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国土交通省が進める「今後の土砂災害対策のあり方」の議論が、とりまとめの段階に入りました。令和8年10月13日には有識者による検討会の第3回が開かれ、提言(案)が議題となりました。
先に公表されている提言骨子(案)を読むと、これからの砂防事業は「人が住んでいるから守る」だけでなく、地域の暮らしと生業を維持するための施策へと位置付けが変わろうとしていることが分かります。中山間地域で工事を担う地域の建設会社にとっても、無関係ではいられない内容です。
※第3回検討会の提言(案)の資料は、本記事公開時点(令和8年10月14日)で国土交通省ウェブサイトに掲載されていないため、本記事は第2回までの公表資料をもとに作成しています。
検討会は「今後の土砂災害対策のあり方検討会」(今後の土砂災害対策のあり方検討会とは:人口減少や気候変動など国土を取り巻く環境の変化を踏まえ、土砂災害対策の課題を整理し提言を行なうため、学識経験者で構成された国交省の会議)です。第1回は令和8年6月29日、第2回は8月5日に開催されました。
第2回で示された提言骨子(案)では、保全対象の数だけで評価するのではなく、まちづくり・地域づくりと連携し、地域が維持・確保すべきと位置付けた生活拠点に砂防事業等を重点的に実施するという考え方が示されています。
※画像はイメージです
背景にあるのは人口減少です。第1回検討会の資料によると、2070年の国内人口は約87百万人で2020年より約31%減と試算されています。一方、土砂災害警戒区域(土砂災害警戒区域とは:土砂災害防止法に基づき、土砂災害のおそれがあるとして都道府県が指定する区域)に係る箇所の人口は、2070年に約3百万人と推定され、2020年より約53%減と全国平均を大きく上回るペースで減る見通しです。
そこで骨子案は、砂防事業を安全確保だけでなく地域社会や経済を支える施策と位置付けました。中山間地域では農林水産業や観光と居住が一体となっているため、こうした職住一体の構造に配慮するとしています。また、ハード対策に加えて安全な場所への個別移転や警戒避難体制の強化なども含め、地域の実情に応じて手法を選べる柔軟な対策体系の構築も盛り込まれました。
出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/committee_sabo-rac_00001.html)
人口と並ぶ課題が施設の老朽化です。整備後50年以上が経過する砂防設備の割合は、2025年3月時点の約44%から、2035年に約61%、2045年には約78%へと高まる見込みです。
国土強靱化実施中期計画では、国・都道府県が管理する約97,000施設のうち、重要交通網等を保全する約8,400施設を対象に、健全性確保率を令和5年の87%から令和12年に91%、令和27年に100%へ引き上げる目標が掲げられています。骨子案も、限られた予算と人材の中で基幹的な施設や修繕困難な施設の予防保全(予防保全とは:機能が大きく低下する前に計画的に補修し、施設を長持ちさせる考え方)を優先する方向です。
さらに資料では、中山間地域では生産年齢人口の減少や建設業の担い手不足が顕著で、砂防関係事業は近い将来、省人化の取組なしには工事ができなくなると指摘されています。

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/committee_sabo-rac_00001.html)
注目したいのが遠隔施工(遠隔施工とは:建設機械を離れた場所から操作して工事を行なう技術)です。令和7年度には砂防関係工事の全国25箇所で無人化施工が実施され、直轄事業21箇所のうち、能登半島の復旧・復興関係を除く18箇所は地域の建設会社による取組でした。大手ゼネコンだけの技術ではなくなりつつあるのです。
国交省は「i-Construction 2.0」(i-Construction 2.0とは:令和6年4月に国交省が策定した建設現場の生産性向上策)で、2040年度までに省人化を少なくとも3割、生産性を1.5倍に高める目標を掲げています。骨子案でも遠隔施工は、安全性や省人化に加え、これまで参入が難しかった人材にも担い手の間口を広げる技術として推進するとされました。道路・河川・森林整備などを含めたインフラ分野横断での人材・技術の確保や、広域連携・官民連携の体制整備も挙げられています。
出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/committee_sabo-rac_00001.html)
提言の最終的な内容は今後の公表を待つ必要がありますが、方向性から考えられる備えは次の3点です。
1つ目は、地元自治体のまちづくりの方針や、維持すべき拠点の議論に目を向けておくことです。工事の重点がどこに置かれるかを読む手がかりになります。
2つ目は、遠隔施工やICT施工への対応力を少しずつ高めることです。直轄の現場で地域の建設会社が実績を積み始めている点は見逃せません。
3つ目は、分野をまたいだ協力体制づくりです。老朽化対策や災害対応では、一社で人手を抱え込むよりも、近隣の協力会社と連携できるかどうかが受注と施工の安定を左右します。
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砂防事業は、地域の暮らしと生業を守る「地域を維持するための施策」へと位置付けを広げようとしています。人口減少、老朽化、担い手不足という3つの課題に向き合う中で、地域の建設会社が果たす役割はむしろ大きくなっていきます。提言の正式公表後の動きにも注目しましょう。
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出典:国土を取り巻く環境の変化を踏まえた土砂災害対策のあり方のとりまとめについて(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/sabo01_hh_000218.html)、砂防:今後の土砂災害対策のあり方検討会(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/committee_sabo-rac_00001.html)をもとに作成
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