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厚生労働省は令和8年10月9日、「令和8年版 過労死等防止対策白書」を閣議決定しました。過労死等(過労死等とは:業務による過重な負荷や強い心理的負荷が原因の脳・心臓疾患や精神障害、それによる死亡や自殺のこと)の防止を目的とした法定白書で、今回で11回目です。
建設業は、調査研究の重点対象となる重点業種等(重点業種等とは:国の「過労死等防止対策大綱」で特に調査を進めるとされた8つの業種・分野のこと)の一つに位置付けられています。
今回の白書から建設業について読み取れるのは、長時間労働は着実に減っている一方で、精神障害による労災は大きく増えているという事実です。
「残業を減らせば安心」とは言い切れない状況が、データで示されました。
※画像はイメージです
総務省「労働力調査」を基にした集計では、週40時間以上働く雇用者のうち週60時間以上働く人の割合は、建設業で令和5年8.8%→令和6年8.2%→令和7年7.8%と下がり続けています。全業種平均は令和7年で7.7%で、大綱が掲げる目標は5%です。
背景には、令和6年4月から建設業にも適用された時間外労働の上限規制(時間外労働の上限規制とは:残業時間に法律上の上限を設けるルール)があります。ただし白書は、企業の規模が小さいほど週60時間以上の割合が高い傾向も示しており、中小企業ほど取り組みの余地が残っています。
出典:厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/karoushi/26/index.html)
労災支給決定事案を3年度ごとの平均で比べると、建設業の精神障害事案は平成24〜26年度の31.0件から、令和3〜5年度は57.3件に増えました。うち自殺以外の事案は20.0件から45.0件へと2倍以上です。建設業の精神障害事案の91.0%は男性でした。
脳・心臓疾患の事案も、建設業は一度減ったあと直近で再び増えています。死亡以外の事案は平成30年度〜令和2年度の10.3件から、令和3〜5年度は15.7件に戻りました。
出典:厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/karoushi/26/index.html)
白書には、令和7年11月に建設業で働く1,400人を対象に行なったアンケートの結果も載っています。
K6(K6とは:6つの質問でうつや不安の傾向を測る心の健康の尺度)で「うつ・不安障害の疑い」以上に当たる人は全体で31.9%でした。職種別では現場監督が46.3%と突出し、年齢別では20〜29歳が54.7%で最も高い結果です。
パワーハラスメントの経験は全体で19.2%、現場監督では22.7%でした。一方で、勤務先のハラスメント対策について「特に取り組んでいない」との回答が55.9%、「わからない」が20.7%に上り、技能職では「特に取り組んでいない」が63.0%でした。
ストレスの中身は「仕事の量」が38.9%、「対人関係」が36.0%です。所定外労働が生じる理由は「業務量が多いため」42.0%、「人員が不足しているため」40.9%で、仕事量と人手不足の問題が根っこにあることがうかがえます。
白書では、関連する制度の動きとして次の点が挙げられています。
・カスタマーハラスメント(カスタマーハラスメントとは:顧客や取引先による著しい迷惑行為)防止対策の強化:令和8年10月1日施行
・労働者50人未満の事業場へのストレスチェック義務化:令和10年4月1日施行
・毎年11月は「過労死等防止啓発月間」
白書のコラムでは、京都府京都市の福田建設工業株式会社の事例が紹介されています。同社はドローン測量で2〜3日かかっていた測量を1日に短縮し、ICT油圧ショベル(ICT油圧ショベルとは:掘削位置や高さを示す目印「丁張り」の設置を不要にする建機)で掘削スピードを1.25〜1.5倍に高めました。さらに自作アプリで現場から日報を送れるようにし、管理部門の時間外労働は月30時間から10時間、重機オペレーターは月75時間から20〜30時間に減ったといいます。
まずは自社でハラスメント防止の方針を明確に示すこと、現場監督に業務が集中していないか点検すること、そして事務作業のデジタル化で「仕事の量」そのものを減らすことから始めてみてはいかがでしょうか。
労働時間の短縮は進んでいますが、現場監督や若手を中心に心の負担は大きいままです。時間だけでなく、仕事量と職場の人間関係にも目を向けることが、これからの人材定着の鍵になります。
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出典:令和8年版過労死等防止対策白書(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/karoushi/26/index.html)をもとに作成
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