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茨城県土木部の発注工事では、令和8年11月1日以降に入札公告等を行なう予定価格4千万円以上の建設工事から、「労務費ダンピング調査」が試行されています。結論から言えば、これから県の大きめの工事に入札する会社は、入札金額内訳書の直接工事費が官積算の97%を下回っていないかを、入札前に必ず確認しておく必要があります。
あわせて県は、民間工事の労務費についても実態調査を始めました。公共・民間を問わず、労務費を削って安く取る受注は通りにくくなる流れです。
県は、建設業の担い手の減少と高齢化が深刻な課題であり、若い世代に選ばれる産業になるには賃上げによる処遇改善が必要だとしています。そのためには、賃上げの原資となる労務費を建設業者が適正に確保できることが欠かせません。
これまでは適正な労務費の水準がはっきりせず、現場まで行き渡りにくい状況がありました。そこで令和7年12月施行の改正建設業法により、「労務費に関する基準」(労務費に関する基準とは:中央建設業審議会が作成・勧告する、適正な労務費の目安を示した基準)に基づく新たな取引ルールが導入されました。県の今回の取組は、このルールの実効性を確保するためのものです。
労務費ダンピング調査(試行)の対象工事
項目 |
内容 |
|---|---|
発注者 |
茨城県土木部 |
工事の規模 |
予定価格4千万円以上の建設工事(土木一式工事の場合はS・Aランク) |
適用開始 |
令和8年11月1日以降に入札公告等を行なう工事から |
対象外 |
建設業法上の建設工事に当たらないもの(除草工事、剪定工事等) |
位置付け |
開始初年度の試行。来年度以降の本格実施に向けて調査手法を検証 |
出典:茨城県土木部監理課建設業担当ウェブサイト(https://kennsetugyou-ibaraki.jp/2026/11/02/県土木部発注工事における労務費ダンピング調査/)をもとに作成
対象は土木部が発注する予定価格4千万円以上の建設工事で、土木一式工事の場合はS・Aランクの工事が該当します。除草工事や剪定工事など、建設業法上の建設工事に当たらないものは対象外です。
調査では、落札候補者の入札金額内訳書(入札金額内訳書とは:入札額の内訳を工種や費目ごとに示した書類)に記載された直接工事費(直接工事費とは:材料費・労務費など工事そのものに直接かかる費用)が、「一定水準」以上かを確認します。一定水準は官積算(官積算とは:発注者が算定した工事費の見積額)の直接工事費に0.97を乗じた額です。
ポイントは、調査基準価格(調査基準価格とは:これを下回ると低入札価格調査の対象になる基準額)や最低制限価格以上の入札であっても対象になることです。工事費全体の水準だけでなく、直接工事費の水準も見られるようになります。
労務費ダンピング調査の流れ
順番 |
手続き |
内容 |
|---|---|---|
1 |
入札 |
労務費等が内訳明示された入札金額内訳書を受領 |
2 |
開札・低入札価格調査の対象確認 |
工事費全体の水準を確認。調査基準価格未満の場合は低入札価格調査を行ない、履行可能と判断された場合のみ次へ進む |
3 |
労務費ダンピング調査 |
内訳書の直接工事費が官積算の直接工事費×0.97以上かを確認 |
4 |
理由の確認(書面) |
97%を下回った場合、落札候補者に理由書の提出を求め、発注者が確認 |
5 |
契約 |
理由の合理性にかかわらず契約を締結(ただし監理課で分析・調査等) |
出典:茨城県土木部監理課建設業担当ウェブサイト(https://kennsetugyou-ibaraki.jp/2026/11/02/県土木部発注工事における労務費ダンピング調査/)をもとに作成
直接工事費が一定水準を下回った場合、落札候補者は理由書の提出を求められ、各発注者が内容を確認します。低入札価格調査の対象案件では、履行可能と判断された後に同じ確認が行なわれます。
