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「裁量労働制」(裁量労働制とは:実際に働いた時間ではなく、あらかじめ労使で決めた時間を働いたものとみなす制度)の対象を広げるのか、それとも規制を強めるのか。国の審議会で、この議論が本格的に動き出しました。
厚生労働省は令和8年10月23日、第213回労働政策審議会労働条件分科会(労働政策審議会とは:労働に関する法律や制度を、労働者・使用者・公益の三者で話し合う厚生労働大臣の諮問機関)を開き、裁量労働制を議題として取り上げました。
先に結論をお伝えします。対象が広がるかどうかはまだ決まっておらず、議論の途中です。ただし、どちらの方向に進む場合でも、前提として重視されているのは濫用防止措置と適正な運用です。
中小の建設会社にとって今できることは、制度の行方を待つことではなく、すでに導入している会社は現行ルールどおりに運用できているかを、導入を考えている会社は自社の業務が対象になり得るかを、それぞれ確認しておくことです。
きっかけは、令和8年7月21日に閣議決定された「日本成長戦略」です。この中で、柔軟で多様な働き方の実現に向けた労働時間法制について、2026年夏以降の労働政策審議会で議論するとされました。裁量労働制については、濫用防止措置を前提に「対象の在り方」の見直しを検討する方針が示されています。
同じ戦略では、連続勤務の規制、勤務間インターバル制度(勤務間インターバル制度とは:終業から次の始業までに一定の休息時間を確保する仕組み)の法的な位置付け、いわゆる「つながらない権利」、副業・兼業時の健康確保なども検討項目に挙がっています。
厚労省の資料では、これまでの議論が立場ごとに整理されています。
使用者側からは、現行制度は対象業務が厳格で、適用できるかの判断や手続きが煩雑だという指摘が出ています。さらに中小企業では一人が複数の業務を兼ねることが多く、対象外の業務が一部でもあると適用できないため、主な業務が対象業務であれば適用できるようにすべきだという意見もあります。過半数労働組合との合意で対象業務を定める仕組みを検討すべきとの声もあります。
一方、労働者側は、長時間労働を助長しかねないとして対象拡大や要件緩和には慎重であるべきだと主張しています。兼務している場合は適用すべきでない、まずは2024年度に施行された見直しの効果を見極めるべきだ、といった意見です。
公益委員からは、制度の適用の有無よりも、現場レベルで実際に裁量があるかどうかが労働時間や睡眠、満足度を左右するという分析結果が示されています。
裁量労働制には、法律で定められた専門的な業務が対象の専門業務型と、企業の中枢で企画・立案・調査・分析を行なう業務が対象の企画業務型があります。厚労省「令和7年就労条件総合調査」によると、適用労働者の割合は専門業務型1.1%、企画業務型0.3%、導入企業の割合は専門業務型2.1%、企画業務型1.0%にとどまります。
過去の「裁量労働制実態調査」では、適用労働者のうち「満足」「やや満足」と答えた人は専門型で80.0%、企画型で83.7%でした。その一方で、深夜労働が「よくある」「ときどきある」と答えた割合は、専門型の適用労働者で36.7%と、非適用の18.9%を上回っています。満足度の高さと負担の重さ、両方の側面があることが分かります。

出典:厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76895.html)
令和6年4月1日には、すでに大きな見直しが施行されています。専門業務型でも本人の同意が労使協定の事項になり、両方の型で同意を撤回する手続きの整備が求められるようになりました。健康・福祉確保措置の選択肢も追加され、企画業務型の労使委員会(労使委員会とは:企画業務型の導入にあたり、労使の代表で構成し対象業務などを決議する会議体)は6か月以内ごとに1回開くことになっています。
また、独立行政法人労働政策研究・研修機構が令和8年7月から8月にかけて新たな実態調査を行なっており、この改正の運用状況も調査項目に加えられています。今後の議論は、こうしたデータをもとに進むとみられます。
実務では、次の点を確認しておくと安心です。
・本人同意の取得と、同意撤回の手続きが整っているか
・健康・福祉確保措置を実際に運用しているか
・労働時間の状況を把握できているか
・兼務している社員の業務が、本当に対象業務に当たるか
判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士に相談するのが確実です。
出典:厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76895.html)
裁量労働制の見直しは、拡充を求める使用者側と、規制強化を求める労働者側で意見が分かれたまま議論が続いています。どちらに転んでも「働く人の健康を守りながら、自由度の高い働き方をどう実現するか」が問われることに変わりはありません。制度の結論を待たず、自社の働き方と労務管理を点検しておくことが、人材を守る第一歩になります。
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出典:第213回労働政策審議会労働条件分科会(資料)(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76895.html)をもとに作成
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