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「材料費も人件費も上がっている。そろそろ工事単価を見直したい」。
そう感じながら、取引先への説明を考えると値上げに踏み切れない建設会社は少なくありません。特に中小企業では、長く付き合ってきた元請けや顧客との関係を考えるほど、「値上げすると仕事が減るのでは」と慎重になります。
しかし、値上げは単に「もっと利益を取りたい」と伝える話ではありません。大切なのは、今の価格で仕事を続けることが本当に可能なのかを整理し、必要な金額を相手に説明できる状態にすることです。
値上げを考えたときは、まず価格そのものではなく、仕事の原価と内容から見直してみましょう。
最初に確認したいのは、現在の見積金額が実際の仕事量に合っているかです。例えば、見積書では一式と記載している作業の中に、現場での細かな対応、追加の打ち合わせ、資材の運搬、待機、手直しなどが含まれていないでしょうか。
また、材料費だけを見て「赤字ではない」と判断するのも注意が必要です。現場で働く人の時間、車両や機械の使用、外注費、事務作業なども仕事を成立させるコストです。売上から材料費を引いただけでは、仕事の採算は判断できません。
まずは直近の工事を一つ選び、見積時の金額と実際にかかった費用、作業時間を並べてみます。想定より時間がかかっていたり、当初の見積に含めていなかった作業が発生していたりすれば、値上げを検討する具体的な理由になります。
「来月から10%上げたい」と金額だけを伝えるよりも、「どの費用が変わり、現在の価格ではどこに無理が生じているのか」を整理して伝えるほうが、話し合いの土台をつくりやすくなります。
例えば、材料費の変化、外注費の変化、必要な作業時間、現場条件による追加作業などを項目ごとに整理します。値上げ幅を先に決めるのではなく、必要なコストを積み上げて価格を考えることがポイントです。
ここで役立つのが「原価」です。原価を把握すると、「なぜこの金額なのか」を社内でも説明しやすくなります。数字を細かく出すことが難しい場合でも、まずは材料、外注、人件、車両・機械、その他経費といった大きな区分から整理すると始めやすくなります。
取引先との関係上、いきなり大幅な価格変更を申し出ることが難しい場合もあります。その場合は、次回の見積から内容をより具体的にする方法があります。
例えば、これまで工事費にまとめていた項目を、材料、施工、運搬などに分けることで、どこに費用がかかっているのかが伝わりやすくなります。追加作業が発生した場合の扱いも、事前に確認しておけば、工事完了後に「これは別料金なのか」という行き違いを減らせます。
さらに、すべての取引先に同じ対応をする必要があるとは限りません。工事内容、取引条件、継続性などを整理し、価格を見直す必要性が高い案件から順番に検討する方法もあります。
「値上げするか、しないか」の二択ではなく、「どの仕事を、どの条件で続けるか」を考えることが重要です。
価格を見直すときは、単価だけでなく、その後の仕事量や人員の使い方も考えておきたいところです。単価が上がっても、過度な追加対応や長時間の移動が続けば、会社に残る利益が増えるとは限りません。
反対に、条件を整理した結果、利益を確保しやすい仕事に人や時間を振り向けられるなら、価格の見直しが経営の安定につながることもあります。協力会社への依頼が必要な場合も、必要な人数や対応できる工事量を事前に把握しておくと、受注後の慌ただしさを抑えやすくなります。
値上げは「高く売るための交渉」と考えると難しく感じます。自社が無理なく仕事を続けるために、必要な価格を整理する作業と考えれば、確認すべきことが見えてきます。
まずは一つの工事から、見積金額と実際のコストを比べるところから始めてみてはいかがでしょうか。
値上げを考えたときに大切なのは、希望する金額を先に決めることではなく、仕事に必要なコストと作業内容を整理することです。
自社の数字を確認し、理由を説明できる形にしておけば、取引先との価格交渉も具体的な話に変えやすくなります。価格を見直すことは、これからも無理なく仕事を続けるための経営判断の一つです。
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