記事を読み込み中です
社員のキャリア相談を担う専門家「キャリアコンサルタント」の講習内容が、大きく見直されようとしています。厚生労働省が開催した第33回キャリアコンサルタント登録制度等に関する検討会(令和8年10月26日)では、講習の見直しに関する報告書の素案やカリキュラム見直し案が示されました。
結論からいえば、今後のキャリアコンサルタントには「個人の相談に乗る」だけでなく、組織や職場環境への働きかけやリ・スキリングの伴走支援まで担う役割が求められていきます。人材の確保と育成に悩む建設会社にとっても、社内の人材育成を考え直すきっかけになる動きです。
報告書素案によると、キャリアコンサルタント登録制度は平成28年4月に創設され、令和8年3月末時点の登録者数は約8万6千人に達しています。
見直しの背景にあるのが、令和8年7月に閣議決定された日本成長戦略です。この中で、スキルの標準化・可視化から教育訓練のプログラム開発・提供まで、一気通貫でリ・スキリング(リ・スキリングとは:仕事の変化に対応するため、新しい知識や技能を学び直すこと)を支援する方針が掲げられました。
素案では、キャリアコンサルタントに対し、働く人が主体的・継続的にリ・スキリングに取り組むことを伴走的に支援する役割を期待しています。
キャリアコンサルタント制度の現状
項目 |
内容 |
|---|---|
登録制度の創設 |
平成28年4月 |
登録者数(令和8年3月末) |
約8万6千人 |
養成講習(令和8年10月時点) |
23講習(21機関) |
更新講習・知識講習(同) |
37講習(34機関) |
更新講習・技能講習(同) |
665講習(105機関) |
出典:「キャリアコンサルタント講習の見直しに関する報告書(素案)」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76925.html)をもとに作成
今回の素案では、キャリアコンサルティングに必要な能力要件に、下の表の5つを加える方向が示されました。あわせて、養成講習の審査基準案には「オンラインによるキャリアコンサルティング」も盛り込まれています。
能力要件に追加される5つの項目(見直し案)
No. |
追加される能力 |
|---|---|
1 |
職業・労働市場・能力開発等に関する知識・情報 |
2 |
組織・環境への働きかけや提案の技能 |
3 |
ネットワークを活用した支援の技能 |
4 |
AI等のデジタルツールを活用した支援の技能 |
5 |
キャリアコンサルタントとしての姿勢 |
出典:「キャリアコンサルタント講習の見直しに関する報告書(素案)」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76925.html)をもとに作成
カリキュラム見直し案では、養成講習の合計は150時間のまま維持しつつ、配分を組み替えます。たとえば「キャリアに関する理論」は現行3時間から8時間へ拡充される案です。また「各活動領域におけるキャリア形成支援の知識」という科目が新たに設けられます。
更新講習は「必修講習(知識)」「必修講習(技能)」「選択講習」の3区分とし、選択講習は18時間とされています。組織・環境への働きかけなどの技能に関する科目は受講必須となる一方、一定の要件を満たすスーパービジョン(スーパービジョンとは:熟練者から実務について指導を受けること)を受けた人は、必修講習(技能)が免除される仕組みです。
さらに、講習の認定・指定に有効期間を設け、更新審査を必須化する方針も示され、素案では法令改正等の必要な措置を講じるとしています。
講習の主な変更点(現行と見直し案の比較)
項目 |
現行 |
見直し案 |
|---|---|---|
養成講習の合計時間 |
150時間 |
150時間(配分を組み替え) |
「キャリアに関する理論」 |
3時間 |
8時間 |
新設科目 |
― |
各活動領域におけるキャリア形成支援の知識 |
更新講習の区分 |
知識講習・技能講習 |
必修講習(知識)・必修講習(技能)・選択講習(18時間) |
スーパービジョンの扱い |
受けた時間または実務を、10時間以内に限り講習受講とみなす |
一定要件を満たすスーパービジョンで必修講習(技能)を免除。免除対象外は10時間以内に限りみなす |
講習の認定・指定 |
― |
有効期間を設け、更新審査を必須化 |
出典:「キャリアコンサルタント講習カリキュラム見直し案」「キャリアコンサルタント講習の見直しに関する報告書(素案)」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76925.html)をもとに作成
審査基準案の「企業等におけるキャリア形成支援の概要」には、セルフ・キャリアドック(セルフ・キャリアドックとは:企業が定期的にキャリア面談や研修を行ない、社員のキャリア形成を支援する仕組み)、職場における学び・学び直し促進ガイドライン、職業能力の評価に関する制度、人事部門との協業の必要性といった項目が並びます。
つまり、今後育成されるキャリアコンサルタントは、企業の人事や教育の仕組みと連携しながら社員の成長を支える人材として位置づけられていくといえます。
審査基準案「企業等におけるキャリア形成支援の概要」の主な項目
審査基準案に含まれる項目 |
建設会社での活用のヒント(オリジナル) |
|---|---|
セルフ・キャリアドック |
若手職人・現場監督との定期面談の仕組みづくり |
職場における学び・学び直し促進ガイドライン |
資格取得や研修参加を後押しする社内ルールの見直し |
職業能力の評価に関する制度 |
技能や経験を見える化し、評価・処遇に反映 |
人事部門との協業の必要性 |
経営者・総務担当と現場が連携した人材育成 |
出典:「養成講習認定審査基準案及び更新講習指定審査基準案」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76925.html)をもとに作成(右列はオリジナル)
若手の定着や技能の継承に悩む建設会社にとって、社員一人ひとりの将来像を一緒に考える面談は大きな意味を持ちます。まずは次のような取り組みから始めてみてはいかがでしょうか。
・若手職人や現場監督と、資格取得や今後の働き方について定期的に話す場をつくる
・社内外のキャリアコンサルタントに相談できる体制を検討する
・学び直しの希望を把握し、研修や資格支援につなげる
制度の見直しはまだ検討段階ですが、社員の成長を支える仕組みづくりは今日から始められます。
キャリアコンサルタントの講習見直しは、リ・スキリングの伴走支援や組織への働きかけを重視する方向へ進んでいます。人が育ち、定着する会社であることが、これからの建設業の競争力につながります。
社員の学び直しやキャリア支援に力を入れつつ、足りない人手や技術を補う協力会社探しには、無料の建設業向けマッチングサービス『建設円陣』へのご登録がおすすめです(緑のバナーをクリック)。
出典:第33回キャリアコンサルタント登録制度等に関する検討会 会議資料(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76925.html)をもとに作成
➡関連記事:施工管理技士は19歳で一次受験可|中小企業が今取らせる理由
お問い合わせフォームを読み込んでいます。お問い合わせページもご利用いただけます。
お問い合わせフォームを読み込み中です「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。