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2025年12月12日、改正建設業法(建設業法とは:建設工事の請負契約や業者の許可、技術者の配置などを定めた法律)が全面施行されました。これにより、見積書における労務費の扱いが大きく変わっています。施行から10か月余りが経った今も、「元請から内訳を求められたが、どう書けばよいか分からない」という声は少なくありません。
本記事では、小さな建設会社がつまずきやすい点を起点に、内訳の基本を整理します。
中小の専門工事会社でよく見られるのが、「内装工事 一式 ○○万円」といった一式見積りです。長年の取引先であればこれで通用してきましたが、改正後は元請や発注者から「材料費と労務費を分けて示してほしい」と求められる場面が増えています。
さらに深刻なのは価格交渉の場面です。総額だけを提示していると、値引き要請を受けた際にどこを削ったのかが曖昧になり、結果として職人の賃金原資を削ってしまうことがあります。材料の値上がりを吸収しようとして労務費が圧縮され、気付けば利益も賃金も確保できない工事を請け負っていた、という事態は決して珍しくありません。
※画像はイメージです
原因の一つは、労務費の適正水準がこれまで業界内で明確でなかったことです。国土交通省の資料でも、元請・下請・発注者のいずれも適正水準が分からず、価格に転嫁できない経費の増加を労務費の圧縮で吸収してきた構造が指摘されています。
もう一つは、社内で原価を項目別に把握していないことです。材料の仕入れは伝票で追えても、人工(人工とは:作業員1人が1日働く作業量を表す単位)や法定福利費を工事ごとに集計していなければ、内訳を求められても根拠のある数字を出せません。
改正のポイントは大きく三つです。
第一に、中央建設業審議会(中央建設業審議会とは:建設工事の標準請負契約約款や各種基準を審議する国の機関)が「労務費に関する基準」を作成・勧告し、これに照らして著しく低い労務費による見積りや見積り変更の依頼が禁止されました。
第二に、受注者が原価を下回る金額で契約する原価割れ契約も禁止されています。
第三に、建設業者は見積書に材料費、労務費、適正な施工に不可欠な経費を明示するよう努めることとされました。
ここでいう不可欠な経費には、法定福利費の事業主負担額、建退共の掛金、安全衛生経費が含まれます(建退共とは:建設業退職金共済制度。現場で働く人の退職金を業界全体で積み立てる仕組み)。公共工事では入札時の工事費内訳書にこれらの記載が求められ、発注者が労務費ダンピング調査を行なう運用も始まっています。
不適切な取引が疑われる場合には、国土交通省の建設Gメン(建設Gメンとは:下請取引の実態を調査する国土交通省の担当職員)による調査の対象にもなり得ます。
まずは見積書の様式を見直し、「材料費」「労務費」「法定福利費」「建退共掛金」「安全衛生経費」「その他経費」の欄を設けることから始めましょう。工種ごとに数量と単価を示し、労務費は「人工数×日額単価」の形で根拠を示すと、取引先の理解も得やすくなります。
次に、労務費の単価は「労務費に関する基準」で示された職種別の水準や、公共工事設計労務単価(公共工事設計労務単価とは:国や自治体が公共工事の積算に用いる職種別の賃金単価)を参考に、自社の実際の賃金水準と照らし合わせて設定します。水準を大きく下回る単価で提示すると、自社が不利になるだけでなく、業界全体の取引適正化にも逆行します。
さらに、値引き交渉を受けた際は、どの項目を調整するのかを書面で確認する習慣を付けましょう。労務費や法定福利費を削る形での値下げには応じない姿勢を明確にし、材料の調達方法や工程の工夫で対応できないかを協議することが大切です。
社内では工事ごとに人工と経費を記録し、次回の見積りに生かす仕組みを作っておくと、根拠ある数字を継続して出せるようになります。
※画像はイメージです
労務費の内訳を明示することは、手間が増えるだけの事務作業ではなく、職人の賃金と自社の利益を守るための交渉材料です。一式見積りから一歩踏み出し、根拠ある数字で取引先と向き合う会社こそが、これから選ばれる協力会社になっていくはずです。
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参考:・「労務費に関する基準ポータルサイト」(国土交通省)(https://roumuhi.mlit.go.jp/)
・「第三次・担い手3法ポータルサイト」(国土交通省)(https://ninaite-sanpo.mlit.go.jp/)
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