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「脱炭素は大企業の話」と考えている中小建設会社は少なくないかもしれません。しかし、国の排出量取引制度(排出量取引制度とは:CO2を多く出す事業者に排出の上限となる「排出枠」を割り当て、枠の過不足を事業者間で売買させる仕組み)は、2026年度に始まって以降、ルールづくりが着実に進んでいます。
経済産業省は2026年10月27日、産業構造審議会の第10回排出量取引制度小委員会を開催しました。そこで示された事務局資料「バンキング適正化措置、割当量等の公表」には、取引先との付き合い方を考えるうえでのヒントが含まれています。
制度の対象は、CO2の直接排出量が前年度までの3年度平均で10万トン以上の事業者です。対象者は毎年度、排出実績と同じ量の排出枠を期限までに保有しなければなりません。
枠が余った企業は、翌年度以降に持ち越すことができます。これをバンキング(バンキングとは:使わなかった排出枠を将来に向けて繰り越して保有すること)といいます。
資料は、過度なバンキングは市場機能を損ない、制度の趣旨を損なうおそれがあると指摘しています。余った企業が枠を抱え込むと、足りない企業が買えず、価格が上限に張り付きやすくなるからです。
海外ではすでに例があります。資料によると、ニュージーランドではバンキング量が単年度排出量の約4倍まで積み上がり、削減目標の達成を難しくするリスクが指摘されました。経営の言葉に置き換えれば、「在庫の抱え込みが市場全体の流通を止めてしまう」状態です。
出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/emissions_trading/010.html)
そこで事務局が示したのがバンキング適正化措置(バンキング適正化措置とは:繰り越せる量に目安を設け、余剰分の売却を促すための仕組み)の案です。全制度対象者に共通のバンキング可能量を設け、それを超えて売らなかった分は後年度の割当てから控除します。
・バンキング可能量はT−2年度(2年前の年度)の割当量の15%とする案
・余剰量は単年度ではなく累積(ストック)で判定
・売却量は、売った量から調達した量を引いた正味売却量(正味売却量とは:実質的な売り越し分)で判定し、期限はT年度の8月末まで
・適用は2029年度の割当てから、2031年度以降は効果を検証して改めて検討
15%という水準は、脱炭素投資を進めた後も生じうる不足に備える「合理的な保有」に限って認めるという考え方に基づいています。
価格面では、2026年度の上限は4,300円/t、下限は1,700円/tです。実質価格ベースでは、2030年度に上限4,840円/t、下限1,913円/tまで段階的に引き上げる見通しが示されています。

出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/emissions_trading/010.html)
直接排出量10万トン以上という要件から、多くの中小建設会社が自ら排出枠を扱う場面は限られると考えられます。それでも、経営の目線で押さえておきたい点が3つあります。
1つ目は「見える化」が進むことです。資料では、各制度対象者の割当量や排出量を原則公表とする方向が示されました。資材の調達先などが制度対象であれば、その排出状況を把握しやすくなります。取引先を選ぶ際の判断材料が一つ増えると考えておくとよいでしょう。
2つ目は「早く動くほど有利」という設計思想です。資料は、排出枠価格が脱炭素に取り組んでいない製品の炭素コストとして反映されること、そして早期にGXに取り組むほど将来の負担が軽くなる仕組みを目指すことを示しています。自社でも、日々の燃料や電力の使い方を記録しておくなど、小さな準備から始めておくと説明しやすくなります。
3つ目はスケジュール感です。年末頃に取りまとめが行なわれ、2027年度秋頃に排出枠取引市場が開設される予定です。化石燃料賦課金も2028年度の開始に向けて検討が進んでいます。数年単位で事業計画を考えるとき、これらの時期を頭に入れておくと見通しを立てやすくなります。

出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/emissions_trading/010.html)
今回の案は、排出枠を「抱え込まず流通させる」方向を明確にしたものです。制度の直接の対象でなくても、取引先の動きや市場開設のスケジュールを把握しておくことは、これからの経営判断の確かな土台になります。
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出典:第10回 産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 排出量取引制度小委員会(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/emissions_trading/010.html)をもとに作成
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