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人材の確保や定着が課題となる建設業では、給与を引き上げるだけでなく、社員が日々の生活でメリットを感じられる待遇改善も重要になっています。特に物価高が続くなかでは、食費など身近な負担を軽減する福利厚生も、働く環境を考える一つの方法です。
埼玉県八潮市の株式会社松伸は、2026年8月から食の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入しました。全従業員を対象に月額7,500円を会社が補助し、給与とは異なる形で社員の生活を支援します。
同社はこの取り組みを「第3の賃上げ」と位置付けています。『給与とは異なる形で、税制改正を活用して社員の食生活を支える「第3の賃上げ」として、物価高への対応と社員が安心して働き続けられる環境づくりを進めています。』
代表取締役社長 長田哲也(撮影:村越 将浩)
福利厚生は、制度を用意するだけでは社員に利用してもらえません。建設業の場合、事務所に勤務する社員と現場へ出る職人では、働く場所や生活リズムが異なります。
毎日同じ場所で働くことを前提とした社員食堂などは、現場社員にとって利用しにくいケースがあります。その点、コンビニや飲食店などで利用できる食事補助なら、現場へ向かう途中や休憩時間など、それぞれの働き方に合わせて利用できます。
松伸では、現場作業員から内勤スタッフまで全社員が利用できる点を導入の決め手の一つとしています。建設会社が福利厚生を考える際には、「会社が提供したい制度」だけでなく、「現場社員が実際に使える制度か」という視点が欠かせません。
今回の制度では、会社が月額7,500円を補助し、社員自身の負担分7,500円と合わせて月額15,000円を食事に利用できます。会社側の負担は社員1人当たり年間9万円ですが、社員は年間18万円分を食事に充てられる仕組みです。
背景には、2026年4月の税制改正があります。企業が従業員に提供する食事補助について、所得税の非課税限度額が月額3,500円から7,500円へ引き上げられました。
松伸はこの変更を活用し、非課税限度額の上限まで会社が補助することを決めています。 制度の導入後、同社が実施した調査では、従業員の93.6%が「週1回以上」利用し、80.6%が「とても満足している」と回答しました。
社員からは、早朝出勤時の朝食購入や現場での飲料購入、キャッシュレス決済の利便性を評価する声も寄せられています。

中小建設会社が福利厚生を検討するとき、重要なのは制度の数を増やすことではありません。社員が実際に利用でき、生活のなかでメリットを感じられるかどうかがポイントです。
例えば、食事補助のように日常的に利用する制度であれば、「会社が自分たちの生活を考えてくれている」という実感につながりやすくなります。求人情報で福利厚生として紹介できるだけでなく、入社後の満足度を高める材料にもなります。
また、現場社員と内勤社員の双方が利用できる制度なら、職種による待遇差を生みにくいというメリットもあります。建設業では「現場と事務所のどちらにも公平な制度か」という観点も、福利厚生を設計するうえで大切です。
食事補助などの福利厚生を導入する場合は、非課税となる条件や対象となる利用方法などを確認したうえで制度設計を行なう必要があります。税制上のメリットだけを見て判断するのではなく、自社の就業環境や社員の利用実態に合うかどうかも検討しましょう。
特に建設会社では、現場の場所、勤務時間、休憩の取り方などが社員によって異なります。制度を導入する前に現場社員の声を聞き、「本当に使う制度なのか」を確認することが大切です。
松伸の事例から学べるのは、福利厚生を単なる「会社からのサービス」としてではなく、社員の生活を支える待遇の一部として考えている点です。大規模な制度でなくても、自社の社員が日常的に必要としているものから考えることで、中小企業でも取り組める待遇改善が見つかるかもしれません。
建設業の人材確保・定着を考えるなら、給与だけでなく、社員が日々の生活で実感できる待遇改善にも目を向けたいところです。松伸の食事補助は、税制改正を活用しながら現場で働く社員にも使いやすい福利厚生を整えた一例です。
自社の働き方に合った小さな制度から見直すことが、長く働きたいと思える会社づくりにつながります。
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