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建設業界における人材不足は、今や現場レベルを超えて経営課題として深刻さを増している。国内での採用難が続くなか、海外での人材育成・確保に活路を見出す動きが静かに広がりつつある。今回紹介する取り組みは、日本式ものづくり教育をインドで実践し、エレベーター据付という専門技能の分野にまで踏み込んだ先進的な事例だ。中小建設業の経営者にとっても、今後の人材戦略を考えるうえで示唆に富む内容となっている。
人材育成プラットフォーム「oyakata」を運営するアイティップス株式会社が、2026年7月よりインドにおいて新たな技能研修を開始した。同社のプレスリリースでは、その概要を以下のように説明している。
『建設・製造分野に特化した人材育成プラットフォーム「oyakata」を展開するアイティップス株式会社は、当社がインドで運営する日本式ものづくり学校「oyakata Skill Training Centre」において、インドの若者を対象とした「oyakata scrum エレベーター据付技能研修コース(仮称)」のパイロットプログラムを2026年7月に開始しました。本プログラムでは、Mitsubishi Elevator India Private Limitedがスポンサー企業のCSR活動の一環として、エレベーター据付に関する安全・技能教育の機会を提供します。アイティップスは、IMECが有する技術的知見と安全文化を取り入れながら、インドの若者の技能向上とキャリア形成を支援します。2026年7月から2027年3月までをパイロット期間とし、研修効果や生徒の理解度、安全面での成果を検証しながら、より効果的な技能教育モデルの構築を目指します。』
引用元:アイティップス株式会社プレスリリース(PR TIMES掲載)
※こちらの画像はアイティップス株式会社さまより提供していただきました。
建設業の担い手不足は、統計データが示す以上に現場の実態として切実だ。国土交通省の調査でも、建設技能労働者の高齢化と若年入職者の減少が加速しており、特に中小建設業では採用そのものが困難な状況が続いている。職人の後継者が育たず、現場の技術が途絶えるリスクを抱える企業も少なくない。
こうした状況を背景に、特定技能制度の活用や外国人材の受け入れに踏み出す建設会社が増えつつある。しかし、「言語の壁」「安全意識のギャップ」「現場ルールへの不適応」といった課題から、受け入れ後の定着に苦労する企業も多い。単に人数を確保するだけでは解決しない複合的な問題が、現場の現実として横たわっている。
※画像はイメージです
アイティップスが展開する「oyakata」の最大の特徴は、人材紹介ではなく「人づくり」を起点とした一気通貫モデルにある。インド国内の訓練校(oyakata Skill Training Centre)では、挨拶・整理整頓(5S)・報連相など、日本の建設現場で必要とされる行動規範を入国前から徹底指導する。これにより、来日後の職場適応にかかる時間とコストを大幅に削減できると同社は説明している。
今回のエレベーター据付技能研修は、原則1年間・4ステップ制のカリキュラムで構成されており、前半はOSTCでの基礎安全教育と日本式ものづくりマナーの習得、後半は三菱エレベーター・インディア(IMEC)との連携によるエレベーター専門教育という二段構えで進む。建機オペレータ・建機組立工育成(コマツインディアと連携)、電気工事士育成(中部電力パワーグリッドと連携)に次ぐ第三弾の企業協働型プログラムであり、業種の裾野が着実に広がっていることが見て取れる。
こうした海外育成モデルは、大手企業だけの話ではない。特定技能制度は中小建設業でも活用可能であり、受け入れ実績のある企業では「即戦力に近い人材が確保できた」「現場ルールへの適応が早い」といった声も上がっている。重要なのは、受け入れ前の段階でどれだけ教育が整っているかという点だ。
外国人材の活用を検討するにあたっては、以下の三点を整理しておくことが有効だ。第一に、自社の受け入れ体制(住環境・指導担当者・日本語教育サポートの有無)。第二に、特定技能評価試験の合格基準と、送り出し機関の教育水準の確認。第三に、受け入れ後の定着に向けた社内コミュニケーション設計だ。人材確保の手段は採用広告だけではなく、今後は「どこで・どのように育てた人材を迎えるか」という視点が、経営の競争力を左右する時代になりつつある。
※画像はイメージです
インドの若者を対象としたエレベーター据付技能研修の開始は、建設業における人材育成の概念が国境を越えつつある現実を示している。アイティップスの「oyakata」モデルが示すのは、採用後に問題が起きてから対処するのではなく、入国前の段階から安全意識と職業倫理を育てるという発想の転換だ。人材不足という構造的課題に向き合う中小建設業の経営者にとって、海外育成モデルの動向は今後も注視すべき重要なテーマとなるだろう。自社の採用・育成戦略を見直す契機として、この事例を参考にしていただきたい。
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