記事を読み込み中です
風車のブレード(羽根)を襲った一度の落雷が、約3週間後の破損事故につながりました。経済産業省は2026年9月28日、全国の発電用風力設備の設置者に対し、落雷対策と保安管理の徹底を要請しました。
ポイントは「落雷のあとは止めて、近づいて確かめる」ことです。風車の建設や保守、ドローン点検などに関わる方にとっても、仕事の進め方が変わる可能性のある内容です。
今回の要請で、設置者は保安規程(保安規程とは:電気設備の設置者が保安のために定め、国に届け出るルール)の見直しを求められました。特に確認すべき事項は次の3点です。
1点目は、落雷検出装置で風車を止める雷撃の水準を適切に設定することです。装置がない風車では、気象情報などを使って雷が近づく前に止める措置を定めます。
2点目は、停止後に雷撃による損傷などの異常がないかを確認することです。
3点目は、月例巡視点検を原則として風車を止めた状態で行ない、望遠鏡、望遠カメラ、ドローンなどでブレード表面の落雷痕や剥離を確認し、記録を作成・保存することです。必要に応じて保安規程変更届出書の提出も求められています。
※画像はイメージです
きっかけは、2026年4月12日に秋田県の「風の王国・男鹿風力発電所」で起きたブレード破損事故です。9月25日の国の審議会で報告された内容によると、3月20日にレセプター(レセプターとは:雷を受け止めて安全に地面へ流すため、ブレードに取り付けた受雷部)以外の場所に雷が落ち、129C(Cはクーロン:電気の量を表す単位)の雷がブレードの外板を貫通して内部が傷みました。
ところが、この風車の自動停止の設定は「±100kAまたは300C」だったため、風車は止まらず、落雷後の点検も行なわれませんでした。その後の月例巡視点検も、風車を動かしたまま肉眼で見るだけだったため損傷を見落とし、4月12日に落雷後最大の風の力を受けて破損に至ったとされています。
設置者は再発防止策として、自動停止の値を「±1kAまたは1C」へ大幅に引き下げ、「±20kAまたは50C」以上を検出したときは導通測定(導通測定とは:雷の電流を流す導線が途切れずにつながっているかを調べる検査)を含むブレード点検を行なうとしています。
出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/denki_setsubi/026.html)
国は事故直後から対応を進めてきました。4月16日には事故機と同型の風車について緊急点検への協力を要請し、9月14日時点で対象354基のうち260基の外観点検、211基の内部点検が実施されました。
このうち25基では、雷の電流を流す導線や受雷部の接続部に腐食や隙間などの異常が見つかり、修繕日程の調整が進められています。また、風車が停止中でも落雷を把握するよう技術基準の解釈を明確にする改正が、8月6日に公布・施行されました。
審議会資料では、近年の風力発電所事故の原因も分析されています。保守不備が42件、設備不備が30件、自然災害が23件で、自然災害のうち雷は17件、風雨は4件でした。暴風によるブレーキドラムの損傷も確認されており、落雷・暴風のあとに点検・補修・交換を確実に行なうことが重要だと整理されています。
出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/denki_setsubi/026.html)
見逃せないのは、設備不備の中に施工不完全が6件含まれている点です。ブレードやタワーのボルトの締結不備、取付不備など、施工時の確認不足が疑われる事故が挙げられ、国は業界団体を通じて「取付・締結状態の確実な確認」を広く周知するとしています。
今後、保安規程の見直しが進めば、風車を止めて行う点検や、望遠カメラ・ドローンを使った撮影、落雷後の臨時点検の機会は増えていくと考えられます。風車の施工や保守に関わる会社は、締結確認の記録の残し方や、点検時の写真・記録の整理方法を今のうちに点検しておくと安心です。
出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/denki_setsubi/026.html)
今回の事故は、小さな損傷を見逃したまま運転を続けた結果、大きな破損につながった例です。「止めて、近づいて、記録する」という基本を守ることが、風車に限らずあらゆる設備の安全を支えます。日
々の点検と施工確認を、改めて見直すきっかけにしてみてください。
本サイトについて、ご質問・ご相談がある場合は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。
風力発電設備の点検強化で増える停止点検やドローン撮影、締結確認の人手確保には、無料の建設業向けマッチングサービス『建設円陣』へのご登録で頼れる協力会社を見つけてみませんか(緑のバナーをクリック)。
出典:発電用風力設備における落雷対策及び保安管理の徹底について(要請)(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2026/09/260928_00002.html)をもとに作成
出典:第26回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会
電気設備自然災害等対策ワーキンググループ
資料1-2「風力発電所における事故を踏まえた対応(案)」(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/denki_setsubi/026.html)をもとに作成
➡関連記事:下水道管の点検強化で再確認したい、硫化水素と酸欠事故の防ぎ方
お問い合わせフォームを読み込んでいます。お問い合わせページもご利用いただけます。
お問い合わせフォームを読み込み中です「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。