建設業では、猛暑による熱中症リスクが年々高まっています。2026年は全国各地で40℃を超える「酷暑日」が観測され、現場では従来以上に暑熱対策が重要な経営課題となっています。
こうした中、建設現場向けに開発された熱中症対策設備が、一般のレジャー施設へ導入される事例が登場しました。これは建設業で培われた安全技術が、社会全体へ広がり始めた象徴的な出来事ともいえます。
今回は、建設現場で生まれた熱中症対策エアーシャワー「取るねつ」の取り組みを紹介するとともに、現場で活用できる暑熱対策の考え方について解説します。
建設現場で開発された「取るねつ」がテーマパークへ導入
『「取るねつ」は、建設現場や工場など、過酷な暑熱環境で働く人の熱中症対策として、三共空調と三和建設が共同開発した熱中症対策エアーシャワーです。 現場で求められる「短時間で効率的に身体をクールダウンする」という発想をそのまま生かし、今回、新たに屋外レジャー施設というシーンで活用されることとなりました。』
引用元:三共空調株式会社プレスリリース(PR TIMES掲載)
今回導入された「取るねつ」は、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドに設置されました。建設現場や工場で働く人向けとして開発された設備が、テーマパークへ導入されるのは初めての事例です。
屋外レジャー施設では、小さな子どもから高齢者まで幅広い利用者が長時間屋外で過ごします。そのため、身体を効率よく冷却できる設備への需要は年々高まっています。
建設現場では「短時間で身体を冷やし、作業へ戻る」という考え方が求められますが、この考え方は遊園地やイベント会場でも十分に活用できることが証明された形となりました。
建設業の暑熱対策は社会全体のモデルになりつつある
建設業では、熱中症による労働災害を防ぐため、さまざまな暑熱対策が進められてきました。
例えば、
・ファン付きウェアやファン付きウェアの導入
・スポットクーラーの設置
・ミスト設備
・WBGT値の測定
・こまめな休憩
・経口補水液や塩分補給
などは、多くの現場で当たり前になりつつあります。
その中でも近年注目されているのが、「短時間で身体を効率よく冷やす」という考え方です。 長時間休憩を取ることが難しい現場では、限られた休憩時間の中でどれだけ深部体温の上昇を抑えられるかが重要になります。
「取るねつ」は24個のジェットノズルから毎秒30メートル以上の強力な風を全身へ送り、汗の気化を促進することで効率的なクールダウンを目指した設備です。体表面温度の低下も実証実験で確認されており、建設現場で培われた技術が新たな分野でも評価されています。
引用元:三共空調株式会社プレスリリース(PR TIMES掲載)
今後は「プレクーリング」という考え方も重要になる
従来の熱中症対策は、「暑くなってから身体を冷やす」という発想が中心でした。 しかし最近では、作業前や運動前に身体を冷やしておく「プレクーリング」が注目されています。
プレクーリングは、活動前に身体の深部体温を下げておくことで、その後の体温上昇を緩やかにし、熱中症リスクを抑える考え方です。 建設現場でも朝礼後や昼休憩後など、これから作業を始めるタイミングで身体を冷やすことは、午後の作業負担軽減にもつながる可能性があります。
近年は猛暑が毎年のように続いており、「暑くなってから対応する」のではなく、「暑くなる前に備える」という考え方へ変化しています。
中小建設会社でも取り入れられる暑熱対策とは
大規模な設備をすぐに導入できない中小建設会社でも、熱中症リスクを下げるために実践できる対策は数多くあります。
まず重要なのは、現場ごとの暑熱リスクを把握することです。WBGT値を測定し、危険な時間帯には休憩回数を増やしたり、作業内容を見直したりすることで、事故の予防につながります。
また、休憩場所の環境改善も効果的です。エアコン付きの休憩所やスポットクーラー、冷却ベスト、冷却タオルなどを組み合わせることで、短時間でも身体を効率よく冷やすことができます。
さらに、作業員一人ひとりの体調確認を習慣化することも欠かせません。朝礼時や休憩後に顔色や発汗量、受け答えの様子を確認し、少しでも異変があれば無理をさせない判断が重要です。
近年は熱中症対策用品も多様化しており、自社の現場規模や予算に応じて最適な設備を選択できる環境が整いつつあります。
建設業が生み出した技術は他業界でも活躍する時代へ
今回の事例が注目される理由は、単に新しい設備が導入されたことではありません。
建設業は、危険な作業環境の中で長年培ってきた安全対策や労働環境改善のノウハウを数多く持っています。それらは建設業だけのものではなく、屋外イベントやスポーツ施設、学校、観光施設など、さまざまな場所で活用できる可能性があります。
特に近年の猛暑は「現場だけの問題」ではなく、社会全体で取り組むべき課題となっています。建設業が先行して蓄積してきた知見や設備が他業界へ広がることは、安全で快適な社会づくりにもつながるでしょう。
今後も建設業発の技術や製品が新たな分野へ展開される事例は増えていくことが予想されます。現場で働く人を守るために開発された技術が、多くの人の安全を支える存在となることが期待されます。
まとめ
2026年の猛暑は、建設業にとって熱中症対策の重要性を改めて認識させる夏となっています。今回、建設現場向けに開発された熱中症対策エアーシャワー「取るねつ」がテーマパークへ導入されたことは、建設業で培われた技術が社会全体へ広がり始めていることを示す象徴的な事例といえるでしょう。
中小建設会社でも、休憩環境の整備やプレクーリングの考え方を取り入れるなど、現場の実情に合わせた暑熱対策を積み重ねることが重要です。猛暑が当たり前となる時代だからこそ、最新の技術や設備にも目を向け、自社に適した対策を継続的に検討していきましょう。
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