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完成した建物を見ても、鉄筋は一本も見えません。しかしビルやマンション、橋や住宅の基礎の内部には、網の目のように鉄筋が組まれています。この骨組みをつくるのが鉄筋工です。
結論から言えば、鉄筋コンクリート造(鉄筋コンクリート造とは:鉄筋とコンクリートを組み合わせて強度を高めた構造)の建物の強さは、鉄筋工の仕事の正確さで大きく左右されます。今回は、現場で一緒に働く方にも、これから職人を目指す方にも知ってほしい鉄筋工事の世界をご紹介します。
※画像はイメージです
コンクリートは押しつぶす力(圧縮)には強い一方、引っ張る力にはとても弱い材料です。そこで、引っ張りに強い鉄筋を中に入れることで、お互いの弱点を補い合っています。さらにコンクリートはアルカリ性のため、中の鉄筋をさびから守る役割も果たしています。
このとき重要になるのがかぶり厚さ(かぶり厚さとは:鉄筋の表面からコンクリート表面までの距離)です。かぶりが不足すると鉄筋がさびやすくなり、建物の寿命を縮める原因になります。スペーサー(スペーサーとは:鉄筋と型枠の間隔を一定に保つための部材)の配置ひとつにも、職人の経験と気配りが表れます。
鉄筋工事は大きく分けて「加工」と「組立」の2つの工程があります。まず設計図をもとに施工図や加工帳を作成し、加工場で鉄筋を所定の長さに切断・曲げ加工します。
現場では、加工した鉄筋を図面どおりに並べ、交差部分を結束線(結束線とは:鉄筋同士を固定するための細い針金)で縛って組み上げていきます。手作業ではハッカーと呼ばれる専用工具を使いますが、近年はマックス株式会社の「ツインタイア」のような充電式鉄筋結束機も普及し、手首や腰への負担軽減に役立っています。
鉄筋を長さ方向につなぐ継手(継手とは:鉄筋同士をつなぎ合わせる部分)には、重ねてつなぐ方法や、熱と圧力で一体化させるガス圧接などがあります。組立後は配筋検査(配筋検査とは:鉄筋の本数・間隔・かぶり厚さなどが図面どおりか確認する検査)を受け、合格して初めてコンクリートを打設できます。打設後は二度と中を確認できないため、一本のずれも許されない緊張感のある仕事です。
建設業全体では就業者の高齢化が進み、55歳以上が3割以上を占める一方、29歳以下は約1割にとどまっています。鉄筋工も例外ではなく、熟練職人の引退が続くなか、技術の継承は多くの会社にとって切実な課題です。
一方で、技術を正しく評価する仕組みも整ってきました。国家資格の鉄筋施工技能士(鉄筋施工技能士とは:技能検定に合格した鉄筋施工の技能者に与えられる国家資格)には1級と2級があり、ガス圧接を行なうには圧接技量資格も必要です。
さらに現場の中核を担う登録鉄筋基幹技能者という制度もあります。建設キャリアアップシステム(建設キャリアアップシステムとは:技能者の資格や就業履歴を登録し、能力を見える化する国の仕組み)と組み合わせれば、経験や資格が処遇に反映されやすくなります。
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今後は、ベテランの勘に頼るだけでなく、若手が早く一人前になれる環境づくりが重要です。たとえば、施工図や配筋写真をタブレットで共有する、結束機などの道具で体への負担を減らす、資格取得の費用を会社が支援する、といった取り組みは中小企業でも始めやすいものです。
「重い鉄筋を担ぐきつい仕事」というイメージだけでなく、「何十年も建物を支え続ける誇りある仕事」という魅力を、現場から発信していくことも人材確保につながります。
鉄筋工は、完成後には見えなくなるからこそ、建物の安全を根本から支えるプロフェッショナルです。その技術を次の世代へつなぐ工夫を、今日から一つずつ始めていきましょう。
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