理由書の内容に合理性があるかどうかにかかわらず、契約自体は締結されます。ただし、合理的な回答が得られない場合は、必要に応じて建設業法に基づく立入や帳簿等の調査が行なわれ、違法性が確認されれば指導・監督等の対象になり得ます。対象案件の情報は監理課に集約され、分析されます。
また、理由書を提出しない場合は、入札に関する条件に違反した入札として無効とする場合があるとされています。今回は開始初年度の試行で、県は来年度以降の本格実施に向けて調査手法を検証するとしています。
直接工事費が97%を下回った場合の扱い
ケース |
契約 |
その後の対応 |
|---|---|---|
理由書で合理的な回答あり |
締結 |
監理課で情報を集約・分析 |
合理的な回答が得られない |
締結 |
必要に応じて建設業法に基づく調査(立入・帳簿等)。違法性が確認されれば指導・監督等 |
理由書を提出しない |
入札が無効となる場合あり |
入札に関する条件に違反した入札として扱われる |
出典:茨城県土木部監理課建設業担当ウェブサイト(https://kennsetugyou-ibaraki.jp/2026/11/02/県土木部発注工事における労務費ダンピング調査/)をもとに作成
民間工事では令和8年10月以降、すでに「労務費の基準値」が定められているとび・鉄筋・型枠の専門工事業者団体に協力を依頼し、国が示した基準値と実際の見積額の乖離を調べます。
各専門工事業の取引の実情も把握し、新たな取引ルールへの移行を周知していく方針で、調査の知見を踏まえて職種の拡大も検討するとしています。
県の資料では、適正な労務費は「労務単価×歩掛」(歩掛とは:一定量の作業に必要な人数や時間の目安)で考えるとされ、公共工事設計労務単価が計算の基礎となります。さらに改正法では、適正な労務費等に比べて著しく低い労務費等による見積りや見積り変更依頼が禁止され、原価に満たない金額での契約締結は受注者側にも禁止されました。
元請として県工事に入札する会社は、内訳書の直接工事費を官積算と照らして確認し、下回る場合に説明できる根拠を整理しておくと安心です。下請の立場でも、見積書で労務費を明示し、基準とかけ離れた値下げ要請には根拠を示して話し合う姿勢が大切になります。
改正建設業法(令和7年12月施行)による新しい取引ルールの要点
ルール |
内容 |
|---|---|
適正な労務費の考え方 |
労務単価×歩掛。公共工事設計労務単価を計算の基礎とする |
基準の作成 |
中央建設業審議会が「労務費に関する基準」を作成・勧告(第34条第2項) |
見積りのルール |
適正な労務費等に比べ著しく低い労務費等による見積りや見積り変更依頼を禁止(第20条第2項・第6項) |
契約のルール |
総価として原価に満たない金額での契約締結を受注者にも禁止(第19条の3第2項) |
処遇の確保 |
建設業者に、適正な賃金支払い等による労働者の処遇確保を努力義務化(第25条の27) |
出典:茨城県土木部監理課建設業担当ウェブサイト(https://kennsetugyou-ibaraki.jp/2026/11/02/適正な労務費を確保するための調査の実施につい/)をもとに作成
茨城県では、公共工事の入札段階と民間工事の見積段階の両方から、適正な労務費が確保されているかを確かめる動きが始まりました。価格だけで競う受注から、労務費を守ったうえで適正に利益を出す受注へと切り替える準備を、今のうちに進めておきましょう。
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出典:
・適正な労務費を確保するための調査の実施について(茨城県土木部監理課建設業担当)(https://kennsetugyou-ibaraki.jp/2026/11/02/適正な労務費を確保するための調査の実施につい/)
・県土木部発注工事における労務費ダンピング調査の試行について(茨城県土木部監理課建設業担当)(https://kennsetugyou-ibaraki.jp/2026/11/02/県土木部発注工事における労務費ダンピング調査/)をもとに作成
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