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小さな補修を1件ずつ見積もり、終わるたびに報告書と写真をそろえて請求する。道路の維持工事を受けている会社なら、この事務の重さを実感しているのではないでしょうか。
静岡県と下田市は、このお金の流れと契約の形そのものを見直しました。県道と市道の維持業務を一つにまとめ、年間の金額を一括で決める総価契約で地元企業の共同体に任せる「一体型道路包括管理」です。県は2026年3月、この取組を公式サイトで事例として公開しています。
下田市内の道路の維持業務は、小規模修繕、舗装補修、雪氷対策(除雪や凍結防止剤散布)、道路照明の維持修繕の4つに分かれ、それぞれ別の事業者が契約していました。
支払いは業務量に応じた単価、または見積額の合計で、毎月の報告書を作ってから支払われる仕組みです。件数が多いほど見積や書類の手間が増え、発注する県と市の側にも同じだけ確認作業が発生します。
県はこうした状況に加え、高齢化、担い手不足の深刻化、インフラの老朽化で維持管理の水準が下がるおそれがあるとして、新しい制度づくりに踏み出しました。
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従来の契約と一体型包括管理(試行)の比較 |
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項目 |
従来 |
一体型包括管理(試行) |
|---|---|---|
契約の相手 |
業務ごとに別々の事業者(4業務) |
地域維持型JV(乙型)に一括 |
支払い方式 |
業務量に応じた単価、または見積額の合計 |
総価契約(県35,420千円、市9,900千円) |
要求水準 |
なし |
想定業務回数以上の業務を行う |
出来形の確認と支払い |
月次報告書を作成してから支払い |
3者によるモニタリング(四半期に1回)のあと支払い |
1業務あたりの上限 |
50万円 |
50万円(従来と同じ) |
出典:静岡県ウェブサイト(https://www.pref.shizuoka.jp/machizukuri/kokyokoji/1080157/1080159.html)をもとに作成
取組は令和5年度の10月から始まりました。対象は下田市全域の道路283.0kmで、県管理が47.0km、市管理が236.0kmです。
県と市は覚書を結び、同じ仕様書で公告して県が事業者を選んだあと、市は覚書に基づいて同じ事業者と随意契約(随意契約とは:入札によらず特定の相手と結ぶ契約)します。県と市が別々に入札をする必要がなくなり、受注者も一つの基準で両方の道路を受け持てる形です。
受注したのは地域維持型JV(地域維持型JVとは:地域の維持工事を担うために地元企業で組む共同企業体)で、各社が分担した業務だけに責任と利益を持つ乙型が採られました。
※静岡県下田市の街並み
お金の面で最も大きな変化は、総価契約(総価契約とは:作業ごとの精算ではなく、年間の金額を一括で決める契約)への切り替えです。令和5年度からの試行では、総価が県35,420千円、市9,900千円とされました。年間の売上の見通しが立てやすくなる点は、受注者にとって大きな意味があります。
その代わりに設けられたのが要求水準(要求水準とは:契約上満たすべき業務の基準)です。過去3年度平均の業務回数以上を行なうことが求められ、県管理分では舗装補修40件、小規模修繕110件、照明修繕40件となっています。
出来形(出来形とは:施工した形状や数量の実績)の確認は、毎月の報告書から、県・市・受注者の3者による四半期に1回のモニタリングのあとの支払いに変わりました。なお、1業務50万円の上限は従来と同じです。
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要求水準(想定業務回数・過去3年度平均) |
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業務 |
県管理施設 |
市管理施設 |
|---|---|---|
舗装補修 |
40件 |
2件 |
小規模修繕 |
110件 |
30件 |
道路照明施設維持修繕 |
40件 |
5件 |
雪氷対策 |
舗装補修に含む |
舗装補修に含む |
出典:静岡県ウェブサイト(https://www.pref.shizuoka.jp/machizukuri/kokyokoji/1080157/1080159.html)をもとに作成
県の資料によると、受注者4社へのアンケートで業務量が51%縮減し、発注者側も36%縮減しました。作業の指示や報告は紙からインフラメンテナンス共有システムに移り、写真や実費用もシステムで登録します。
受注者へのヒアリングでは、利益率が良くなった、報告書や出来形写真が省略されて効率化した、指示から施工までの時間が短くなった、といった声が挙がりました。
一方で、総価と要求回数のバランスが取りにくいこと、緊急度の高い作業が優先されやすいこと、構成企業が増えるとマネジメントの負担が大きくなることも課題として示されています。
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試行の結果(アンケートによる業務量の縮減) |
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対象 |
業務量の縮減 |
主な声・課題 |
|---|---|---|
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受注者 |
51% |
利益率が良くなった/報告書や出来形写真の省略で効率化/指示から施工までが短縮 |
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発注者 |
36% |
紙の書類をインフラメンテナンス共有システムで管理 |
今後の課題 |
総価と要求回数のバランス/緊急度の高い作業が優先されやすい/構成企業が増えるとマネジメントの負担が大きくなる/実施件数の取りまとめの手間 |
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出典:静岡県ウェブサイト(https://www.pref.shizuoka.jp/machizukuri/kokyokoji/1080157/1080159.html)をもとに作成
県はこの取組を、広域・複数のインフラをまとめて管理する地域インフラ群再生戦略マネジメントの事例に位置付け、事業者を束ねて地元建設産業の安定した収益と担い手確保を目指すとしています。
総価契約では、年間で何件こなせば採算が合うのかを自社で把握しておくことが欠かせません。過去の維持工事の件数と原価を整理しておくこと、JVを組める地元の会社と日頃から関係をつくっておくことが、こうした契約に参加するための準備になります。
単価の積み上げから年間一括の総価契約へ。静岡・下田の取組は、契約の形を変えることで事務を減らし、受注者の収益の見通しも立てやすくした制度改革です。自社の数字を把握し、新しい発注方式に乗り遅れないよう準備を進めましょう。
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出典:静岡県の取組事例(静岡県)(https://www.pref.shizuoka.jp/machizukuri/kokyokoji/1080157/1080159.html)、地域インフラ群再生戦略マネジメント(通称:群マネ)とは?(静岡県)(https://www.pref.shizuoka.jp/machizukuri/kokyokoji/1080157/1079804.html)をもとに作成
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