点が、このツールの最大の強みといえる。
引用元:株式会社KENCOPAプレスリリース(PR TIMES掲載)
中小建設会社が得られる具体的なメリット
大手ゼネコンと異なり、中小建設会社ではDXや新技術の導入に割けるリソースが限られているのが現実だ。しかしKENCOPAのサービスは、複雑な初期設定や専任IT担当者を必要とせず、図面データをアップロードするだけで使い始められる設計を志向している。現場の実務者が日常業務の中でツールを使い続けることで、自然とデータが蓄積され、組織の知的資産として活用できるようになる構造は、人材不足に悩む中小企業にとって現実的な解決策となりうる。
また、愛媛県との連携により、地方の建設会社がこの技術を試験的に活用できる機会が広がることも期待される。地域密着で公共工事を支える地方の中小建設会社こそ、AI工程管理の恩恵を受けやすい立場にあるといえる。
まとめ
建設業の属人化問題は一朝一夕に解決できる課題ではないが、「Kencopa工程AIエージェント」のようなAIツールの登場は、その解決に向けた大きな一歩となる可能性を秘めている。図面をアップロードするだけで工程表が生成され、使い続けるほどに会社の知的資産が積み上がるこの仕組みは、中小建設会社の経営課題に直接応えるものだ。愛媛県の実証プロジェクトでの成果が全国への横展開につながれば、業界全体のDX推進にとっても重要な事例となるだろう。自社の工程管理に課題を感じている経営者・現場監督は、このサービスの動向を注視する価値がある。
本サイトについて、ご質問・ご相談がある場合は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。あわせて、協力会社探しや人材確保など、日常的な情報収集の場として無料で利用できる建設業向けマッチングサービス『建設円陣』もぜひご登録ください(緑のバナーをクリック)。
➡関連記事:歩掛は“記録する時代”から“自動で貯まる時代”へ AIが変える建設現場の見積もりと技術継承
お問い合わせ
本サイトについて、ご質問・ご相談がある場合は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。
「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。







