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職人が現場を交代する場面は、工程の切り替わりや応援要員の投入、急な休みなど日常的に発生します。その際の引き継ぎを「朝礼で一言伝えた」「電話で説明した」という口頭のみで済ませている現場は少なくありません。
しかし、口頭の引き継ぎには伝えたつもり・聞いたつもりというすき間が必ず生まれます。本記事では、引き継ぎで抜け落ちやすい情報と、その対策を整理します。
例えば内装工事の現場で、前任の職人が「この壁の下地は一部補強が必要」と後任に口頭で伝えたとします。後任はその場では理解したものの、補強が必要な正確な位置と範囲を聞いておらず、結果として一部を補強しないままボードを張ってしまい、後日の器具取り付け時に手戻りが発生しました。
また、施主から「朝8時半より前は作業音を控えてほしい」と頼まれていた約束が交代時に伝わらず、近隣トラブルに発展するケースもあります。いずれも前任者に悪意はなく、伝え方の仕組みがなかったことが原因です。
※画像はイメージです
口頭の引き継ぎで特に抜け落ちやすいのは、次の5種類の情報です。
一つ目は寸法・位置などの数値情報です。聞き間違いや記憶違いが起きやすく、「だいたいこの辺」という曖昧な伝達になりがちです。
二つ目は施主や元請との約束事で、作業時間の制限、養生の範囲、仕様の変更点など、図面に載っていない取り決めが該当します。
三つ目は危険箇所や注意点です。開口部の位置や仮設足場の不具合など、前任者が「自分は気を付けていた」情報ほど言語化されません。
四つ目は材料・道具の所在や残量、五つ目は作業が途中で止まっている理由です。特に五つ目は、確認待ちなのか不具合なのかが分からないと、後任者が独断で進めてしまう恐れがあります。
口頭で伝わらない最大の理由は、熟練者ほど「当たり前」を省略してしまう点にあります。長年の経験で身に付いた判断基準は暗黙知(暗黙知とは:経験や勘に基づき、言葉や文書にしにくい知識)と呼ばれ、本人は説明したつもりでも相手に伝わっていないことが多いのです。
さらに、現場の騒音や時間の制約の中で行なわれる引き継ぎは、メモを取る余裕がなく、後から確認する手段も残りません。言った・言わないの水掛け論になれば、職人同士の信頼関係にも影響します。
2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制(時間外労働の上限規制とは:労働基準法に基づき、残業時間を原則月45時間・年360時間までに制限する制度)が適用されました。長時間労働で一人の職人が現場を最後まで受け持つ働き方は難しくなり、応援要員の活用や週休二日の導入に伴って、引き継ぎの回数は増えていくと考えられます。
引き継ぎの質が低いままでは、交代のたびに確認作業や手戻りが発生し、かえって労働時間が延びるという悪循環に陥りかねません。働き方改革を実現するうえでも、引き継ぎの仕組み化は避けて通れない課題といえます。
出典:
・「はたらきかたススメ(適用猶予業種の時間外労働の上限規制 特設サイト)」(厚生労働省)(https://hatarakikatasusume.mhlw.go.jp/)
・「建設業の事業主の皆様へ」(厚生労働省 沖縄労働局)(https://jsite.mhlw.go.jp/okinawa-roudoukyoku/content/contents/001911668.pdf)
まず取り組みやすいのは、引き継ぎシートの定型化です。先に挙げた5項目を欄として設け、交代時に必ず記入するルールにするだけでも抜け漏れは大きく減ります。手書きでも構いませんが、写真を添えられると効果は格段に高まります。
次に、スマートフォンを活用した記録です。例えば、ビジネス向けチャットの「LINE WORKS」で現場ごとにグループを作り、写真付きで申し送りを残せば、後任者がいつでも見返せます。より本格的に管理したい場合は、「ANDPAD」や「SPIDERPLUS」といった施工管理アプリ(施工管理アプリとは:工程・図面・写真・報告書などをスマートフォンやタブレットで共有・管理するツール)を使い、図面上の位置と指摘事項をひも付けて共有する方法もあります。
加えて、引き継ぎの場に5分でも対面の確認時間を設けることも重要です。記録を見ながら現地で指差し確認を行なえば、文字だけでは伝わりにくいニュアンスも補えます。記録と対面確認を組み合わせることが、最も確実な引き継ぎの形です。
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職人同士の引き継ぎで失われやすいのは、数値、約束事、危険箇所、資材の状況、作業中断の理由といった「図面に載らない情報」です。人の入れ替わりが増えるこれからの現場では、口頭に頼らず記録を残す仕組みづくりが、品質と安全、そして職人同士の信頼を守る第一歩となります。
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